3月のライオン:河西健吾、岡本信彦 アニメ第2期を語る 「人間ドラマが素晴らしい」

テレビアニメ「3月のライオン」で声優を務める岡本信彦さん(左)と河西健吾さん
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テレビアニメ「3月のライオン」で声優を務める岡本信彦さん(左)と河西健吾さん

 羽海野(うみの)チカさんの人気将棋マンガが原作のテレビアニメ「3月のライオン」の第2シリーズ(以下、第2期)が14日、NHK総合でスタート、毎週土曜午後11時に放送される。高校生のプロ棋士・桐山零と川本家の3姉妹の触れ合いや、プロ棋士たちの戦いが描かれる。アニメで、つらい過去を抱えながら生きる主人公・零の声優を務めるのが河西健吾さん、零の幼い頃からのライバル・二海堂晴信の声優が岡本信彦さんだ。2人に第2期の見どころや、役への思いについて聞いた。

ウナギノボリ

 ◇つらい過去を抱える零の「優しさ」と二海堂の「熱さ」

 --第1シリーズ(以下、第1期)の反響は?

 河西さん 原作のファンの方だとは思うんですけど、「零くんの声が僕で良かった」という声をけっこうたくさんいただいたので、演じた身としてすごくうれしいなと。どうしても原作の力がすごいので、それに対して僕がどうアプローチできるかというと、やっぱり声しかないですから。

 岡本さん 一番反響が大きいと感じるのは、自分の田舎のおじちゃんたちからの声ですね。僕は、両親の田舎が愛媛で、愛媛の人たちは「我こそは四段なり」みたいな将棋に自信のある人たちが多くて。実際は初段程度なんですけどね(笑い)。そういうおじちゃんたちが「ノブ、良かったな」「見てるぞ」と言ってくれました。

 --第1期では、両親と死別した零のつらい過去や、二海堂が幼い頃から病弱ながらも将棋に向き合う姿も描かれました。演じたキャラクターの印象は?

 河西さん 零は、根底に持っている優しさみたいなものはあるんですけど、生い立ちが生い立ちなので、やっぱり他者と接することのつらさも知っていて、他者との間に自分から線引きをしてしまったりもするんです。ただ、手の届く範囲にいる人たちがすごく困っていたら、損得無しにそこに飛び込んでいく。自分の力で何とかしてあげたいとか、方法が分からなければ、分かる人に食いついてでも聞き出して助けてあげようという優しさを持っているキャラクターだと思います。第2期では、そういう面がより表面的に見えてくるんです。

 岡本さん 僕は、二海堂の魅力はポジティブなところだとずっと思っていて、それは2期でも変わりません。ただ2期では、そんな二海堂君でもネガティブになる時があるんだなというのが見られる。そんな時に、二海堂に声をかけるのが零くんで、それも含めて2人はいい関係なんだろうなと思います。口数が少ない零くんの言葉は貴重で、二海堂にとってはすごく温かくて、うれしいものなんですよね。僕の中では、二海堂は陽気になろう、熱くなろうとしている熱い男というイメージが強いです。

 ◇2人の距離が縮まった? 一緒にバドミントンも…

 --第1~第2期と共演して、お互いの印象は変わりましたか?

 岡本さん 河西くんに対しては、ずっと変わらず、すごくクールなイメージがあるんですけど、そんな中でも「とっても好きなことに真っすぐなんだな」という印象が強くなりましたね。河西くんは、とってもゲームが好きなんですよ。「何のゲームをしてる?」と聞くと、必ず2~3本は網羅している。僕もゲームは好きで、河西くんとゲームの話をする機会が増えたことは、1期の頃にはなかったことですね。「共通の趣味があったんだね」って。

 河西さん 作品で一緒になる時間が増えたことによって、話す機会も増えてくるので、僕は一緒に話す時間がもっともっと増えたらいいなというか。一緒にご飯行ったリとか、一緒にバドミントンをやったりとか。岡本くんは、ちょっと時間が空いたらバドミントンをやっているので……。

 岡本さん あ、ホント? マジで? 体動かす? やった、うれしい!

 河西さん 一緒に体を動かすのもやってみたいですね。最近は、人と話したいなというか。今までは、零くんみたいにかたくなに他人と線引きしてたところはあるので……(笑い)。今まで話してこなかったような人たちと話すと、「こんなふうなことを思ってたんだな」「この人、こういう感じなんだな」と分かって楽しくなっている自分がいて。一番作品で関わっている岡本くんと話していると、楽しいなって思うことが多々あるんです。だから、1期と比べたら、社交的になれたのかなという感じはありますね。そこは、岡本くんからの影響も大きいです。

 ◇藤井四段の活躍にジェラシーも

 --第1期の放送終了後には、実際の将棋の世界で藤井聡太四段のめざましい活躍がありました。2人はその活躍をどんな思いで見ていた?

 河西さん 藤井四段は、零くんよりも年下で、多分零くんよりも強いんじゃないかなって。僕もこの作品に関わるまでは「将棋って若い人には……」と思っていた部分はあったんですけど、将棋会館へロケに行かせていただいた時に、若い子たちが将棋を楽しそうに指してるのを見て「なんで将棋をやってこなかったんだろう」と、大人になって気付かされた部分が多いんです。そんな中で、今話題をかっさらっていく藤井四段を見ていると、ちょっとジェラシーを感じるところもありますね。

 岡本さん 僕は子供の頃から将棋を指していて、将棋の世界の世代交代の片りんを見せられたというか。昔からのトップクラスの方々を倒そうとする化け物が生まれたというのがうれしくて、ドラマを見てるかのように藤井四段の活躍を楽しんでましたね。

 ◇第2期は零が人間として成長 「こじらせてはいるけど…」

 --第2期では、零が部活動に参加したり、川本家のひなた(声・花澤香菜さん)のいじめの問題も取り上げられますが、見どころは?

 河西さん 第1期は、プロ棋士としての零に焦点が当てられていて、将棋の世界を全体的に見せていたと思うんですけど、2期では周りの人間たちが抱えているものやドラマが細かく描かれます。もちろん将棋もやりますし、将棋好きな人から見ても楽しめる部分が多いですが、2期は人間ドラマが素晴らしいので、将棋を分からない人が見ても楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。

 岡本さん 僕は、第2期から、将棋しか無かったはずの零くんに将棋以外の存在が生まれていっているのを感じています。これまでは、零くんの将棋の強さから会話が成立しているような人たちもけっこういて、将棋と全く関係無いところは川本家しかなかったんです。そんな中で、第2期では、ひなちゃん(ひなた)の問題が起こって、零くんの中で「自分にもしてあげられることがあるのかも」と、「必要とされている感」が芽生え始めているんじゃないかと。人として零くんが何かを話している感じが濃くなるのが、第2期だと思います。

 河西さん 零は、川本家や担任の林田先生、将棋の仲間たちからいろんなものをもらって、ちょっとずつ人間味を帯びていっているんではないかなと思います。ちょっと「こじらせている」部分もあるんですけど、少しずつ人として何かを得ていってるんだなという感じはありますね。

 ◇二海堂は「将来」、零は「自分」と戦っている

 --作品のキャッチコピーの一つとして「これは、戦いの物語。」という言葉が掲げられています。これまで演じてきて、零と二海堂はそれぞれ何と戦っているのだと思いますか?

 岡本さん これは違っていたら、本当に羽海野先生に申し訳ないんですけど……二海堂は「将来」と戦っている気がしています。二海堂は、もしかしたら長生きできない可能性もあって、生きているうちにやれることというか、未来のことをいっぱい話すんですよ。そして、その未来には必ず零くんがいる。二海堂が発する言葉は、「ホント死んじゃうの?」と思うような、普通のアニメだったら「これ、死亡フラグ」というようなものが多くて心配になっちゃうんです。でも、それぐらい将来のために今を全力で生きて、戦ってる感じがしてますね。「今」というより「将来」というイメージがとっても強いです。

 河西さん 何と戦っているか……。難しいですけど、零は「自分」と戦っているんじゃないかなと思います。零の幼少期からの流れを見ると、いろいろな困難を回避する方法はいくらでもあったはずなのに、子供だから選択肢が限られていて、今現在に至っている。だから、誰かを助けようとする時も、本当はこうしたいけど、過去の経験から「それじゃダメだ」と思ったり、方法が分からないから身近にいる人たちをとっ捕まえて教えてもらおうとしたり……自分自身をどんどん変えていきたいんじゃないのかなと思います。

 --最後に視聴者の方にメッセージを。

 岡本さん 今は将棋がけっこうブームで、加藤一二三さんのバラエティー進出も含め、すごく将棋が身近な存在にあると思いますし、第2期から入っていただいても楽しめる作品なので、ぜひ見ていただきたいと思います。

 河西さん 原作のファンの方もすごく注目されている作品だと思っているので、僕は声高に「ぜひ3期をやってくれ」と言いたい気持ちなんです。みなさんが「原作が終わるまでやってくれ」と言い続けていただければ、上の方々はやるしかないと言ってくださると思うので(笑い)。ぜひとも、2期も楽しんでいただきたいです。

 「3月のライオン」は、2007年7月から「ヤングアニマル」で連載中の羽海野さんの人気将棋マンガ。中学生でプロデビューした17歳の棋士・桐山零と、川本家の3姉妹の触れ合いを描き、11年に「第4回マンガ大賞2011」と「第35回講談社漫画賞」、14年には「第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞」を受賞。テレビアニメの第1期は、2016年10月~17年3月に放送された。

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