GODZILLA:宮野真守の「人間力」 櫻井孝宏の「心地よい音色」 同志で作った現場を語る

劇場版アニメ「GODZILLA」3部作で声優を務めた櫻井孝宏さん(左)と宮野真守さん
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劇場版アニメ「GODZILLA」3部作で声優を務めた櫻井孝宏さん(左)と宮野真守さん

 怪獣映画「ゴジラ」の劇場版アニメの最終章「GODZILLA 星を喰(く)う者」(静野孔文監督・瀬下寛之監督)が9日、公開される。最終章のビジュアルには、宮野真守さんが声優を務める主人公のハルオ・サカキを、櫻井孝宏さんが演じる異星人メトフィエスが抱きかかえる姿が描かれ、2人の関係性が物語のキーポイントとなることを予感させる。宮野さんが櫻井さんの声を「心地よい音色」と表現すれば、櫻井さんは宮野さんの「人間力がすごい」と絶賛する。多くの作品で共演してきた“同志”ともいえる2人に、アフレコの様子やお互いの演技について聞いた。

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 ◇相手が櫻井さんという安心感がすごくあった

 アニメは、2万年もの間、地球に君臨し続けてきたゴジラと人類の因縁の物語が描かれている。「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」などの静野さんとアニメ「亜人」などの瀬下さんが監督を務めている。「魔法少女まどか☆マギカ」「Fate/Zero」などの虚淵玄(うろぶち・げん)さんがストーリー原案と脚本を担当し、「シドニアの騎士」「亜人」などのポリゴン・ピクチュアズが製作した。

 声を先に収録するプレスコという手法が使われた。プレスコの経験がない声優もいる中でリーダーシップを取ったのが、ポリゴン・ピクチュアズ制作の「亜人」や「BLAME!」でプレスコを経験してきた宮野さんと櫻井さんだった。

 宮野さんは、映像がない状態で進めるプレスコの現場では「プレスコならではの会話がある。『この状況はこういう感じですよね』『ここはどういう絵だろう』とか、そういう思いを共有し合いながら進めていくんです」と説明。ハルオとメトフィエスの2人のシーンが多い最終章では「同じビジョンを見られるように距離感を合わせていく感覚がお互いにあるからこそ、逆に『多くを語らずとも……』というところも、もちろんたくさんあった。その相手が櫻井さんだという安心感がすごくあった。僕らの関係性が、ハルオとメトフィエスの関係性を作ったというのは確かだと思います」と振り返る。

 櫻井さんは、「収録時は、他愛もない会話でコミュニケーションを取ることもあれば、緻密に共有しないといけない部分も出てくる」といい、プレスコの場合は特に「一人のズレが大きかったりして、それがあけすけに分かってしまうこともある」と話す。そのため、イメージがつかみにくいシーンがあれば、宮野さんと櫻井さんが監督とやりとりをして、イメージを固めていったという。

 ◇櫻井さんの声は特殊能力と思うほどの説得力がある

 櫻井さんが演じたメトフィエスは、独自の宗教でゴジラに蹂躙(じゅうりん)された地球を救おうとする異星人エクシフの民であり神官。櫻井さんはメトフィエスを「宗教家然としていて、美しい言葉やマインドで人々を導いていこうとする」と表現し、宮野さんは「この作品で改めて、櫻井さんの声が持つ説得力」を実感したという。

 宮野さんは「説得力って、出そうと思って出せるものじゃない。自分がメトフィエスの役を任されたら、どうアプローチをするかとすごく考えてしまう。ミステリアスであらなければいけないし、物語のギミック的にネタばらしもできない。それをどう表現するかは、役者としてすごく難しいところなんです。あの語りをできる人は、声優界には櫻井さんしかいないのではないか。特殊能力と思うほどの説得力がある」と絶賛する。

 続けて、宮野さんは櫻井さんの声を“音色”と表現し、「櫻井さんが奏でる音色がすごく僕は心地よくて、メトフィエスの声はずっと聞いていられる。それでいて優しさがある。瀬下監督も言っていましたが、『メトフィエスは怒って語気が強くなっても優しさがある』と。その奏で方は特殊能力だと思います」と語った。

 ◇この作品は宮野真守の背中を見ながら作り上げていった

 一方、櫻井さんは宮野さんについて「共演も多く、すごく昔から知っているので共有している部分もあるんだろうなと」とした上で、「やっぱり宮野君は難しい役を任されるんです」と話す。今回のハルオに関しては「生きることに絶望してもおかしくないような状況をずっとハルオは生き抜いていく。それは迷いながら、戸惑いながら、転びながらと紆余(うよ)曲折あるんですけど。そんな中で、作品のベースとなるテンポ感やキャラクターの造形の仕方、この作品におけるゴジラの存在とはどういうものなのかをプレスコで作っていったのは宮野君なんです。絵がない中で、指針になったのは彼だった」と振り返る。

 宮野さん自身はハルオを演じる上で「さまざまな状況の中でハルオが何を感じて、何を選択していくのかをリアルに感じていきたいと思いながら演じていました。大きな言い方をすれば、自分がこの作品を一番知っている人でありたいと思いながら作品に臨んだ結果、ハルオをどう生きるかということにつながった」と語る。同様の思いを櫻井さんも共有していたのだろう。

 自身も主人公の声優を務めることが多い櫻井さんは「作品の背負い方だったり、どうあるべき、何をやるべきと、真ん中に立っている人間だからこそ考えなければいけないこともあるし、役割も増える。取材や舞台あいさつも含め、他との接点も持たなければいけない」と説明。「この作品は宮野真守、ハルオの背中を見ながら全3章を作り上げていったので、ずっと先頭に立ってくれた。それは誰でもできることではない。トータルで見た人間力はすごい」とたたえる。

 最後に最終章の見どころを聞くと、宮野さんは「最後のハルオの叫びを聞いてほしい。あそこにすべてが詰まっている」といい、櫻井さんは「繰り返しハルオのことを呼ぶシーンがあるんです。名前に込める思い、愛情というか。その“にじみ”を感じてもらえたら」と語った。その叫びとにじみが一体どんなものなのか、ぜひスクリーンで確認してほしい。

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