海に眠るダイヤモンド
最終話前編(9話) あの夜
12月22日(日)放送分
俳優の堺雅人さん主演ドラマの続編「半沢直樹」(TBS系、日曜午後9時)の初回が7月19日に放送され、平均視聴率は22.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録と、20%の大台に乗せて好スタートを切った。続編には、2013年放送の前シリーズに続いて、香川照之さん、片岡愛之助さんが出演。さらに、市川猿之助さん、尾上松也さんが加わり、一つの作品に4人の歌舞伎俳優が集結したことで“時代劇っぽさ”が倍増した。原作の池井戸潤さんも「経済を使った時代劇」と説明する同作の魅力を、改めて探ってみた。
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「半沢直樹」は、池井戸さんの「半沢直樹」シリーズが原作。2013年7月期放送の前作は「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」、今作は「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」を実写化。
池井戸さんは元銀行マンという異色の経歴の持ち主で、同シリーズのように銀行を舞台とした作品が多く、他にも直木賞受賞作で下町の工場を舞台とした「下町ロケット」シリーズ、大手自動車メーカーを舞台にした「空飛ぶタイヤ」、足袋製造会社の再生を描いた「陸王」、左遷された主人公が自身と低迷中のラグビーチームを再起させる「ノーサイド・ゲーム」などの企業・経済小説を手がけてきた。一見すると社会派という内容に見えるが、苦境に立たされながらも志を曲げず奮闘するという人間ストーリーが描かれており、作品に共感できるのが魅力となっている。
一方、王道の時代劇といえば「水戸黄門」「暴れん坊将軍」「遠山の金さん」をはじめ、勧善懲悪の展開でカタルシスを得られるのが魅力だ。半沢直樹シリーズも、銀行マン・半沢が、銀行の内外に現れる敵と戦い、組織と格闘していくさまを描いた。苦境に立たされた半沢が最終的に敵に「倍返し」する痛快さや爽快感が魅力となっており、半沢の決めぜりふ「倍返し」は「2013年ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞を受賞。かつて、池井戸さん自身が、同シリーズについて「経済小説という面」もあるが、「経済を使った時代劇」「チャンバラ活劇」だと、説明した。
前作では、愛之助さん演じる“因縁の相手”金融庁検査局主任検査官・黒崎駿一や、香川さん演じる“父の敵”東京中央銀行の大和田暁が、これでもかと半沢を追い詰めたが、半沢による「倍返し」の反撃が炸裂(さくれつ)。大和田が土下座に追い込まれたシーンは物語を代表する名場面となり、後々まで語り継がれるほどの印象を視聴者に与えた。
今作では、猿之助さん扮(ふん)する同行の証券営業部長で大和田派の伊佐山泰二が敵として登場。ファーストシーンから半沢に対する恨みを吐き出した伊佐山は、不良案件を押しつけて嫌がらせしたほか、半沢と対峙(たいじ)すると憎まれ口をたたいた。子会社の東京セントラル証券に出向させられている半沢は、それらを耐え忍ぶが、大手IT企業「電脳雑伎集団」が新興IT会社「スパイラル」を買収する案件を、東京中央銀行に横取りされたのを機に逆襲へ。ラストで伊佐山に「倍返しだ!」とたんかを切ったシーンでは、伊佐山のこれまでの態度に腹を立ててきた視聴者も、これからの展開への期待感とともに、一定の高揚感を得ただろう。
ドラマ「半沢直樹」といえば、テレビ画面いっぱいにキャストの顔を映し、キャラクターの激情を伝える演出が有名だ。人気、実力を兼ね備えた歌舞伎俳優たちが同シリーズで演じる悪役は、憎たらしい表情を見せ、口をゆがめてせりふを吐くなど、視聴者の敵愾心(てきがいしん)をあおる演出で、半沢に感情移入させる効果を倍増している。さながら歌舞伎の「みえ」を思わせる圧巻の表情は“本職”だからこその迫力だ。ここまでパワフルな悪役たちに半沢はどうやって立ち向かうのか。そしてきっちり「倍返し」してくれるのか……。1話たりとも見逃せない。第2話は26日午後9時から15分拡大版で放送される。
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