ジェノスタジオ:「ゴールデンカムイ」で話題のアニメ制作会社 アイヌ文化を丁寧に 制作の裏側

アニメ「ゴールデンカムイ」を手がけたアニメ制作会社「ジェノスタジオ」のメンバー
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アニメ「ゴールデンカムイ」を手がけたアニメ制作会社「ジェノスタジオ」のメンバー

 野田サトルさんのマンガが原作のテレビアニメ「ゴールデンカムイ」を手がけたアニメ制作会社「ジェノスタジオ」。2015年に設立され、劇場版アニメ「虐殺器官」(村瀬修功監督)を手がけたことでも知られる比較的新しいアニメ制作会社だ。アイヌ文化の表現など一筋縄にはいかなかったという「ゴールデンカムイ」の制作の裏側をスタッフに聞いた。

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 ◇スタジオ倒産も… ジェノスタジオ設立の経緯

 ジェノスタジオ設立の経緯はやや複雑だ。「虐殺器官」はアニメ制作会社「マングローブ」が製作し、15年に公開予定だったが、マングローブの破産に伴う制作体制見直しのため、公開を延期。フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」の編集長も務めた山本幸治プロデューサーが新スタジオ・ジェノスタジオを設立し、製作を引き継ぎ、17年に公開された。その後、ジェノスタジオは18年1~3月に放送された「刻刻」を制作。三宅乱丈さんのマンガが原作のテレビアニメ「pet」を手がけることも話題になっている。

 「ゴールデンカムイ」で制作進行などを担当した佐藤公章さんと鳥井孝治さんは、マングローブからの移籍組。ほかのアニメ制作会社から転職してきた佐藤悠平さん、松浦一郎さん、「ノイタミナ」でアシスタントプロデューサーを務めていた瀬川昭人さん、他業種から転職してきた小野匠さん、新卒として18年に入社した小倉黎士さんら多彩なスタッフが在籍している。

 マングローブ移籍組は、倒産によってクリエーター、スタッフに迷惑をかけたことを「謝罪してもし尽くせない」と考えているという。今もその思いを背負い、アニメを作り続けている。

 ◇資料集め奔走 異例の美術ボード

 「ゴールデンカムイ」は、かつて日露戦争で活躍した不死身の杉元が、北海道で網走監獄に収監中の男が隠したアイヌの埋蔵金の手掛かりをつかみ、アイヌの少女らと共に冒険を繰り広げる姿を描いている。アイヌの文化や歴史、食事の描写なども評価され、「マンガ大賞2016」で大賞を受賞。テレビアニメ第1期が18年4~6月、第2期が同年10~12月に放送された。

 アニメでは、原作と同様にアイヌ文化を丁寧に描こうとした。専門家に、言葉や衣装などを監修してもらい、細部までこだわり抜いた。設定制作を担当した小野さんは「例えば、野田先生は緻密にアイヌの衣装を描いていますが、アニメではそこまで細かく表現するのは難しい。アニメはいろいろなスタッフが描きますし、ディテールを細かくしすぎると動かすのが難しくなります。アニメで表現できるレベルを満たしながら、なるべく再現しようとしました」と苦労も多かったようだ。

 「ゴールデンカムイ」はロードムービーでもある。北海道の森や炭鉱、街、監獄などさまざまな風景が描かれている。アニメは背景を描く際、指針となる美術ボードを参考にする。深夜アニメでは美術ボードは多くても20点ほどしか作らないというが、「ゴールデンカムイ」は40点以上描いた。佐藤公章さんは「森にしても深い森、浅い森があります。森もパターンを用意しました。作りすぎましたね(笑い)」と話すが、細部までこだわったからこそ、臨場感のある映像に仕上がった。

 原作は軍服や銃などの表現にもこだわった。アニメでもリアリティーを追求するため、小野さんは資料集めに奔走した。

 「杉元が使っている三十年式歩兵銃はモデルガンがなかなかない。野田先生から資料をお借りしました。三八式歩兵銃という銃も出てくるのですが、こちらはモデルガンを購入しました。モデルガンを見て、分かったのですが、思った以上に長いし、重い。描く際のパース感も難しい。それに、三十年式、三八式は一見、似ているんですよ。ただ、ボルトの形状などが異なる。違うものとして設定に落とし込みました」。

 ◇ヒンナは優雅に アニメならではの顔芸

 キャラクターが独特の表情を浮かべる顔芸も話題になった。アニメでこだわった原作の再現だ。原作の表情に合わせて、動きを付けて、アニメならではの表現を目指した。中には、劇画調の変顔などアニメで表現するのがどうしても難しいシーンもあったという。キャラクターが食事をしながら「ヒンナ」と言いながら、食事に感謝するシーンも「ゴールデンカムイ」ならではだ。動きを優雅にすることを意識したという。

 舞台は日露戦争終結後で、町中でも夜は暗かった。時代を考慮して、画面を暗くしてみたものの、「暗すぎる!」となるなど試行錯誤もあった。制作を終え、スタッフは「大変でした……」と漏らす。しかし、小野さんは「先輩に言われたことなのですが、制作進行は(アニメーターなど)皆さんに託す仕事ですし、いかにクオリティーを落とさないか……なんですね」とも話し、クオリティーをキープするために力を尽くした。

 ジェノスタジオは現在、「pet」を制作中で、同作もまた「アニメ化するのは難易度が高い」という。「虐殺器官」をはじめ、ジェノスタジオはハードな作品を手がけているようにも見え、スタッフは「それが強みになっていけば」という思いがある。ジェノスタジオの挑戦は続く。

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