Paravi:TBS・テレ東・WOWOWの新動画配信サービスの狙い 社長に聞く

プレミアム・プラットフォーム・ジャパンの高綱康裕社長
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プレミアム・プラットフォーム・ジャパンの高綱康裕社長

 TBSとテレビ東京、WOWOWのテレビ局3社が協力して「最大級の国内ドラマアーカイブ」をうたう動画配信サービス「Paravi(パラビ)」(月額999円)が1日にサービスを始めた。「Netflix(ネットフリックス)」や「Hulu」、アマゾンの会員向け映像配信サービス「プライム・ビデオ」などが先行する中、どう対抗するのか。サービスの経緯や狙いについいて同サービスの運営会社「プレミアム・プラットフォーム・ジャパン(PPJ)」(東京都港区)の高綱康裕社長に聞いた。

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 ◇コンテンツ価値の最大化が狙い

 PPJは、東京放送ホールディングスや日本経済新聞社、テレビ東京ホールディングス、WOWOW、電通、博報堂DYメディアパートナーズの6社が共同出資した。資本金は40億円で、昨年7月に発足した。筆頭株主は東京放送ホールディングスの31.5%。TBSとテレビ東京、WOWOWの3社が連合し映像コンテンツを配信するほか、日本経済新聞グループの経済系テキストコンテンツを活用する。

 サービス開始の経緯について、高綱社長は「テレビコンテンツの価値の最大化が狙い。よく『テレビの視聴率は落ちている』と言われますが、録画再生も含めた総合視聴率では20%を超えるドラマはいくつもあります。テレビが見られなくなったわけではなく、テレビという受信機ありきのデバイスが、時代の流れの中で合わなくなっている」と説明した。

 「テレビ局としては、コンテンツの質に自負はあります。テレビのビジネスから半歩進んだ形にしたい。テレビに依存しないデバイスフリー、時間を問わないタイムフリー、場所を問わないプレースフリー。制約を問わない配信ビジネスを考えています」と狙いを語る。

 動画配信ビジネスは、既に多くの先行ビジネスがあり、ネット系ビジネスは先行者利得が大きいと言われる。TBSもParavi以外のプロバイダーに映像コンテンツを配信している。Paraviは、後発組としてどう巻き返すのか。高綱社長は「配信ビジネスでは、(コンテンツ業界以外の)異業種からの参入もある。今でこそコンテンツは高値で買われていますが、一つが突出して強くなるとコンテンツとプロバイダーの力関係が逆転してプロバイダーが強くなり、そのときにコンテンツは買いたたかれる可能性があることを忘れてはいけない。我々の目的である『コンテンツ価値の最大化』が逆に振れてしまうわけです。だから自分たちでやる必要があるんです」と力説する。

 さらに「可能ならば、一つのサービスに、たくさんのメディアが参加するのが理想で、そうすれば利用者の利便性が高まる。だからParaviは、全局に『一緒にやりませんか』と声をかけた」と明かしている。現在も映画会社などと交渉中。他局の参加は今後も歓迎という。しかし高綱社長は「ただ我々(のサービス)は始まったばかり」とまだ様子見される立場であることも分かっている。

◇テレビ局との住み分けは

 テレビとネット配信で常に話題になるのが、すみ分けはできるか?ということだ。テレビとネットのカニバリズム(共食い)について高綱社長は「例えば、世界卓球ですが、ゴールンデンウイークに外出する人でも、興味があれば外出先でライブで見られるようになる。テレビのビジネススキームは、テレビという受信機の前にリアルタイムでいないといけないわけで、テレビにこだわり過ぎると逆にコンテンツが届かない」と話し、「テレビの視聴からこぼれている人に、テレビのコンテンツを届ける手段になる」と説明する。

 「もちろん大きな目で見ると、可処分所得の取り合いという見方もあるが、逆にリーチが大きくなるという考えもできる。スマホに配信すれば、テレビを見なくなったデジタルネーティブにテレビのコンテンツを見せることもできる。ツイッターの話題や、ヤフーニュースのトピックスにテレビ発のネタは多い。テレビのコンテンツに触れることを大事と考えると、私は問題ないことかなと思いますね」と分析した。

 Paraviの最大の強みは、TBSとテレ東、WOWOW、日経新聞のメディア4社が連合し、毎日コンテンツを配信していることを挙げた。高綱社長は「テレビ局には、著作権処理が難しいコンテンツがたくさんありますが、それらを処理していけば、ライブラリーはたくさんあるんです。超高齢社会で昔の作品の需要が高まることも考えられます」と説明する。

 ほかの特徴について高綱社長は(1)1週間で50本のコンテンツを用意して毎日更新する(2)テレビ番組のスピンオフなどオリジナルコンテンツの配信(3)国内最大のドラマのアーカイブ(4)日経新聞グループなどの動画だけでないテキストコンテンツ(5)ライブ配信……の五つを挙げた。高綱社長は「動画配信よりも、毎日サイトに行きたくなるプラットフォーム。他の動画プラットフォームとは違う路線にしたい」と話す。

 高綱社長は「登録月は無料なので、コンテンツの山・森を探検していただければ。『こんなのがあるんだ』という発見があると思います」と自信を見せながら「注意したいのはシステムトラブル。テレビ局は視聴者が無料のビジネスですが、動画配信は有料サービス。カスタマーの声を聞きながら、システム改修を含めて、できるだけ早く対応することが一番しなければいけないこと」と話した。

 事業の黒字化について高綱社長は「初年度はまだまだ。会社なので事業計画はあるのですが、計画通りにいくとは思ってない。まずは多くの人にコンテンツに触れてもらえれば」と話している。

 ◇プロフィル

 たかつな やすひろ=1960年生まれ。1983年に早稲田大政経学部経済学科卒業、同年東京放送に入社。2005年TBSテレビ編成局宣伝部長、2013年TBSテレビ情報システム局長、2017年東京放送ホールディングス執行役員。2017年7月、PPJ社長に就任した。

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