山崎育三郎:“ジャンル”にとらわれない表現への思い 「白い巨塔」岡田准一との共演秘話も

スペシャルドラマ「白い巨塔」で国平幸一郎役を演じる山崎育三郎さん
1 / 2
スペシャルドラマ「白い巨塔」で国平幸一郎役を演じる山崎育三郎さん

 岡田准一さん主演で22日にスタートした「5夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子『白い巨塔』」(テレビ朝日系)に出演している山崎育三郎さん。ミュージカルに軸足を置きつつ、話題のテレビドラマにも多数出演し、劇場版アニメで声優も務めるなど精力的に活動の幅を広げている。今作では、大学病院という組織の中の権力争いでのし上がっていく主人公・財前五郎の代理人の弁護士・国平幸一郎役で出演。「ちょっと憎まれ役でもある」と説明する山崎さんに役作りの苦労や岡田さんとの共演エピソードを聞くとともに、さまざまなジャンルで活動することへの思いなども聞いた。

あなたにオススメ

 ◇過去に同役演じた及川光博から「同じ匂いがする」

 原作はこれまでに何度もドラマ化された山崎豊子さんの不朽の名作。2003~04年には唐沢寿明さん主演で連続ドラマ化されており、そのときは病院側の弁護士を及川光博さんが演じた。山崎さんは「及川さんと音楽番組でご一緒させていただいたときに『同じ匂いがする』と言われたことがあって(笑い)。僕もそう感じるところがあったんです。それから数年たって今回お話をいただいて、以前に及川さんが演じられていた役で、縁を感じました」と楽しそうに振り返り、「今回、自分なりに国平という役にどうアプローチするか、というところからスタートしたんですが、及川さんのイメージが強かったですね」と明かす。

 演じる国平は「どちらかというと悪役」。柔らかい笑顔が印象的な山崎さんだが、今作では笑顔は「ほとんどないです」といい、「にやつくというか、含み笑いのようなものはありますけど……。憎たらしいですね、終始」と苦笑する。ただ、「ちょっと憎まれ役でもあるんですが、彼の中にある信念や正義は、しっかり見つけて表現していきたいです」と意気込みを語る。

 役作りでは、裁判シーンで用いられる医療用語を徹底的に調べた。「医療用語が難しくて。自分で言っている意味が分かっていないとせりふに気持ちが乗ってこないので、かなり調べました。ただし、理解していくのに時間はかかりました」と山崎さん。撮影で苦戦したのもやはり裁判のシーンだといい、「言葉の難しさに加えて、財前を弁護していくシーンは、日本を代表する俳優陣がそろっている中で行われるので現場の緊張感はすさまじいものがありました。それに、裁判シーンはカット数も数えきれないほど撮るんです。早朝から夜中までかけて一つの裁判シーンを撮るので、集中力を高めたままスタンバイしていなきゃいけない。使い慣れていないせりふを入れていくのも大変でした」と苦労を明かす。

 ◇“岡田財前”は「圧倒的な存在感」 格闘技を教わる約束も…

 財前の弁護人という立場上、岡田さんとの共演シーンが多かったという山崎さん。岡田さんとの芝居での共演は初めてだ。改めて印象を聞いてみると、「圧倒的な存在感と、財前の持つカリスマ性をすごく感じました。僕が関わってからは追い詰められていく財前を見るわけですが、追い詰められていく様子が、細かいお芝居でバシバシ伝わってきますし、『目の力』というか、目で引き込まれる瞬間が何度もありました」と“岡田財前”を絶賛する。

 岡田さんとは撮影の合間に言葉を交わすことも多かったという。「岡田さんが格闘技をすごくやられていると言っていて」と楽しそうに話し、「実は割とご近所さんということも分かって、岡田さんに格闘技を教えてもらう約束をしました(笑い)」と明かす。「殺陣やアクションはお芝居や舞台でも使いますし、岡田さんはそういった勉強をずっとされているので、今度ぜひ教えていただきたいと思います」と笑顔で語る。

 ◇日本は“ジャンル分け”したがる文化 30代は「ジャンルを決めずに」

 ミュージカルをホームグラウンドにしつつ、ドラマ「下町ロケット」(TBS系)や「昭和元禄落語心中」(NHK総合)など話題のドラマにも出演。最近では劇場版アニメ「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」でゲスト声優を務めるなど、幅広い活躍を見せている。かつては、映像作品への出演は「ミュージカル界を盛り上げたい、という思いがあった」というが、今は少し意識に変化があるという。

 「今はジャンルに関係なく、挑む姿勢は同じなんだと実感しています。ミュージカル、歌手、ドラマ、映画、声優といろいろやっていますが、例えば今回のようなテレビドラマなら視聴者がいて、舞台なら観客がいて、ラジオならリスナーがいて……と、表現する上では必ずその対象がいる。その方々に、自分がいることでどう喜んでもらえるか、目指すところはどの場所でも同じだと思っています」

 「特に日本は、ジャンル分けをしたがる文化」と山崎さんは表現する。「エンターテインメントは特にそうですよね。『何の(肩書の)人ですか?』と。でも海外だと、ジャンルがどうというより『その人が何ができるか』なんです。僕が大好きな俳優のヒュー・ジャックマンも、ミュージカルの舞台に立ち、司会もやり、ハリウッドスターでもあり、どの場面でもしっかり輝く。彼に『何の人ですか?』と聞く人は誰もいない。そういう意味で、日本もエンターテインメントのジャンルが壊れていったらいいなと思うんです」と思いを吐露する。

 そんな山崎さんに、今後の活動について聞いた。山崎さんは「今までは“ミュージカルの人”というイメージが一番湧きやすかったので、キャッチフレーズのように言ってきたんですが……もちろん、ミュージカルからスタートしているのでホームグラウンドだと思っていますが、30代は特にジャンルを決めず、いただいたお仕事の中で、どこでもきっちり表現できるエンターテイナーでありたい、という思いがあります」と胸の内を明かし、「いろんなことにチャレンジして、自分の幅も広げていきたいですね」と前向きに語った。

 「白い巨塔」はテレビ朝日の開局60周年を記念した大型ドラマスペシャル。今作は物語の設定を2019年に置き換え、腹腔(ふくくう)鏡手術のスペシャリストである浪速大医学部第1外科・准教授の財前五郎(岡田さん)が、同大学医学部第1外科・東貞蔵教授(寺尾聰さん)の退官に伴う教授選挙を巡り、後継者となるため工作。欲望が渦巻く教授選は、思いもよらぬ展開を迎える……というストーリー。22~26日に5夜連続で各日午後9時から放送。

写真を見る全 2 枚

テレビ 最新記事