清野菜名:インタビュー(中) 得意料理はハンバーグとパスタ「今はなかなかできないけれど…」

映画「パーフェクト・レボリューション」でミツ役を演じた清野菜名さん
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映画「パーフェクト・レボリューション」でミツ役を演じた清野菜名さん

 9月29日に公開された映画「パーフェクト・レボリューション」(松本准平監督)で、リリー・フランキーさん演じる車椅子生活を送る男性“クマ”と恋に落ちる風俗嬢“ミツ”を演じた女優の清野菜名さん。周囲の反対をものともせず、クマへの愛に突き進む今回のミツ役は、清野さんに何をもたらしたのか。また、清野さんが「不可能を可能にしよう」とした経験、さらに、ミツが料理をすることにちなんで、清野さん自身の得意料理などを聞いた。

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 ◇不可能を可能にした経験

 ミツは、出会って早々クマに、「あなたと私みたいなのが幸せになれたら、それってすごいことだと思いわない? それを世界に証明するの!」と宣言し、「不可能を可能にしよう」とまい進していく。清野さん自身、ときには、「本当に不可能なことってあるんだなと思ったこともありますし、それによって大きなものを得ることもあります」と語るが、基本、普段は物事には前向きに取り組むタイプで、それだけに、ミツの「不可能を可能にする」という言葉は、「私も台本を読んでいてグッときたせりふでもありますし、撮影でそれを言うときも、かなり思いが強く入っていたと思います」と打ち明ける。

 実際に不可能を可能にしようと挑戦した経験はあるかと聞くと、「この仕事において、『TOKYO TRIBE』(2014年)という作品が私にとってはかなり大きな壁でした」と明かす。「当時はまだスタートラインにも立てていない状態だったので、今後、本当に(俳優を)やっていけるかという、自分の中での覚悟を問われる作品でした。あのときは本当に毎日がつらくて、撮影に行っても早く帰りたくて。でも、これを乗り越えたらきっと大きくなれる気がすると自分に言い聞かせて、毎日毎日やっていました。その壁を乗り越えて、撮影も乗り越えたからこそ、(俳優を)一生やっていきたいと思えるようになったのだと思います」と、ヘビーながらも貴重な体験に感謝する。

 ◇初海外はハワイ一人旅

 その一方で、「全然違う軽い話なんですけれど……」と前置きした上で教えてくれたのは、今年1月に一人でハワイを訪れたときのエピソード。「海外に行ったのは初めてだったので、自分でも冒険でした。行った理由は英語をしゃべりたかったからです。周囲からは、ハワイだからあまり意味ないよと言われて、(現地で)洋服を買いに行っても、日本人の店員さんがいて、日本語で接客してくれるのですが、私は、『I’m studying English.(英語を勉強中なので)』と、あえて英語で押し通しました。そうしたら店員さんも、『OK』と英語で話しかけてくれて。でも、向こうの人はオープンな分、日本人は控えめだから、たくさん話しかけられて、その圧力に泣きました」と苦笑交じりに明かす。

 劇中、ミツはクマのために手料理を振る舞う。しかし、出来上がった料理は、味見をしたクマが顔をしかめるような代物だ。対して清野さん自身は料理はするそうだが、「料理って大変だし、買い物に行かなきゃいけなかったりするので、余裕があったらやりたいですけれど……」と、時間に余裕がない今はなかなかできないと残念がる。それでも、得意料理はハンバーグとパスタだといい、特にパスタは辛口のトマトソースが得意で、また、「祖母が実家で畑をやっていて、夏にはフルーツやトマトを送ってくれるので、バジルやアボカドを加えて、冷製カッペリーニとか、結構凝ったものを作るのが好きです」と笑顔で語る。

 ◇ミツ役で得たもの

 清野さんは、07年、雑誌「ピチレモン」の専属モデルとして芸能界デビューし、以来、「TOKYO TRIBE」でのヒロインや、映画初主演作の「東京無国籍少女」(15年)での心に傷を負った女子高校生などさまざまな役を演じてきた。そんな清野さんにとって今回のミツは、どういう存在だったのだろうか。

 「これまではこういうディープな役でも、どちらかというと暗い役で、口数が少なかったり、せりふも多くなかったりと、感情をバンと表に出すことはありませんでした。でも、今回のミツは、0(ゼロ)もあるし100もあるしと、本当に感情の振り幅が大きい役で、100(の感情)をやったときに、そこまで振り切ったことがないというところまで持っていけたので、自分自身、新しい発見がありました」と振り返る。

 そういった経験のお陰で、その後、別の作品で演じるときも、マックスの感情から引き算をすればいいと考えるようになり、「振り切ることへのためらいがなくなって、演じることがすごく楽しくなりました」と充実感をにじませる。そして今作を、「自分の分岐点というか、成長できた一つの作品です」と位置付け、自信を見せた。。

 <プロフィル>

 せいの・なな 1994年10月14日生まれ、愛知県出身。2007年に雑誌「ピチレモン」の専属モデルとしてデビュー。2014年、園子温監督作「TOKYO TRIBE」でヒロインを演じ、第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞する。15年に公開された押井守監督作「東京無国籍少女」で初主演を務め、同作の演技で第4回ジャパンアクションアワードのベストアクション女優賞を獲得。17年は舞台、劇団☆新感線「髑髏城の七人」Season花 、映画「暗黒女子」、ドラマ「やすらぎの郷」などに出演。9月23日公開の「ユリゴコロ」にも出演しており、10月2日から放送のドラマ「トットちゃん!」では主人公の黒柳徹子を演じる。

(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)

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