今年4月にデビュー35周年を迎え、今月1日に通算26枚目のオリジナルアルバム「Gracia」をリリースした浜田麻里さん。パワフルなボーカルは今もなお健在で、むしろ声の音域は広がっているという。「35年間、真摯(しんし)に音楽に向き合ってきた」と語る浜田さんに、今作の制作秘話をはじめ、伸びのある歌声を保つ秘訣(ひけつ)や健康法、今後の抱負などについて聞いた。
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――アルバム「Gracia」は、いっそうパワフルでエネルギーに満ちた作品になりましたね。その歌声や体調を維持するために実践していることは?
空気の汚い場所には行かないとか、人混みではマスクをするとか。特にすっぴんのときは(笑い)。あと、毎朝スロージューサーで、ニンジンや小松菜などでジュースを作ってずっと飲んでました。今はちょっと忙しくなっちゃって缶のを買って飲んでますけど、時間があれば必ず飲んでます。体重は14歳ぐらいからずっと変わってなくて、食べるものとかを考えて、体重をずっとキープするようにしてます。
――今作に参加しているミュージシャンはどんなポイントで選ばれたのでしょうか。
今回は参加ミュージシャンが多くて、それこそ30年一緒にやっているアメリカのミュージシャンとか、ベーシックは長いお付き合いの人たちなんですけど、半分は初めての人です。曲を作っていく中で、ここ数作の楽曲を超えるスピードチューンだったり、ハードエッジなもの、プログレッシブな難しい変拍子の曲とかがうまくできたので、それを生の演奏で全うできるミュージシャンをリサーチして、自分で直接メールしてお声がけしました。その気になれば、SNSとかで誰にでもコンタクトできる時代なんだなって。
――SNSといえば、2曲目「Disruptor」をはじめ、「人の狂気が 人を狂気へ 追い込む時代……」など、まさにSNS時代や現代に対する思いが歌詞のはしばしに表れている印象を受けました。
「Digital disruptor」=「破壊的なイノベーション」という、既存のビジネスモデルを脅かしていくものに対する脅威というか。SNSとかの利便性自体は格段に進歩していて、だからこそ自分の今の仕事が成り立っていたり、今作についてもそうなんですけど、やっぱり私が世界に誇りたいと思う日本人の高潔性、高潔な民度というのがちょっと変わってきたと感じることが多いというか。特にいろんな世界の人と接していると、本当に日本人の美しさというのを自覚することもあるので、それは守っていくべきことだと思いますし。もともと自分からそういう発信をしていくことに、あまり前向きではなくて、Facebookのアカウントすら持ってないんです。最近、スタッフの勧めもあって、やっと1年ぐらい前からツイッターを始めたぐらいで……。
――ご自身のツイッターでは、以前「私を追い立てるもの、それはいつも自分への復讐(ふくしゅう)なのかもしれない……」というツイートをされていて、少々驚いたのですが……。
歌詞を書くので、そういう一節を考えるのが単に好きなんですね。そこに大きな意味合いを込めたということはないんです。やっぱり「この年齢になるまで、女一人でこの音楽業界でずっと仕事に生きてきた自分」に対する誇りみたいなものがベースで、今回のアルバムもそういう意味でタイトルを「Gracia」(「Grace」のスペイン語系の言葉で、「気品」「優美」などの意)にしたんです。生きることへの真摯な姿勢や気持ちがアルバムから垣間見られる、それがイコール、気品ある人格や生き方なんじゃないかなと思って。まあ、そこにはいろんな悲しみもあって、この道を選んだ意志ある自分もいれば、それを悲しい目で見ている自分もいたり。そういうニュアンスや匂いをこうした一文で表現しているというか。
――なるほど。そんな浜田さんの今後のビジョンは?
意識しているのは「自分の後ろに道ができるように」というか。誰かと同じような自分になるために努力するというよりも、「新しい道を自分で作っていくんだ」という姿勢でいつも挑んでますので、それを全うしていきたいなと思ってます。
<プロフィル>
はまだ・まり 1962年7月18日生まれ、東京都出身。15歳のころからスタジオシンガーとして活動し、高校生の時にディープ・パープルやレインボーなどのハードロックのコピーバンドを結成。大学時代に女性ロックバンド「Misty Cats」として「East West’81」のコンテストに出場したことをきっかけにスカウトされ、83年4月にアルバム「Lunatic Doll」でデビュー。89年に発売したシングル「Return to Myself~しない、しない、ナツ。」がカネボウのCMソングに採用されヒット。2018年10月からはデビュー35周年記念&アルバム「Gracia」リリースツアー「The 35th Anniversary Tour“Gracia”」を開催予定。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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