今や押しも押されもせぬ人気若手女優の広瀬すずさんと肩を並べるのは果たして誰なのか? そんな疑問に今年、一発回答を出してみせたのが橋本環奈さんだ。最終興行収入約38億4000万円と2017年の実写邦画でナンバーワンヒットとなっている「銀魂」で見せた橋本さんのインパクトに、ライバルたちはかなわないだろう。くしくも橋本さんと広瀬さんは同学年。2人とも早くから美少女として注目されていたが、ここまでの歩みはまさに対極と言える。改めて、その魅力を探った。
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橋本さんを語る上で外せないのが、2013年11月にインターネットに出回った“奇跡の一枚”と言われる写真。当時、福岡を拠点に活動するアイドルグループ「Rev. from DVL(レブ・フロム・ディー・ブイ・エル)」に在籍していた橋本さん。「1000年に1人の逸材」などとキャッチフレーズが付き、一躍脚光を浴びた。
バラエティー番組への出演やCM起用を経て、14年7月期に放送された連続ドラマ「水球ヤンキース」(フジテレビ系)で本格女優デビューを果たすと、15年3月公開の映画「暗殺教室」に人工知能を搭載した兵器“自律思考固定砲台”として出演。16年3月には初主演映画「セーラー服と機関銃 -卒業-」が公開と、とんとん拍子で上り詰めたものの、この時点では、まだまだ話題先行の(ローカル)アイドルの域を脱せず、橋本さんを女優として評価する声はあまり聞かれなかった。
広瀬さんに目を向けると、12年に人気女優の登竜門とも言われる雑誌「Seventeen(セブンティーン)」(集英社)の専属モデルオーディション「ミスセブンティーン」に選ばれ、13年に連続ドラマ「幽かな彼女」(フジテレビ系)で女優デビュー。14年には、やはり人気女優の登竜門とされる結婚情報誌「ゼクシィ」(リクルート)のCMガールや全国高校サッカー選手権大会の応援マネジャーを務めた。15年には是枝裕和監督の映画「海街diary」で銀幕デビューを果たし、細田守監督の劇場版アニメ「バケモノの子」では声優初挑戦と、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。特に「海街diary」の演技は高い評価を受け、わずか16~17歳にして女優としての地位を確かなものにした。
活躍は翌16年も続き、3月公開の「ちはやふる」で映画単独初主演。厳しい演技指導をすることで有名な李相日監督がメガホンをとった映画「怒り」では、渡辺謙さんや宮崎あおいさん、妻夫木聡さん、綾野剛さん、松山ケンイチさんら、名だたる共演者に交じっても存在感を失わず、難役を演じ切った。
人気女優の登竜門を通り抜け、名匠と呼ばれる監督の作品でもまれて、可愛いだけじゃない実力派として輝きを放つ広瀬さん。対岸で危うくアイドル女優の枠組みにはめ込まれそうになっていた橋本さんの潮目が大きく変わったのは今年に入ってからだ。
厳密に言うと映画「ハルチカ」の後、「勇者ヨシヒコ」シリーズや映画「HK/変態仮面アブノーマル・クライシス」などで知られる福田雄一監督が手掛けた2作品「銀魂」「斉木楠雄のΨ難(さいきくすおのサイなん)」にヒロインとして起用されてからだ。“鼻ほじ”をはじめとする振り切ったコメディエンヌぶりは、来年4月スタートのNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「半分、青い。」のヒロインに決定している永野芽郁さん、映画「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」が話題となった浜辺美波さんら、同世代を寄せ付けない「女優魂」のようなものを感じさせてくれた。
広瀬さんにとっての是枝監督のような、女優としての魅力を引き出し、正しく導いてくれる人物に、橋本さんもやっと巡り会えたとも言える。アイドルや女優に詳しいライターの風間直人さんは「アイドルから女優へ転身後は殻をかぶっている感を強く感じたが、福田監督に(才能を)見いだされてから、演技面はもちろん、芸能イベントや舞台あいさつの雰囲気も一変。大きな口を開けて笑ったり、共演者にツッコミを入れたりと自然体で、可愛いのに気取ったところがなく、まさに鬼に金棒」と橋本さんの変化と魅力を語る。
風間さんは「華やかな顔立ちでガーリー、キラキラとした笑顔も印象的。明るいイメージ一色の橋本さんは“太陽”」で、「目力が強くエキゾチックな顔立ち、時にボーイッシュ&クールな雰囲気を併せ持ち、かつ陰も感じさせるキャラクター。名だたる監督や共演者にもまれて、抜群の演技力でシリアスな作品でも存在感を放つ広瀬さんは“月”」と表現。「現在、若手女優の先頭をひた走る2人から受けるイメージは対極的な部分が実は多いんです」と分析する。
広瀬さんは今年6月で19歳となり、10代最後の1年を送っているところだ。11月には、記念すべき100作目の朝ドラ「夏空-なつぞら-」のヒロインに抜てき(放送は19年4月から)されたことが明らかになり、18年は1月から主演連続ドラマ「anone」(日本テレビ系)が始まり、「ちはやふる -結び-」を含む、出演映画3作品の公開が控えるなど、女優としての未来は前途洋々だ。
翻って橋本さんは、人気グループ「KAT-TUN」の亀梨和也さん主演の18年1月期の連続ドラマ「FINAL CUT(ファイナルカット)」(関西テレビ・フジテレビ系)で、ヒロイン・栗山千明さんの妹役に決まっているものの、アナウンスはここまでとなっている。
今年11月の「ヒットメーカー・オブ・ザ・イヤー 2017」(「日経エンタテインメント!」主催)の表彰式で福田監督は、「天下無敵のコメディエンヌに成長」「なかなか出てこない器」と橋本さんを絶賛しながらも、「コメディー以外でも活躍しなくてはいけない女優さん。僕のところの専属みたいになっちゃうと……。次はやっぱり朝ドラを狙わないと」と冗談交じりに今後について心配していた。
来年2月には19歳となり、10代最後の1年に突入する橋本さんがどんな役を演じ、福田監督によって見いだされた才能をどのような方向に伸ばしていくのか、注目だ。