連載企画 プリティーシリーズ秘話:第4回 「アイドルタイムプリパラ」でゼロから「プリパラ」を シリーズの緩やかなつながり

「アイドルタイムプリパラ」のビジュアル
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 タカラトミーアーツの女児向けアミューズメントゲームから生まれた「プリティーシリーズ」が今年、10周年を迎え、テレビアニメが9年目に突入した。誕生時からシリーズをプロデュースしてきたタカラトミーアーツの大庭晋一郎さん、シンソフィアの加藤大典さん、タツノコプロの依田健さんが、これまでの歩みを振り返る連載企画「プリティーシリーズ秘話」。最終回となる第4回は、2017年4月~2018年3月放送の「アイドルタイムプリパラ」、2018年から放送中の「キラッとプリ☆チャン」の制作の裏側に迫る。

ウナギノボリ

 ◇「プリパラ」をリセット 進化したゲーム 

 --「プリパラ」は3年目で終わると思いきや「アイドルタイムプリパラ」が始まります。

 大庭さん アミューズメントゲームの筐体は大体、3年周期なのですが、「プリパラ」の筐体は優秀で、3年たっても故障が少なかったんです。3年目が終わり、そのまま4年やってもいいのですが、メインターゲットは7歳くらいで、3年たつと7歳の子が10歳になります。10歳になると、ゲームをやめてしまう子も多いんです。女の子は大人になるのが早いので、ほかのものに興味が変わるんですね。「プリパラ」を残しつつ、新しいものを作ろうとしました。

 --テーマは時間です。舞台も変わりました。

 大庭さん 企画書を作る時点で時間をテーマにすることを決めていました。舞台はパラ宿ではなく、地方の「プリパラ」です。ゼロから「プリパラ」を描こうとしました。

 --いろいろなものをリセットした。

 大庭さん そうですね。そこで、夢川ゆいという新たなキャラクターを作りました。“ユメかわいい”というキーワードが流行していたので、名前はすぐに決まりました。らぁらを入れるか、入れないかで悩みました。全く違うストーリーにもできますが、これまでの資産もあるので、ダブル主人公にしました。ただ、神アイドルになったらぁらという存在が強すぎるので、システムのエラーで、プリパラチェンジできなくなることでリセットしました。

 依田さん ダブル主人公は難しいんですよね。前作の主人公がいるだけになるか、逆に新作の主人公の存在感がなくなる場合もあるので。

 大庭さん 「アイドルタイム」では「プリパラ」の世界観の可能性を示したかったんです。「古代プリパラ」の伝説、「プリパラ」の誕生、一人の女の子がゼロから「プリパラ」を作っていく姿を描き、見ている女の子が、自分の街に「プリパラ」を作る想像をしてくれるんじゃないかと。

 ー-ゲームの進化は?

 加藤さん 時間がテーマなので、ライブで朝、昼、夜と時間が過ぎる演出をしたかった。マイキャラをもっと深めようともしました。

 大庭さん ゲームでは、これまでできなかったことをどんどんやろうとしました。語尾ボイスを作ったり、デジタルデータを買えるようにしたり、トモチケにスタンプでメッセージを入れられるようにしたり。マイキャラを進化させて、愛情を持ってもらいたかったんです。

 ◇男プリは森脇監督の提案

 --男子専用プリパラ(男プリ)も登場しました。

 大庭さん 男プリも「プリパラ」の可能性です。(監督の)森脇(真琴)さんが以前から「男子のプリパラもあるよね!」と話をしていました。3期までは女の子のプリパラでいこうと決めていましたが、「アイドルタイム」では可能性の一つとして入れようと思いました。格好いい男の子がエスコートしてくれるという少女マンガ的な世界を表現したかった。最初は賛否があるかもしれませんが、最後には絶対に気に入ってもらえる!とも思っていました。

 依田さん ゆいとショウゴを兄妹にしようと提案したのは、森脇さんでした。パパラ宿では、女の子がプリパラに興味がない。では、何に興味があるのか? 男プリは物語の構造上必要だったんです。

 大庭さん 男子サッカー部しかないところで、女子サッカー部を作ろうとするようなストーリーです。今まで年上のみんなを引っ張ってきたらぁらが同い年の女の子と頑張るところもよかった。みんな伸び伸びしているんですよね。

 ◇「プリ☆チャン」で若返りも

 --「アイドルタイムプリパラ」の次は「キラッとプリ☆チャン」です。

 大庭さん 「プリパラ」の筐体は優秀で、実はまだ使えそうだったんです。ただ、4年もやってきたので、新しい遊びを提案しないといけない。キラキラしたキレイなカードがあるべき……。キラッとプリンターを置くことになりました。また、(ネットに)常時接続にしました。

 加藤さん SNS的な遊びもできるようにしました。いいね!をできるようにしたり。

 大庭さん キラチケのデザインも苦労しました。「プリパラ」と「プリ☆チャン」ではチケットの用紙が違うんです。解像度が高くなって、キレイになった色もあるけど、色味が違ったり……。

 加藤さん キラキラを表現するために試行錯誤しました。いろいろな組み合わせのサンプルがたくさんあって、段々何をやっているのか分からなくなったり(笑い)。

 --アニメも一新しました。

 依田さん 「プリパラ」を4年やっていたので、さすがに限界もきましたから。

 大庭さん 「アイドルタイムプリパラ」で「プリパラ」の可能性を全部試すことができました。今後、いつでも広げることができるし、キャラクターたちはパワーを残したまま現状維持ができると考えていました。これはほかにも言えることですが「プリパラ」というブランドが単体で成立すると、その半面で社会との接点が減っていきます。その結果、新規層が入りづらくなり市場が維持できなくなる。やっぱり変えないといけなかったんです。

 --テーマは動画配信です。トレンドが反映されました。

 大庭さん 動画配信で自分発信をするトレンドをアニメとゲームの世界に落とし込もうと企画を詰めていました。このテーマで社会との接点を表現しようとしたんです。

 依田さん 動画配信というのが今っぽいし、「プリ☆チャン」のスタッフィングで意識したのが、若返りです。(博史)池畠さんは経験値もあり、これからの活躍が期待されている監督です。森脇さんと仕事をしたこともあるので、テイストも分かっていますし。池畠さんは、女児向けアニメをやったことがなかったので、逆に女児向けであることをすごく意識してやってくださっています。

 大庭さん 視聴率も安定しています。「プリパラ」は7~9歳が多かったのですが、「プリ☆チャン」は4~6歳が多く見てくれています。

 ◇女の子の夢を応援して10年

 --10年を振り返ると?

 大庭さん 10年続けてきましたが、基本的には1年、1年なんですよね。それを繰り返してきました。初めて見る子にとっては1年目なわけですし。10年たったけど、そこを忘れてはいけません。

 依田さん 長期シリーズはたくさんありますが、ほとんどはフォーマットが確立していて、毎年中身を入れ替えていますよね。プリティーシリーズは、3、4年でフォーマットをガラッと変える。定期的に大変革があるんです。面白いけど、大変ですよね。踏襲できない部分も多いですが、「女の子の夢を応援する」というシリーズのコンセプトは、しっかりあります。だからこそ、本来はつながっていない世界でも、スターシステムのようにキャラクターが出てきたり、緩やかなつながりもあります。そこが面白いですよね。

 加藤さん アミューズメントゲームは毎年、結果が出ないと続けられません。毎年、今までやっていなかったことにチャレンジしていて、システマチックにやってきたわけではありません。今年どうしよう?と考えるのが楽しいですね。それと、プリズムアクトがすごく難しかった(笑い)。

 -ー「キラッとプリ☆チャン」の第118話「キラッとあつまれ!プリティーオールフレンズだッチュ!」は、シリーズ10周年を記念したスペシャル回で、歴代シリーズのキャラクターが登場して、歴代主人公によるスペシャルCGライブが放送されました。


 大庭さん 今、「プリ☆チャン」を見ている子供たちが、ライブを見て、こういうキャラクターがいて、みんなすてきだな……と思ってくれるとうれしいですね。昔のキャラクターではなく、今でもキラキラ輝いているキャラクターなんです。それを知ってもらいたかった。10年後もそうやって見ていただきたいです。さらに、10年続けていきたいですね。

 --10年後にはキャラクターが100人くらいになっているかもしれませんね。

 大庭さん 平成と令和で分けましょうか? 20周年記念ライブで、親子で楽しんでもらえるようになるのが夢です。

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