こうの史代さんのマンガが原作の連続ドラマ「この世界の片隅に」(TBS系、日曜午後9時)が16日、最終話を迎える。コミックスの累計発行部数は130万部を突破し、2016年公開の劇場版アニメはロングヒットを記録と、多くのファンを持つ名作を実写化し、人気ドラマ枠「日曜劇場」で放送するということで、注目度も高かった今作。賛否両論ある中で、女優として評価を高めたのが、ヒロイン・すず役を務めた松本穂香さんだ。劇中で松本さんは、見る者の心が寄り添ってしまうほど、“すずさん”というものを体現。視聴者からは「すずさんが松本さんで本当に良かった」などの声が上がっている。なぜこれほどまでにハマり役になったのか……。
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「この世界の片隅に」は、マンガ誌「漫画アクション」(双葉社)で連載され、09年には「文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門優秀賞を受賞。戦時中、広島・呉に嫁いだ18歳のすずの生活が、戦争の激化によって崩れていく様子が描かれた。
TBSは連ドラ版のすず役を選ぶにあたり、約3000人が参加したヒロインオーディションを行った。佐野亜裕美プロデューサー(P)は以前、当時のことを振り返り「『この人がやるすずさんを見ていたい』と視聴者に思ってもらえるかが、お芝居のうまさよりも重要で、松本さんはその点で圧倒的だった」と話していたが、そのもくろみは見事に成功したと言えよう。
そんな松本さんの魅力を言い表すと、なぜだか目がいってしまう、引きつけられてしまう「放っておけない危うさ」と、相反する「芯の強さ」だ。松本さんの演技を見ていて、思わず手を差し伸べたくなるような場面、ある力を宿した視線にドキッとしてしまう瞬間が何度もあったが、それは松本さんが、戦時下でも日々を大切に生きようとした“すずさん”にしか見えなかったからにほかならない。
ドラマの演出を手掛けた土井裕泰さんは、松本さんの初フォトブック「Negative Pop」(集英社)で、「のほほんとしているようで、実は決して譲らない人間の芯みたいなものが確かにあるところ」が「すずさんとよく似ています」と証言。
一方、佐野Pは松本さんの印象を、「見ていると何かドキドキする。どこに落ち着くか分からない、ハラハラするような感じがある」と明かしていて、さらに「決して松本さんは“ザ・美形”というタイプではないのかもしれませんが、そこのアンバランスさを含めて、とても魅力的で、見た目ではなくて本質みたいなところで、自分の中のすずさん像と重なったのが大きかった」とも語っていた。
佐野Pはドラマの放送が始まる前に、「この世界の片隅に」のことを「居場所を巡る物語」と位置づけていた。今夜放送の最終話では、「ヒロイン・すず」という役に巡り合い女優として力が発揮できる最適な場所を得た松本さんが、“すずさん”として最後に、どんな居場所を見つけるのかにも、注目だ。
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