東宝演劇が、新プロジェクト「TOHO MUSICAL LAB.」の第1弾として、7月11日より新しい短編オリジナル・ミュージカル2本をライブ映像配信する。そのうちの1作「CALL」(作詞・脚本・演出:三浦直之さん)に出演する田村芽実さんと妃海風さんが、愛するミュージカルや舞台への思いを語った。
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近未来を舞台に、人がいない場所で「聴衆のない音楽会」を開き、旅を続けるガールズバンド「テルマ&ルイーズ」の物語が展開される。妃海さんは「人がいない劇場空間を廃虚に見立てて、お芝居します。私たちが演じるのは3姉妹で、私は次女の『オドリバ』、田村さんが末っ子の『ミナモ』、長女の『シイナ』が森本華さんです。オドリバは景色に歌うのが好きなしっかり者の盛り上げ役です」と話す。
田村さんも、自身の役柄について「姉たちを見て育った純粋な三女です。誰かに向けて歌いたいという葛藤を持ちながら、誰もいない山奥や浜辺で歌っています」と解説した。
本作は、演出家へのオファーから1カ月弱、けいこ2週間で無観客のライブ配信を提供する。かつて宝塚歌劇団で星組のトップ娘役として活躍し、その後も数々の舞台を歩んできた妃海さんは、そんな試みを「宝塚でなくても、こういうことはなかなか経験できません」という。「コロナ自粛の状況下でエンタメ企画を立ち上げてくださる方が少ない中、こういうプロジェクトに参加できました。ただし、立ち上げてくださった方も手探り状態。だからこの経験はとても貴重だと思います。配信を通じて、生の舞台でも見られない、テレビドラマとも違う細かい表情、役者の息づかいをぜひ楽しんでほしいです」
田村さんは、普段から足繁く通う劇場「シアタークリエ」(東京都千代田区)のステージで上演される本作への思いがひとしお。「オファーをいただいたときは、ただただうれしかったです。台本をいただいて、このシアタークリエのステージ上でお稽古する。ここ数カ月、ずっと演者さんもステージに立っていなかっただろうし、お客さんも客席に座っていなかったと思います。その劇場を目の当たりにして、とても寂しく感じました。すごく寂しい。同じ場所なのに、今までステージに立っていたときや、観客として見に行ったときとも違う場所に感じました。『CALL』は、この状況を逆手に取った実験的な演出、今だからこそ観ていただきたい作品です。当日、お客さんに観ていただけることが、本当に楽しみです」と話す。
普段は、マイナス思考になりがちだという田村さん。「コロナの自粛期間もマイナス思考が働いちゃって、本当に落ちるところまでマイナス思考になりました。映画を見たら、たまたま選んだのが、どれも怖い映画や登場人物が闇に落ちる映画ばっかり(笑い)。夢もそう」と語る。
そうした中、「明晰夢」を見るのにハマったと明かす。「明晰夢は、夢の中で自分が夢を見ていると自覚している状態です。夢を操作することもできます。それがたくさんできるようになると、まるで夢の世界に住んでいるような心地になるんです。でもやっているうちに現実がフワフワしてきて、怖くなってやめました。本当に怖かったです(笑い)」と振り返った。
一方、「元々体を休めたり、ゆとりを持つのが好きではないタイプ」と明かす妃海さんは、コロナ自粛で考え方が変化したという。「目覚ましをかけないで寝てみたいだけ寝るとか体を休める、そしてお料理を作る時間を楽しむ。自粛期間の最初は、いろいろやることを詰めていこうと思っていたんですけど、そうではなく一度しっかり体を休めることにしました。そうして、改めて仕事に復帰したとき、体を休めたほうが効率がいいんだと実感しました。あれだけ寝倒して、ゆっくり自分の時間を楽しめたのは良かったです」とほほ笑んだ。
本作タイトルにちなんで、自粛期間にテレビ電話をした相手を聞くと「しまくりましたよ~! 毎日しました!」と妃海さん。「宝塚の同期とテレビ電話してました。毎朝、起きたら全員で『おはよう』ってあいさつします。昼間はテレビ電話つなげっぱなしで生活していました。本人が映ってなくても、ずっと映しっぱなし。コロナ自粛期間中でとても同期の絆が深まった気がします(笑い)」
「TOHO MUSICAL LAB.」は、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、3月から休演を余儀なくされた直営劇場「シアタークリエ」を「LAB.」(実験室)に見立て、最も旬の劇作家、キャストによる新しい短編オリジナル・ミュージカルを創作する。第1弾となる今回は、「Happily Ever After」と「CALL」の新作2本を、7月11日より無観客・ライブ映像配信で展開。7月下旬からは、観客を入れての公演もスタートする予定。
ライブ配信は、イープラスの「Streaming+」で行われる。視聴券の販売期間は7月13日午後4時まで。視聴券料金は3800円。(取材・文・写真:桜井恒二)