ドラえもん:「エモい」と話題の新OP制作秘話 とにかく突き抜ける 過去の膨大な素材を再構築

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テレビアニメ「ドラえもん」のオープニングの一場面 (C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK

 土曜夕方放送に変わった人気アニメ「ドラえもん」(テレビ朝日系)。10月5日の引っ越しに合わせて一新されたオープニング(OP)映像が、SNSなどで「斬新」「エモすぎてやばい」「オシャレすぎる」などと話題だ。星野源さんの歌う「ドラえもん」に合わせて、ドラえもんやのび太が影絵で表現されるなどオシャレでスタイリッシュに進化した。OPのディレクターを務めた「10GAUGE(テンゲージ)」の依田伸隆さんに、制作のこだわりや「ドラえもん」への思いを聞いた。

 ◇星野源の「音楽の気持ちよさを感じてもらえるように」

 依田さんは、これまでアニメ「モブサイコ100」のOPや「おそ松さん」のPV、「君の名は。」の予告などを手がけ、劇場版アニメ「劇場版プリパラ&キラッとプリ☆チャン きらきらメモリアルライブ」の監督も務めた。

 アニメ「ドラえもん」に最初に関わったのは、劇場版「映画ドラえもん のび太の宝島」(今井一暁監督、2018年)の予告第2弾だった。主題歌は、現在のテレビアニメのオープニングテーマ、星野源さんの「ドラえもん」だ。今年3月公開の劇場版「映画ドラえもん のび太の月面探査記」(八鍬新之介監督)の予告も担当した。

 テレビアニメ新OPの制作サイドからのオファーは「とにかく突き抜けてください」だった。「何か越えなければいけない一線があると感じた。ただ、ドラえもんは何をやっても崩れない。『僕なりのドラえもん』『私なりのドラえもん』を許してくれる」と語る。

 「『ドラえもん』は国民的アニメというか、大御所コンテンツというか、とにかくすごいものじゃないですか。だから、緊張しました。しかも、これだけのコンテンツでは、普通はこれをやっちゃいけない、あれをやっちゃいけないという制約がありますが、今回は最初のオーダーからそれを取っ払ってくれるという。王者の余裕ですよね(笑い)。ただ、『自由にしていい』と言われた方が、クリエーターとしてのハードルはめちゃくちゃ上がる。恐らく何か越えなければいけない一線があるなという緊張がありましたね」

 OPを作る際、依田さんはテレビアニメ用の70秒の楽曲「ドラえもん」の音源を聴いた。「めちゃくちゃ音がよかった」と振り返る。

 「音の分離というか、キックとかギターとかミックスとか全てが超よくて。もちろんメロディーもそうですけど、音の空気感みたいものも本当によかった。この音楽の気持ちよさを、みんなに感じてもらうようなものにした方がいいのではと一番最初に思いました」

 ◇過去のテレビシリーズを再構築 膨大なデータからピックアップ

 新OPは、SNSなどで「斬新」と話題になっているように、確かに色使いも表現もスタイリッシュに一新されているように感じる。依田さんは「結局、ドラえもんは、『何をしても崩れない』という絶対的なものがあるので、そこは気にしないでやっても大丈夫なのかなと思いました」と話す。

 実際に素材として使われているのは、新規カットもあるものの、過去に放送されたテレビシリーズのものがほとんどだという。新OP冒頭のドラえもんやのび太たちを影絵のように表現するシーンもそうだ。

 「例えばこのキャラはテレビシリーズ400話のカット30、このBG(背景)は500話のカット45をトレースしたもの、というように本編のあっちこっちから素材を集めて、それをリミックス、再構築しています。ただ、それを同じ場面で使うと、『この部屋は夕方の色み』『こっちは昼間』というように全然色が合わないのですが、シルエットにしちゃえば一発で合う。そういうよさがあるんです」

 依田さんは、「この手法は新しいものでは決してなくて、元々は昔の映画のオープニングのグラフィックなどをデザインしたソール・バスや、最近ではカイル・クーパーがやっていることなんです。今回は特別参考にしたわけではないのですが、僕らは会社ぐるみで憧れているところがあって、それが血肉になっているので」と説明する。

 新OPを作る際は、アニメ制作を手がけるシンエイ動画から、過去1年分のテレビシリーズのムービーデータ、撮影前のデータを全てもらい、ピックアップしていったという。

 「『このキャラいいね』『この美術いいね』と集めて、いろいろなことを試しました。のび太だけ集めて、画面いっぱいにのび太がいる絵を作ったり、美術だけを集めて、そこに全く別カットののび太が走っているカットを合わせてみたり、まずいろいろな静止画を作って試してみました。本編素材を使ったコラージュを作るような作業ですね」

 気の遠くなるような作業に思えるが、依田さんは「いや、楽しいですよ」と笑顔だ。

 ◇ドラえもんの多幸感を表現 「夢がいっぱい詰まっている」

 新OPは「ドラえもん」のキャラクターはもちろん、原作者の藤子・F・不二雄さんがキャラクターとして登場し、大集合するラストカットで締めくくられる。随所に「ドラえもん」という作品への愛が感じられる。

 「愛が出ざるを得ないですよね。『ドラえもん』は、僕も小さい頃から見ていて、本当に血肉になっちゃっているところなので、なんで好きと聞かれても分からないんです。あとは、ドラえもんの多幸感みたいなもの。ラストカットもそうなんですけど、星野さんの楽曲を聴いて、ドラえもん本編を見た時に『多幸感しかないな』と。そのハッピーな感じを何とか出したくて、あれこれと手法を試しました」

 ドラえもんの体内がひみつ道具で埋め尽くされていくようなシーンもある。そこには過去1年間に登場したひみつ道具の素材がほぼ全て使われているという。

 「ひみつ道具で構成されていくというのはいいなと思って、『夢がいっぱい詰まっているぞ』みたいな。ドラえもんの肉体の中にというか、ドラえもんという概念の中に『いっぱい夢が詰まっています』みたいな意味合いではありますね」

 ◇「ドラえもん」が王者たるゆえん

 新OPは映像もそうだが、星野さんの楽曲「ドラえもん」の歌詞もファンの間で話題になっている。「いつか 時が流れて 必ず辿(たど)り着くから 君をつくるよ どどどどどどどどど ドラえもん」という歌詞の「君をつくるよ」が、過去に都市伝説的に広まった二次創作を指しているのではないかと言われているのだ。そこでは、ドラえもんはのび太が開発したという内容が描かれ、「幻の最終回」ともささやかれている。

 依田さんは、これについて「僕も思いましたよ。そこは『ドラえもん』という作品の深みですよね。認めたとかそういうことではなくて、完全に意識しないまま、知らないままやったことではないと思いますけど」と笑顔を見せる。

 「『ドラえもん』って何をやっても、また、二次創作などで『こうなんじゃないか』『ああなんじゃないか』といういろいろな解釈があったりしても、基本的に自由というか許容してくれる。それが『ドラえもん』が王者である理由という感じがします。二次創作であっても、僕みたいにオープニングを作るクリエーターでも、それぞれ愛を持って『僕なりのドラえもん』『私なりのドラえもん』をやってみるのを許してくれる。それはもちろん、テレビ朝日さんや藤子プロさん、シンエイ動画さんを含めてのことで。これだけ長く続いているコンテンツで、なかなかないと思います」

 更に「ドラえもん」は「常に現役感がある」と話す。

 「ドラえもんであるということが、本当に何をやっても崩れないんです。本編でも回によっては奇抜なことをやっていますが、ドラえもん自体は崩れないし、もちろん嫌なものでも全然ない。バランスがすごいですよね。ドラえもんが水平を保ってくれる」

 これまでさまざまな作品のOPやPV、予告編を手がけてきた依田さんが、制作をする上で大事にしているのは「音」だという。

 「作品にもよりますが、PVは必ずしもストーリーを伝えるものではなかったりするので、音楽とのマッチングの快楽を優先した方が、人の記憶に残りやすいのではないかと考えています。特に『ドラえもん』はめっちゃ残りやすいと思います。今見ている子が、10、20年後に就職してつらかったりして、『あの曲のあのシーン』と思い出す時に、『うわ、超よかった。泣ける』みたいに思ってくれると、一番うれしいですね」

 新OPが「エモい」と言われるのは、斬新なようで「ドラえもん」というコンテンツの魅力、ファンの愛があふれているからかもしれない。

 テレビアニメ「ドラえもん」はテレビ朝日系で毎週土曜午後5時放送。11月30日放送回は、「ピクニックで先をこせ」「かがみのない世界」の2本立て。

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