薬屋のひとりごと
第33話 先帝
3月7日(金)放送分
実用書大手として知られる主婦の友社のライトノベルレーベル「ヒーロー文庫」。2012年に創刊され、後発ではあるが、昨年は「ナイツ&マジック」「異世界食堂」の2作品がテレビアニメ化されるなど人気レーベルとしての地位を確立している。昨年は63冊が刊行され、同社の高原秀樹さんがほぼ一人で編集を担当。高原さんは昨年、新レーベル「プライムノベルス」24冊の編集を担当し、一年で計87冊もの作品を手がけた。高原さんによると「昔、他社で一年に60冊手がけた人がいたという話を聞いたことはありますが、87冊は最多なのなかもしれません」という。驚異の仕事量はどのように実現したのか……。高原さんに編集の裏側を聞いた。
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「ヒーロー文庫」「プライムノベルス」は高原さんとアシスタントの2人体制で、昨年刊行された87冊のうち、6冊はアシスタントが編集し、高原さんがデスクを担当した。つまり、すべてが高原さんが関わっている。業界大手の「電撃文庫」(KADOKAWA)の一年の刊行点数は150冊程度で、それに比べると多くはないが、ほぼ一人で編集しているというのは極めて異例だろう。高原さんの担当作品は週刊以上のペースで刊行されたことになる。
16年に高原さんが担当したのは50冊。17年は新レーベルの誕生もあって、刊行点数が大幅に増えた。高原さんは「17年は気が付いたら、こんな冊数になっていました……。他社で一年で60冊手がけた人を超えるために計画的にやったわけではありません。少し意識はしましたが」と振り返る。
働き方改革が叫ばれている昨今、労働時間が心配になるところだが、「そんなに会社にいないし、大した労働時間ではない」と語る。平日は午前5時ごろに起き、午前中は家やカフェなどで原稿を読み、その後、会社で事務作業をする。夕方以降は著者との打ち合わせをして、深夜0時までには就寝する。
編集は、イレギュラーなことに巻き込まれることも多いものだが、高原さんはなるべく仕事をルーティン化し、規則正しい生活を意識しているという。「頭がさえているので、頭を使う作業は午前中にやっています。無駄な会議には出ないし、電話や打ち合わせは時間泥棒になるケースが多いので、メールで済むことはメールで済ませます」と話す。
プライベートもなるべくルーティン化していて「体調、コンディションを第一に考えています。なるべくストレスを遠ざけるようにもしています。日用品、消耗品は同じところで同じものを買うことで、選ぶ時間を短縮。よいパフォーマンスを発揮するために毎日、ジョギングを30分して、腕立て、腹筋などの自重運動を欠かさない」というように、規則正しい生活を徹底している。
著者のケアも編集の大事な仕事だ。刊行点数が増えると、それがおろそかになるのでは……とも心配にもなるが、高原さんは「おろそかにしているわけではないですよ」と笑顔で話す。「メールだけのやり取りがいい人もいますし、悩みを直接話したいという人もいます。著者に合わせてやり取りしています」と語る。
ヒーロー文庫は創刊から約5年がたった。小説投稿サイト「小説家になろう」から生まれた“なろう系”と呼ばれる作品がほとんどで、高原さんは玉石混交の投稿作品の中から刊行作品を探してきた。「5年やっているので慣れもあり、ノウハウもたまってきて、ルーティン化ができているところもあります。速読を学んだわけではないのですが、作品を読むスピードも速くなっています」と明かす。
なろう系は、「Re:ゼロから始める異世界生活」「この素晴らしい世界に祝福を!」など数々のヒット作が生まれ、各出版社が作品を続々と刊行。競争が激化している。高原さんは今年の展開について「なろう系は、コミカライズもヒットしているので、コミックもさらに手がけていきたい。ライトノベルはメガヒットが出にくくなっているところもあります。新たなメガヒットも作っていきたい。冊数はなりゆきに任せて、著者の方とのご縁を大事に少しでもよい本を世に送り出すお手伝いができれば」と話す。高原さんが今年、手がける冊数も気になるが、メガヒット作の誕生にも期待したい。
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