4月から2カ月間にわたって開催してきたお笑いタレントの友近さん率いる一座のコントライブツアー「友近ワイド劇場」が5日の広島追加公演でフィナーレを迎えた。芝居と映像的演出を融合し、単なるコントを超えた“友近ワールド”に、チケットは即完売。全国7カ所8公演、1万人以上を動員し、芸人だけでなく、女優やミュージシャン、業界スタッフも大絶賛する。公演を終えた友近さんに、話を聞いた。
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友近さんはピン芸人としてブレークした2001年から毎年、単独ライブを開いてきた。14〜15年からはユニットコントライブも展開し、「友近ハウス」と題して、バッファロー吾郎Aさんやお笑いコンビ「ずん」の飯尾和樹さん、お笑いトリオ「ロバート」の秋山竜次さん、お笑いコンビ「ハリセンボン」の近藤春菜さん、ピン芸人の渡辺直美さんらと共に、人気リアリティー番組「テラスハウス」(フジテレビ系)をモチーフにしたコントを展開し、独特の世界観で成功を収めた。16〜17年はNHK連続テレビ小説(朝ドラ)をモチーフにした「友近連続ライブ小説『おそかれはやかれ』」も大好評だった。
今回は、レギュラーメンバーの5人に加え、ピン芸人のゆりやんレトリィバァさんとお笑いコンビ「シソンヌ」のじろうさんが参加。1980年代にヒットしたフュージョンバンド「シャカタク」の「Night Birds」のミュージックビデオを全員で演じた映像で幕開け、渡辺さんとの北関東のいかついYouTuber兄弟や、秋山さんとの卓球母娘、春菜さんと飯尾さんとのローカルの朝の情報番組のMCなど強烈なキャラ同士がマッチアップするユニットコントを次々と展開。友近さんが“愛してやまない”という先輩芸人である「ちゃらんぽらん」の冨好真さんが友近の携帯に残した留守電をただただ観客に聞いてもらうというシュールな映像が上映された。
後半、メインとなる「友近ワイド劇場〜黒蛙の美女〜」は、70年代のサスペンスドラマ枠「土曜ワイド劇場」(テレビ朝日系)で天知茂さんが名探偵・明智小五郎を演じた「江戸川乱歩の美女シリーズ」をモチーフにした。友近さんが、女優の小川真由美さんをほうふつとさせるなまめかしくも怪しい美女、Aさんが大財閥の会長、秋山さんが謎を秘めた娘の家庭教師の大学教授、飯尾さんが刑事を演じ、渡辺さんとゆりやんさんがその娘、春菜さんとじろうさんが使用人をそれぞれダブルキャストで演じた。
まず目を引くのが、出演者の個性が存分に生かされたキャラ造形だ。初代キングオブコント王者のAさんは、デビュー直後の友近さんを見いだした恩人でもあり、「何をやってもすぐ完璧に演じてもらえる」と絶大な信頼を寄せるベテラン。強烈なキャラを演じる秋山さんはまさに“盟友”で、友近さんは「私が面白いということを面白いと思ってもらえる感性が同じで、お笑いに対する姿勢が皆さん真剣。先輩後輩関係なく、皆さん尊敬し合えるメンバーです。けいこでも面白いことを追求して朝までかかることもある。しかし、誰一人時計を見て終わりを気にする人がいないんです」と語る。
その個性を生かすのが友近さんのお笑いへのこだわりだ。子供のころからテレビで見て大好きだった「土曜ワイド劇場」の世界観を再現し、公演途中でも窓枠を「変な緑色に」と塗り直すほどだという。
また、このコントライブの突き抜けたパワーの秘密は、ステージ演出・映像監督が数々のバラエティー番組を手掛けるスタッフであることだ。劇中にどこから撮っているのか分からないカメラワークと生のスイッチングで舞台セットに映し出される演者の表情や熱演ぶりが、観客の笑いを増幅させる。コント舞台では見たことがない、芸人とのあうんの呼吸が成し得るこのチームの攻めた演出。観劇したテレビマンが「こんなやり方があったか」と悔しがったという。
友近さんは「こうした素晴らしい方たちにお声掛けして、一緒に作り上げる、プロデュースすることが私の役目。3回続けてきてお客様もすべて受け入れてくれる。出演者みんなが本当に楽しんでくれて、『ずっとやっていたい』と言ってもらえる」と手応えを語る。何よりもお客様に『長いなこのライブ』と思われないように、細部にわたり楽しんでもらえるように演出を考える。これがモットーです。ただ、人気芸人ばかりでスケジュールを合わせるのが難しく、今回の広島追加公演も「みんな一生懸命調整してくれて奇跡的にそろった」と振り返る。
友近さんは「ライブで見てもらうのが一番だとこだわっているけど、今作っているものはコントと演劇と映像を融合した独特のお笑いになってきた。多くの人にこの面白さを伝えたい」という。“座長・友近”は、さらなる進化を目指す。