島でのスローライフを楽しむニンテンドースイッチ向けゲーム「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」(任天堂)。オンラインによって顔を合わせなくても他のプレーヤーと遊べるシステムが、コロナ禍で起きた「ステイホーム」の状況とマッチしたこともあり、発売から6週間で全世界1341万本の大ヒットを記録した。一方で、“あつ森後”のユーザーの動向には、これまでと異なる動きが見えるという。それはかつての“DSブーム”をほうふつさせるものだった。
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「あつ森」は、プレーヤーが、どうぶつたちが暮らす村での釣りや虫取り、どうぶつとのコミュニケーションを気ままに楽しむ人気シリーズ「どうぶつの森」のニンテンドースイッチ向け新作として、3月20日に発売された。従来の「村」から、手つかずの「無人島」に舞台を移し、必要なものを自作していくことで、気ままに島を発展させていく。人の島を訪れることもできるため、“巣ごもり”で難しくなっていたコミュニケーションの一環として活用するユーザーが続出。また、服や家具などの柄を自分で作成することも可能で、米メトロポリタン美術館などが所蔵作品の一部をデザインとしてゲーム中で使えるようにするなど、さまざまな広がりを見せている。
自分の島をSNSなどで披露する動きも盛んで、有名人が自分の島を公開したり、人気ユーチューバーがYouTubeで遊んでいる様子を公開したりと、大きく盛り上がりを見せたことで、情報番組などで特集が組まれることも多く,社会現象として人気はさらに加速。スイッチ本体は現在も深刻な品不足状態に陥っている。
しかし、これまでと異なる動きも出てきている。複数の関係者は「他のタイトルの売り上げに影響が出た」と明かす。2018年12月の発売以来、スイッチの売り上げを長期にわたって支えていた人気ゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」(任天堂)や、5月に発売された名作RPGのリメーク「ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション」(同)といった従来のゲーマー向けタイトルは、想定ほどの売り上げに至らなかったという。
一方で、「東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング(脳トレ)」(同)が、発売から半年近く経過していたにもかかわらず、大きく売り上げを伸ばしたほか、気軽に楽しめるパーティーゲームがそろった「スーパー マリオパーティ」(同)も、2018年10月の発売から1年半過ぎているにもかかわらず、昨年同時期をはるかに上回る売れ行きになったという。将棋、チェス、五目並べ、マージャンなど、古今東西のゲームを集め、6月5日に発売された「世界のアソビ大全51」(同)はテレビCMが放送されたこともあって大きく予約を伸ばし、発売日には「アソビ大全」がSNSのトレンド上位に入るなど、大きく話題を集めた。
こうした動きは、かつての“DSブーム”をほうふつさせる。「脳を鍛える大人のDSトレーニング」「nintendogs」(いずれも任天堂)など、2画面とタッチパネルという斬新な構造を生かした「Touch! Generations」シリーズで、それまでゲームに触れてこなかったユーザーの取り込みや、「おいでよ どうぶつの森」(同)でライトゲーマーの回帰に成功した「ニンテンドーDS」(同)の時に酷似しているのだ。
2006年3月の「ニンテンドーDS Lite」(同)発売日は、各地の家電量販店にかつて例を見ないほどの長蛇の列ができた。当時、記者も前日から現地取材したが、列に並んでいた人の年齢層もそれまでのゲーム機の発売と異なり、比較的年齢の高い人の姿もかなり見受けられた記憶がある。余談だが、その日の夕方ごろからネットオークションに高値で出品されていたのも、スイッチ本体が多数出品されている現在のフリマアプリの状況と似ている。
DSブームは、据え置きゲーム機「Wii」(同)でのフィットネスソフト「Wii Fit」(同)のヒットなどに派生し、ある程度息の長いものになったが、やがて、無料で楽しめ、グラフィックもゲーム専用機と遜色なくなったスマホアプリの台頭もあって、後継機「ニンテンドー3DS」(同)もヒットはしたものの、DSほどの社会現象には至らず、ブームはひっそりと終わりを迎えた。思えば、現在も品薄が続く「リングフィット アドベンチャー」(同)のヒットも「Wii Fit」を思わせるものがある。
これまで圧倒的にスマホゲームの後じんを拝していた家庭用ゲーム市場だったが、今回の「あつ森」のヒットに始まる新規ユーザーの取り込みで、少し状況が変わりつつある。もちろんブームはやがて去るものだし、必ずしもスマホゲームと家庭用ゲームは対立する存在という訳でもないが、ユーザーが何に時間を使ってくれるかという点で、どれだけの新規ユーザーをつなぎ止められるかが、家庭用ゲーム市場の今後を左右するだろう。
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