ウルトラマンタイガ:怪獣の出自、宇宙人との接触描く 市野龍一監督に聞く

「ウルトラマンタイガ」を手がける市野龍一監督
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「ウルトラマンタイガ」を手がける市野龍一監督

  特撮ドラマ「ウルトラマン」シリーズの「ウルトラマンタイガ」。ウルトラマンタロウの息子・ウルトラマンタイガが活躍することも話題になっている。市野龍一監督に制作の裏側を聞いた。また、12月14日に発売されるフィギュア「S.H.Figuarts ウルトラマンタイガ」についても語ってもらった。

ウナギノボリ

 ◇生命を持っている者同士、宇宙人とも分かり合えるし力も合わせられる

 --市野監督は『ウルトラマンタイガ』がウルトラマンシリーズ初のメイン監督になりますが、目指した方向性は?

 僕がチームに合流したのは2018年11月で、その時点で既にシナリオライター陣とプロデューサー陣、バンダイさんの間で話をもんでいたようです。その中で、次はどういったウルトラマンでどんなアイテムを使うのかも決まっていたんですが、僕が合流したときに「何かやりたいことはありますか?」と質問されたんですね。そこで僕が挙げさせてもらったのが、怪獣の出自を描きたいということ。そして宇宙人との接触を描きたいということ。その二つでした。

 --なぜ、その2点を描こうと考えたのでしょうか?

 僕が「ウルトラマン」「ウルトラセブン」を見ていた子供の頃は、ヒーローよりもどちらかというと怪獣が好きだったんです。持っているソフビも、ヒーローより怪獣が多かったですね。そういう経験から、怪獣の方が好きな子供がいることも分かっていた。だから怪獣を、誰かに召喚されて戦って倒されて終わりというだけの兵器にはしたくなかったんです。加えて、「生命を持っている者同士、宇宙人とも分かり合えるし力も合わせられる」というテーマを描くことができれば、ドラマとしても面白いのではないかと考えました。ちょっと物語の構成要素が多いので、ともすれば「難しい」「重たい」と言われかねない内容になっているかもしれませんが、僕らも子供のときに「セブン」を見て感じたことは、その当時はきちんと理解できていなかったけれど、大人になった今でもはっきり覚えていますからね。だから、今「タイガ」を見てくれている子供たちが、大人になってから見返して「こうだったのか!」と気付いてくれればうれしいなと思って作っています。

 --タイガはタロウの息子ということで、放送開始前は「ウルトラマンタロウ」のような陽性の作品になるのかなと想像していました。

 「タロウ」独特の軽快さや楽しさは僕自身も大好きなんですが、たまたま去年の「ウルトラマンR/B」がコメディータッチの作風だったので、今年は毛色を変えましょうという方針が最初からあったんです。僕はどちらかというとコメディー寄りの人間なので「冒険だな」と感じていましたが、オーダーに応えるべくシリアスを目指して頑張りました。頑張りすぎて「毎回人が死ぬウルトラマン」なんて言われるようになってしまいましたが(苦笑)。

 --タイガ、タイタス、フーマと3体のウルトラマンが本作には登場しますが、どのように差別化しようと考えましたか?

 タイガは、リーダーとして正統派のウルトラマンを目指しました。ヒロユキとのシンクロも最も強い、熱い人というイメージですね。タイタスは、「力の賢者」として博識で丁寧にしゃべるキャラクターにしてタイガとは全く違うようにしようと考えていました。ここまで面白くなるとは僕も想像していませんでしたね。フーマは、ちょっとスカしたお兄ちゃんという感じです。育ちのいいタイガとは違って、ちょっとヒネくれているように見えればいいなと思って撮っていました。攻撃のタイプとしてはタイガがキック、タイタスはパンチ、フーマはスピードを重視しています。他の監督さんもそういったイメージを大事にして描いてくれているので、シリーズを通して面白く描けたのではないでしょうか。

 --本作で特に思い入れのあるキャラクターを教えてください。

 今回はメイン監督をやらせていただいていることもあり、主軸になるタイガの物語を撮ることが多いんです。それもあって、やっぱりタイガが一番好きですね。デザインも僕が入った時点ではまだ固まっていなかったので、スタッフみんなで意見を出したこともよく覚えています。タロウから引き継いだモチーフを入れながら、カッコいいだけでなく若さも出せるように後藤(正行)さんにデザインしていただきました。

 ◇合体魔王獣ゼッパンドンのフィギュア化希望

 --タイガがS.H.Figuartsとしてフィギュア化されました。ご覧になった感想は?

 うまく撮ればフュギュアだと気付かれないくらい素晴らしいクオリティーだと思います。撮影の時にあったら使っていたかもしれないくらい(笑い)。胴体にも可動が入っていて胸や腰も動かせるし、ジオラマで写真を撮ったりすると楽しいんじゃないかなと思います。デザイン会議のときにも意見を言っていたので、タイガには自分の子供みたいな愛着がありますから、こうやって商品になるのは感慨深いですね。ぜひ手に取っていただきたいというか、「ウチの子は可愛いだろ?」って自慢したい気分です。

 --今後、S.H.Figuartsで商品化してほしい「タイガ」のキャラクターはありますか?

 僕は怪獣が好きなので、怪獣を商品化してほしいですね。「タイガ」の怪獣で挙げるなら、例えば惑星守護神ギガデロス。シルエットがとてもフィギュア向きだと思いますし、人気になってほしい気持ちを込めて作った怪獣なので、カッコいいロボット怪獣フィギュアにしてほしいです。もし出たらタイガと合わせてジオラマを作りたい。あと、個人的には「ウルトラマンオーブ」の合体魔王獣ゼッパンドンも欲しいです。ゼットン、パンドン、ゼッパンドンと並べて飾りたい(笑い)。

 --最後に、今回の商品化にあたって、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

 このタイガは、劇中のイメージ体のように、インテリアとして生活の場のいろいろなところにすっと潜めるような可能性のあるデザインだと思います。実際に皆さんの手元に届いたらイメージ体として遊んでいただければうれしいです。あなたのそばにウルトラマン。ウルトラマンと一緒に生活している。そんな気分を楽しんでいただけたら最高だと思います。

 市野龍一(いちの・りゅういち) 1962年10月29日生まれ、兵庫県出身。上智大卒業後、横浜放送映画専門学院(現:日本映画大)に入学。ドラマ「うちの子にかぎって」のスペシャル番組「金曜日の子供たちへ 水戸黄門と夢の共演!! 京都修学旅行大騒動」(1986年)の4th助監督で初現場を踏み、以降さまざまなドラマを経験。「はいすくーる落書2」(1990年)第10話で監督デビューを果たす。円谷プロダクションには「ウルトラマンガイア」(1999年)から参加。ほかの代表作に「ブースカ!ブースカ!!」(1999年)、「超星艦隊セイザーX」(2005年)、「風魔の小次郎」(2007年)、「ウルトラマンオーブ」(2016年)などがある。

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