神谷浩史:「宇宙戦艦ヤマト2202」語る 第5章で思いも寄らないキーマンが… インタビュー前編

「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」に出演する神谷浩史さん
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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」に出演する神谷浩史さん

 人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の最新作「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の第5章「煉獄(れんごく)篇」が25日、公開された。「2202」でキーマンとなる新キャラクターが、ガミラス帝国地球駐在武官のクラウス・キーマンだ。キーマンを演じる神谷浩史さんとアニメを手掛ける羽原信義監督に、第5章の見どころ、キャラクターへの思いを聞いた。

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 ◇神谷浩史が想像していた以上のキーマンに

 ――第4章までキーマンを演じてきて、どんなキャラクターだと感じていますか?

 神谷さん 相変わらず何を考えているのか分からないガミラス人の男がヤマトに乗っている……。それ以上のことは、第4章までご覧になっている皆さんも感じ取ることができないと思いますし、その先を感じ取らせてはいけないなと僕は思っています。キーマンの人物像については羽原監督と(脚本の)福井(晴敏)さんから話を伺っていますが、それが生かされてくるのは第5章以降なので、第4章までだと言えるのは、ガミラス人の怪しい男ということくらいですね(笑い)。

 ――羽原監督から見て、神谷さんが演じるキーマンの印象は?

 羽原監督 シナリオを読んだ段階から僕の中でキーマンのせりふは神谷さんの声で聞こえていたんですけど、収録の時には僕が想像していた以上のキーマンになっていたので、とても満足しています。

 神谷さん うれしいです、役者冥利に尽きますね。仕事でのつながりは一期一会と言いますけど、(作品が終わってすぐに別れてしまうのは)嫌だなと常々思っているので(笑い)、すごく好きなスタッフの方々と再び一緒に仕事ができる喜びはとても大きいです。「ブレイク ブレイド」(2010~11年上映)という作品のオーディションで、僕の声と芝居や人となりを羽原監督に知っていただき、その作品で役をいただくこともできました。そういった今までの関係値を踏まえた上で、今回のキーマンという役を任せていただけたと感じているので、一作品だけ、一クールだけのサイクルが短い付き合いとは違った情熱の注ぎ方ができると思っています。過去に演じたあの役があったからこの役にたどり着けているんだというありがたみは、演じている役に情熱や愛情を傾ける理由の一つになるので、より強い覚悟を持って現場に参加することができますし、その信頼関係が作品を育むことにつながればいいなと。アニメーションは特に「また同じキャスティングかよ……」って言われがちな世界ですけど、何度も組んでいるスタッフとキャストだからこそできる何かが絶対にあると僕は思います。今回の「ヤマト」ではそれを表現できたらいいなと思っています。

 羽原監督 そう言っていただけると本当にありがたいですし、うれしいですね。スケジュール的には相当厳しかったそうなんですけど、「神谷さんしかいないのでお願いします!」と無理なお願いをさせていただきまして。その結果は皆さんがご覧の通り、素晴らしいものになりました。

 神谷さん 羽原監督が手掛ける「ヤマト」だからということで事務所もスケジュールを調整してくれた部分があるので、それもやっぱり信頼関係の表れですよね。

 羽原監督 うれしい~(笑い)。

 ◇印象的なせりふは「乗せろ、いいから」

 ――古代進役の小野大輔さんは過去のインタビューで「福井さんに熱心に質問している神谷さんの姿が印象的だった」と話していました。神谷さんはキーマンという役に対してどのようにアプローチしていますか?

 神谷さん 置かれた状況に対してこのキャラクターがどういう行動を取るのかというところがメインになってくると思うので、まずはキャラクターの基本情報を聞いて、ベースを作り上げていくために「どういうつもりなんだ!」と福井さんを直撃しました(笑い)。いろいろ教えていただいたことを自分の中にインプットした上で芝居に臨んでいます。基本的にキーマンはこういう人であるという軸はありながら、当然状況が変われば心境も変化するので反応はその時々によると思います。

 ――羽原監督は神谷さんの演技に対して演出することは?

 羽原監督 基本的にはしません。ただ、絵がまだ上がっていない中でアフレコをしているので(笑い)、「距離感はこのくらいですよ」といった情報はお伝えしています。神谷さんのアフレコを見ていてビックリすることはいくつかありますね。何もお伝えしていないのにラフで描かれた細かい表情や息遣いの変化も全部拾ってくださり、勘が鋭い方だなと。未完成の絵を見てもきちんとキャラクターを感じ取れるところには大きな信頼を置いています。

 神谷さん たまに羽原監督が絵コンテを描かれている時があるんですけど、僕は羽原監督の絵がとても好きなのでその時はちょっとテンションが上がりますね(笑い)。

 ――第4章までのアフレコで印象に残ったせりふは?

 神谷さん ヤマトに乗る時に古代進に言い放った「乗せろ、いいから」ですね。こんなむちゃくちゃな言葉はないですから(笑い)。何かしらの野心を持っているガミラス人が、地球人しか乗っていないヤマトに乗るにあたって、あまりにも説得力のないせりふだなとは思ったんですけど。ただ、そこにコイツを乗せなきゃいけない何かを感じさせる強さはありますよね。でも、みんな何であれで納得したんだろう? 古代は分かりますけど、真田(志郎)さんは「ちょっと待て!」とか言いそうですけどね(笑い)。

 羽原監督 「乗せろ」と「いいから」の間をどれくらいにするか編集の時にすごく悩みました。ほかに印象に残っているキーマンのせりふは、やはり「お仕置きだ」ですね。シナリオを読んだ段階から、ここのせりふはアップで抜きだなと思っていたんですけど、ヘルメットを被っていることをすっかり忘れていまして……。絵コンテの段階では確かヘルメットを描いていなかったんですけど、後から気付いてこれじゃ表情が見えないと焦り(笑い)、ガラスを透けさせたりして何とか対処しました。

 ――共演シーンが多い古代役の小野さんとのアフレコはいかがでしたか。

 神谷さん 小野さんは前作の「宇宙戦艦ヤマト2199」で26本分、ヤマトのセンターとして作品を引っ張ってきた実績があるので、何の不安もなく芝居をさせていただいています。ただ、古代自身はかなり不安定な人間なので(笑い)、キーマンがそれとなく正しい方向に導こうとするシーンが何度か出てきます。キーマンは伝わりやすいように言葉を選んだりする人ではないので、僕自身も突き放した言い方で演じているんですけど、果たして古代はその言葉の真意をくみ取ることができるんだろうかって不安になる時がたまにあります(笑い)。(後編に続く)

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