今年1月期のNHK連続ドラマ「トクサツガガガ」で演じた“特オタ女子”が当たり役となった女優の小芝風花さん。その後も「恋と就活のダンパ」(NHK・BSプレミアム)、「ラッパーに噛(か)まれたらラッパーになるドラマ」(テレビ朝日系)、「べしゃり暮らし」(同)、「歪(ゆが)んだ波紋」(NHK・BSプレミアム)と、2019年はドラマ出演が相次いだ。また、先日放送されたNHKスペシャル「シリーズ 体感 首都直下地震」内ドラマ「パラレル東京」での女性アナウンサー役も好評だった小芝さん。作風や役柄的にも「トクサツガガガ」のようなコメディータッチから、「パラレル東京」のようなシリアスなテイストのものまで幅広く、まさに“振り切った”印象の今年の活躍を振り返ってみた。
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2019年の小芝さんの活躍を知る上で、絶対に外せないのが「トクサツガガガ」だ。丹羽庭さんの同名マンガが原作で、隠れ特撮オタクの主人公(小芝さん)が、日々の生活でさまざまなピンチに陥ると、本人にしか見えない特撮ヒーローが現れ、その言葉に勇気づけられ、次々にピンチを切り抜けていく……という内容。小芝さんにとって連ドラ初主演作となった。
オタクたちの生態に迫る“あるあるネタ”や共感必至の名言の数々に加え、「仮面ライダー」「スーパー戦隊シリーズ」で知られる東映の協力によって実現した“本気すぎる”特撮パートや劇中ソングが話題となったが、その中で輝きを放っていたのが小芝さんだ。
彼女が演じた主人公・仲村叶(かの)は、妄想力にあふれた隠れ特撮オタクで、独り語りが多く、表情も豊かで動きもコミカルと、一歩間違えれば見ている側が“寒く”感じてしまうようなキャラクターである。しかし、小芝さんは持ち前の愛らしさを、役にきっちりとにじませることに成功。見た目は清楚(せいそ)な叶=小芝さんが特撮ヒーローに悶絶(もんぜつ)したり、ノリツッコミする姿に胸が“トゥクン”としてしまった人も多かったのではないだろうか。
「恋と就活のダンパ」を挟んで、7月に2夜連続で放送された「ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ」では、原因不明の“RAPウイルス”に侵された終末世界を舞台に、生まれも育ちも茨城の主人公みのり(小芝さん)が、恋人の山之内拓馬(佐藤寛太さん)を捜すためサバイバルに乗り出す……というトンでも設定の中でも、役を好演。小芝さんの茨城弁にも注目が集まり、視聴者から「ひたすら可愛い」との声が数多く上がるなど、もともと高かった好感度がさらに上昇。
さらに間宮祥太朗さん主演の「べしゃり暮らし」では、おかっぱ頭のヒロインに扮(ふん)し、劇中では漫才にも挑戦。第2話(8月3日放送)では、“元相方”の渡辺大知さんとのコンビで息の合った掛け合いを披露し、SNSでは「ふーちゃん(小芝さんの愛称)漫才うまい」「気迫の漫才」「見入ってしまった」とこちらも好評だった。
その一方で小芝さんは、松田龍平さん、松山ケンイチさんと共演した「歪んだ波紋」ではシリアス演技にも挑戦。誤報を出してしまった新聞記者、ネットニュース編集長、過去の事件を洗う元記者、子育てに悩む女性記者といった、さまざまな“記者”たちの人生模様を、家庭の問題なども織り交ぜて描いた社会派ドラマで、ひき逃げ事件の被害者であり、また誤報被害にも遭ってしまう女性・森本敦子を演じた。
そして先日の「パラレル東京」である。舞台は首都直下地震に襲われた東京にある架空のテレビ局で、膨大な被害情報や映像など、ドラマとは思えないリアルな描写に視聴者の関心が集まったが、ここでも小芝さんは「NNJテレビ」の新米キャスター・倉石美香として、迫真の演技を披露した。
今回、初のアナウンサー役となった小芝さんは、事前にNHKでのアナウンサーのレッスンに加え、ニュースセンターでの緊急報道の訓練を見学し、撮影に臨んだといい、制作統括の松岡大介チーフプロデューサーは「そのままアナウンサーとして通用するんじゃないか、というくらい成長している」と太鼓判。当然、視聴者からも「演技に引き込まれた」という意見に加え、「ニュース読むのうますぎ」「プロのアナウンサーみたい」「明日からアナウンス部に就職できそう」と、しっかりと身についたアナウンス技術に称賛の声が集まっていた。
2012年に女優デビューを果たし、2014年の映画「魔女の宅急便」(清水崇監督)での演技が評価され、17歳で「第57回ブルーリボン賞」の新人賞を受賞した小芝さんも今年で22歳。同年代には2020年後期の朝ドラ「おちょやん」のヒロインに決まった杉咲花さんもいるが、杉咲さん同様に多くの若手女優の中から“実力派”へと頭一つ抜け出た感もある小芝さんの、今後の活躍に大いに期待したい。