劇場版アニメ「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~」(長崎健司監督)が全国で公開中だ。「僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)」は、マンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の堀越耕平さんの人気マンガで、人口の約8割が超常能力を持つ世界を舞台に、主人公の緑谷出久(通称デク)が最高のヒーローを目指す姿を描いている。初の劇場版アニメでは、テレビアニメ2期と3期の間のエピソードが展開する。デク役の山下大輝さん、オールマイト役の三宅健太さん、爆豪勝己役の岡本信彦さん、轟焦凍役の梶裕貴さんの4人の声優に話を聞いた。
ウナギノボリ
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――テレビアニメ第3期も好調ですが、劇場版をやるというのはいつ聞きましたか。
山下さん:3期はやると聞いていたのですが、劇場版は割とふわっと「やりますよ」と(笑い)。劇場版をそういうふうに知るのは初めてだったので、新鮮でした。
梶さん:(聞き方としては)事故的なのかな(笑い)。
三宅さん:事故だね。
岡本さん:(自身の)歴史上、初めての聞き方かな(笑い)。
――そういう聞き方もあるんですね。
山下さん:だから聞いたときはあまり実感がなかったのですが、何館ぐらいでやるんだろうとか考えていたら、じわじわ来ました。ヒロアカの世界を大きなスクリーンで見ることができるのはすごいことだなって。
――ヒロアカのアクションは大画面に映えそうです。
山下さん:テレビシリーズも毎話そうですけど、スタッフさんも全員めちゃくちゃ力が入っていて。戦闘シーンも、映画館でやった方がいいのではというほどのクオリティー。
梶さん:今までの(テレビシリーズ)も全部、映画館で見たい。
山下さん:全部見たい! 欲をいうなら全部、一挙上映してほしい。
岡本さん:すごい時間になるけど、見たいね。
山下さん:それぐらい熱量がある作品。ただ、スタッフさんがずっと気合を入れて作っていて、個人的なイメージとして劇場版はテレビアニメよりアクションが激しいみたいなイメージがあるので、劇場版と3期が同時進行なので心配になっちゃいました。
三宅さん:どれだけの制作スタッフが“ワン・フォー・オール”を燃やしたのか、と。
山下さん:ヒーローたちがいたんでしょうね! だからこそ僕らも、いつも以上に頑張らないと、本編の熱量のまま気合を入れてやらなきゃという気持ちになりました。
――制作面では大変そうですが、テレビシリーズと劇場版が並行して作られることで、やりやすい部分はありましたか。
三宅さん:オールマイトはオール・フォー・ワンとの熱いバトルというか、最高潮に盛り上がった部分が終わってから劇場版の収録だったので、そういう意味では、自分の中で盛り上がっている状態で劇場版に入れた。劇場版となると、変に気合が入ってしまう部分もありますが、今回はそういうこともなく、熱いまま行けた気がします。
山下さん:このタイミングというのがすごくうれしい。オールマイトがトゥルーフォームになってしまったりもあって、2期と3期の間の話は今やるべきというか、今しかできない時期だと思います。
梶さん:例えばアスリートの方が引退したとしても、その人が自分にとってヒーローやスターであることには変わりなく、そのことは思い出や記憶として残っていく。それと同じで、オールマイトがヒーローであることは変わらず、それが劇場版として残ってくれるのは、とてもうれしい。定期的にこの劇場版を見直して、オールマイトが僕らにはいたんだと感じられる。
岡本さん:回想を入れたり、デクのナレーションがあったり、劇場版から見てもヒロアカが分かる構成になっているのがすごく、(劇場版の)1作目にふさわしいと思いました。
梶さん:劇場版だけ見ても分かるし、映画を見たら本編を見たくなる作りになっている。
岡本さん:そうそう。その後に3期を見てもらえるような展開になっているのがいい。夏休みはヒロアカというのを浸透させて、第2作をまたやってほしいという願いも込めて、いい作品になったと思います。
――テレビシリーズ3期に今回の劇場版と演じてきて、改めて感じるヒロアカの魅力とは?
岡本さん:ヒーローがいることでのハッピーエンド感が一番好き。どこでホッと感じるかは皆さん違うと思いますけど、個人的には、主人公が命を懸けて戦っていて、無理かもしれないという壁が見えたとき、オールマイトの笑い声というか、「私が来た!」という声が聞こえた瞬間、すごく安心します。それがヒーローのあるべき象徴的な姿なのだと思います。
梶さん:確かにオールマイトの「私が来た!」という言葉はすごい。この人がいるからもう大丈夫、安心だと思えれば、これ以上のヒーローはいない。原作を読んだり、アニメを見ていて、そういう瞬間に、ふと泣きそうになります。うまく説明できませんが、ヒーローの描き方が無条件で心が揺さぶられる、ヒーローってこういうことなんだというのを教えてくれるところが好きですし、魅力だと思います。
山下さん:全体を通して、パワーをもらえます。客観的に読者として視聴者として見ていても、高校生たちが夢に向かって頑張る、壁にぶつかったとしても支え合いながら頑張る姿からは、子どものころに細かいことを考えずに夢に向かって、とにかくこれをやろうという気持ちだったり、純粋な部分のところを思い出せてくれる。それと同時に、自分も頑張らなきゃいけないとか、社会に負けないように頑張らないといけないと考えさせられます。
――たしかに、見終わった後には戦わなくちゃって思います。それに生きていると見える嫌な部分などもきちんと描かれているので、きれいごとで終わらず、伝わってくるのではないでしょうか。
山下さん:誰しも、一人だけで抱えている悩みなどがあって、それをどういうふうにしたらいいんだろうと考えたりすることが、各キャラクターについて描かれている。葛藤したり、乗り越えたりする姿を見ていると、自分も負けていられない、あきらめちゃだめだな、と。いろんな面において前向きにしてくれる力を持った作品だなと思います。
三宅さん:率直にいうと熱さとかありますが、ヒロアカの世界は誰しもがヒーローになれる力を持っているけど、プロヒーローになる人は数少ない。間違えればヴィランになってしまうという、ある種、特異な世界。個性があふれる世界だから、よりヒーローになるのが非常に難しいし、重いことだというメッセージ性を、あえてキャラクターのほとんどに個性というパワーを持たせて表現する手法というのが、すごく魅力的です。
――オールマイトのような絶大な力を持つヒーローがいて憧れるのが王道ですが、逆手に取ったような世界観は面白いですね。
岡本さん:力だけじゃだめってことですよね。
梶さん:ヒーロー性とはそういことじゃないんだっていう。
三宅さん:それをあえて個性という形で表現のファクターに持っていくのは、この物語の面白いギミックだなと思います。そう考えると、ある意味、役者や声優ってヒロアカの世界っぽいかもしれない。
――皆さんの中で特に気になる個性、この人のここがすごいというものはありますか。
岡本さん:梶くんは感受性がとても豊かなイメージがあって。例えばイベントなどで人の発言に対してうまくツッコミを入れているのですが、僕はそういうのが苦手で。どうして気付くんだろうと思ったら、アンテナ力みたいなものがあるからツッコめたんだろうなというのを、梶くんが執筆した本を読んで思いました。
梶さん:ありがとうございます(笑い)。
山下さん:ラジオでもすべてを(コメントを)拾ってくれて、本当いつもありがとうございます。
梶さん:何か起きたら怖いなと思っていて、そういうときにどうしようみたいなことを無意識に考えているのかもしれない。自分も嫌な思いをするのは嫌だし、その場にいる他の人が嫌な思いをするのも嫌。嫌な空気にいたくないので、それを回避しようとするんです。
岡本さん:そういうところはちょっと苦手な部分もあるかも。
三宅さん:岡本君はリアリストなんだろうね。
――最後に劇場版を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
山下さん:1、2、3期と放送してきましたが、変わらずの熱さと劇場版でしか描かれないオリジナリティーみたいなところがミックスされていますし、重ねてきた絆のような部分も感じてもらえるのでは。この夏だからこそ描けるような内容になっていますし、今でしか見られない彼らだと思います。夏休みなので、何度も行く機会はあるんじゃないでしょうか。
梶さん:みんなやることはあるとは思いますけど、10回ぐらいは(笑い)。
山下さん:注目ポイントが多くて1回じゃ見切れないと思います。いろんな見方ができると思うので、この夏、それぞれの楽しみ方で楽しんでほしいです。
(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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