ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
人気アニメ「ガンダム」シリーズの生みの親として知られる富野由悠季総監督。78歳ながら、現在もテレビアニメ「ガンダム Gのレコンギスタ(G-レコ)」全5部作の劇場版を手がけるなど、今もなお現役として走り続けている。自身の作品も厳しく批判することがあり、毒舌家、怖い……などというイメージを持っているかもしれないが、実は「優しい」「可愛いところもある」という話を聞くこともある。一体、巨匠の素顔とは……。「G-レコ」を手がけるサンライズの小形尚弘プロデューサーに聞いた。
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富野総監督は1964年に「鉄腕アトム」で演出家デビュー。その後、「海のトリトン」「勇者ライディーン」「無敵超人ザンボット3」「無敵鋼人ダイターン3」などを手がけ、1979~80年放送の「機動戦士ガンダム」で、その後のアニメに大きな影響を与えた。
小形プロデューサーがサンライズに入社したのは1997年。翌年、制作進行として参加した同年放送の「ブレンパワード」で富野総監督と初めてがっつり仕事をすることになった。
「僕は第3話から制作進行をやっていました。第7話のスケジュールがすごく大変で、前日納品だったんです。当時、アフレコでコンテ撮(アフレコまでに画が間に合わない場合、コンテを撮影したものでアフレコをすること)は恥と言われる時代で、前日納品なんてありえなかった。V編(映像を納品状態にする作業)で怒られると思ったら、『何とかするから!』と言っていただけたんです。すごいな、この人……と。富野総監督は当時、60歳手前。バイタリティーのすごさに驚かされました」
富野総監督はとにかく働く。作品を良くするために誰よりも働く。スタッフは必死に付いていこうとする。
「働き方改革が叫ばれる今はできない働き方ですが、『ブレンパワード』の時、富野総監督が朝まで原画をチェックしていたこともありました。僕は帰って寝て、昼くらいに出社したら、もう富野総監督がいるんです。『手塚治虫さんの仕事ぶりは、こんなもんじゃなかった。全然だ』とおっしゃっていました。富野総監督はスタジオで一番仕事をしているんです。仕事量が尋常じゃない。全部チェックするし、全部に意見する。ここまで見るのか……というところまで見る。だから、監督ではなく、総監督なんです。いろいろな不条理なこともあるのですが、真摯(しんし)な姿勢でやっている。こちらも全力でやらないと!と思わせてくれるんです」
富野総監督の真摯な姿勢は今も変わっていないという。
「60歳くらいの時もすごく体力があった。70歳を過ぎた後はさすがに体力が厳しいようで、本人もストレスになっているのですが、姿勢は変わっていません。アフレコでもダビングでもずっとコンテを直している。毎週一本、コンテを描く。週一本のペースを守るようにしています」
富野総監督は毒舌ぶりから、怖い人というイメージを持っているかもしれない。小形プロデューサーは「優しいですよ」と否定する。
「現場にはすごく優しい。制作進行時代に怒られたことはないです。プロデューサーになって怒られるようになりましたが(笑い)。レイアウトに『バカ』『アホ』と書いて返すこともありますが、優しいですし、常に意見を求めてきます。『∀ガンダム』の時、若手にモビルスーツの名前の意見を聞いて、採用するなど、現場の意見を取り入れようとする。みんなと一緒に作ろうとします。人と話をしながら考えて、フィードバックしていく。相手がどういう考えを持っているのか? を知りたがり、わざと話を遠回しにしながら引き出そうとすることもあります。いろいろな意見を自分のものにしていく。富野総監督はある意味天才ですが、努力したり、いろいろな人の才能を借りたりして、富野総監督という器から作品を作り出している」
富野総監督は貪欲にさまざまな意見、知識を取り入れようとする。
「社会的なことに対する興味を強く持っています。いろいろな文献を読みます。それはずっと変わらない。昔、制作進行の机にあったファッション誌を読んでいたことがあったんです。すごくアンテナを張っている。そういう貪欲さが作品になっている。『G-レコ』を作る時、『ONE PIECE」の尾田栄一郎さんをすごく褒めていた。富野総監督は週刊連載型で、毎週オリジナルを作るには、自分の持っているものだけでは枯渇するので、いろいろな情報を取り入れて、毎週毎週のストーリー、演出に使う。尾田さんのような週刊連載のマンガ家と同じような作り方をしているのかもしれません。瞬発力でコンテにしていく。だから時々、つじつまが合わなくなるのですが(笑い)。ライブ感があるからできるものもあります。マンガはコミックスにする時、修正するマンガ家もいます。劇場版の『G-レコ』ではそれをやっているんです」
「富野総監督は可愛いところもある」と、あるクリエーターの話を聞いたことがある。小形プロデューサーも「可愛いですよ」とうなずく。
「“富野由悠季総監督”を演じている時とプライベートは違う。『外に出る時はなめられないようにしろ!』とよく言われます。『パーティーに行く時はちゃんとした服を着て、人前に立つことを意識しなさい』と言われたこともあります。人から見られることを意識している。だから、わざと怒ることもあるんです。そのまま止まらなくなって本当に怒り出すこともありますが(笑い)。怒った後にしょんぼりしたり。先日も、怒鳴られたのですが、次の日に会えないでいると、電話がかかってきて、普通にお話ししてくれたり、フォロー、気遣いもしてくれます。気を遣わせて悪いな……と思うのですが」
プロデューサーという立場になってからは怒られることもある。怒りには理由がある。
「『G-レコ』が始まる前や最中、作品が世に出るプレッシャーを感じている。覚悟を決めないといけない。そこにうまく寄り添えないと怒られます。サンライズの心配もしてくれて、『ちゃんとしないといけない!』と言っていただけることもあります。お話ができない時は、『ここがダメだった』とお手紙をいただくこともあります。お客様のことが一番ですが、クリエーターにちゃんと向き合わないといけない。それがブレてはいけないと意見を言っていただいています」
「ガンダム」シリーズにはさまざまな作品がある。その中でも「G-レコ」をはじめとした富野総監督の作品には、ほかとは違う魅力がある。ゼネラルマネージャーとしてシリーズのかじを取る小形プロデューサーは「富野総監督が作るものは時代の先を行っています」と話す。
「前の作品を否定してでも新しいものを作ろうとします。『G-レコ』は『ガンダム』の枠を超えた作品です。富野総監督が『ガンダム』の世界を広げてくれる。世界を広げることは神様じゃないとできない。創造主だからできること。10年に一回、『ガンダム』という枠を広げていただいています」
富野総監督が作り出す作品は多くの人に影響を与え続けている。
「富野総監督は自身が評価されていないと言われますが、富野総監督がまいた種は、どんどん社会に出ています。ただ売れればいいのではなく、そういうことを忘れずにやっていかないと、おかしな方向になります。この先もしっかり考えていかないと、富野総監督にたたられますしね(笑い)。富野総監督に常に見られている意識はあります」
富野総監督は「G-レコ」について何度も「子供に見てほしい」と発言してきた。「G-レコ」には、未来へのメッセージを込めたのかもしれない。全5部作の劇場版「G-レコ」は第2部「ベルリ 撃進」が上映中。まだまだ作品は続く。更に、次回作に向けて企画を考えているという。
「『ガンダム』はもういい……と言いながら、『ガンダム』みたいな企画が出てくることもあります。昨日と言っていることが違うじゃないですか……と。そこも魅力なのですが。企画は常に出し続けています。年齢的に、自分の体力をどこに注ぐかを考えているようですが」
78歳ながら、バイタリティーは衰え知らずのようだ。「G-レコ」、さらなる新作にも期待したい。
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