2020年アニソン年間ランキング:首位は「すとぷり」 10代女子の心つかむ LiSA旋風 さらなるジャンプアップ

「すとぷり」のアルバム「すとろべりーねくすとっ!」のジャケット
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「すとぷり」のアルバム「すとろべりーねくすとっ!」のジャケット

 アニソンが充実していることで知られるタワーレコード新宿店(東京都新宿区)の2020年のアニソン年間ランキング(2019年12月7日~2020年12月6日集計)が発表され、6人組エンタメグループ「すとぷり」の2枚目のアルバム「すとろべりーねくすとっ!」が1位となりました。担当バイヤー・樋口翔さんに、本チャートを基に2020年のアニソンシーンを振り返ってもらいました。

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 ◇10代女子を中心に爆発的な人気 「すとぷり」のキャラコンテンツとしての力

 「すとぷり」は、2016年に結成された6人組エンタメグループで、中高生の女子を中心に絶大な支持を得ています。公式YouTubeチャンネルでの生配信番組、歌ってみた動画、ゲーム実況などネットを中心に活躍し、今年は初となる日本武道館ライブを開催予定です。首位を獲得した2枚目のアルバム「すとろべりーねくすとっ!」は、クリエーターユニット「HoneyWorks」や、人気ボカロPのナユタン星人さんなど、ネットシーンで活躍するクリエーターが楽曲を提供。すとぷりの特徴でもある甘いボーカルなど、その魅力が凝縮された1枚となっています。年間ランキングでは、2020年11月に発売されたばかりの3枚目のアルバム「Strawberry Prince」も8位にランクインし、人気の高さを象徴しています。

 すとぷりの特徴は、ライブ以外では顔出しをせずにイラストのキャラクターがメンバーとして活動することで、キャラクターコンテンツとしての強さも併せ持っているところです。生配信番組のトークや歌でメンバーのリアルな息づかいを感じながらも、キャラクターという表現手段を取っていることでリアルのアイドルとは違った距離感で楽しめるのが、すとぷりならではの魅力。アニメやゲームのキャラクターに触れる機会が多い10代女子の心をつかんでいます。

 今年はコロナ禍で多くのアーティストがイベントやライブなどの活動が制限される中、すとぷりはネットを中心に歌やトークを提供し続けられたのも、今回の躍進につながっているように思います。人気曲「スキスキ星人」のYouTubeでのミュージックビデオの再生回数は1260万回以上、「ギンギラ銀河」は880万回以上で、そのほかの楽曲のMVも100万単位のPVを記録。ライブやテレビ出演で人気を獲得するのがこれまでの花形だったのが、ネットでの活躍にシフトしていることも感じ取れる結果となりました。

 ◇「鬼滅の刃」人気で“ロックヒロイン”LiSAのさらなる躍進

 2019年から続き、2020年も歌手のLiSAさんが歌うアニメ「鬼滅の刃」の楽曲が上位にランクインしました。劇場版アニメ「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の主題歌「炎(ほむら)」が3位にランクインしたほか、LiSAさんの5枚目のアルバム「LEO-NiNE」が9位、テレビアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ「紅蓮華(ぐれんげ)」が10位となりました。

 「炎」「紅蓮華」は、10月の劇場版公開以降、以前にも増して10~50代の幅広い年代の方が購入されるようになりました。とくに「炎」は、タワーレコードの中でも映画館が隣接したショッピングモールなどの店舗で爆発的な売り上げを記録しています。

 LiSAさんの楽曲は、「鬼滅の刃」関連だけでなく、2019年末にリリースされたテレビアニメ「ソードアート・オンライン(SAO) アリシゼーション War of Underworld」のエンディングテーマ「unlasting」もトップ10圏外ではありますが、上位にランクイン。9位にランクインしたアルバム「LEO-NiNE」は、「unlasting」「紅蓮華」などのヒット曲のほか、ロックに振り切った書き下ろし楽曲も収録しており、アニソンファンだけでなく、ロックファンの支持も集めました。2020年は、アニソン界のロックヒロインとしてトップを走り続けてきたLiSAさんがさらなるジャンプアップを遂げ、より広い層のファンを獲得したことがCDの売り上げ、購入層からも感じ取れる一年でした。

 ◇15周年のアイマスも続々とランクイン サイバーグラス悲願のCDも

 今年15周年を迎えた「アイドルマスター(アイマス)」シリーズからも3作品が年間トップ10にランクインしました。6月に3周年を迎えた「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」(ミリシタ)から「THE IDOLM@STER MILLION THE@TER WAVE 06 花咲夜」が2位、アイマス15周年記念でリリースされた「THE IDOLM@STERシリーズ15周年記念曲『なんどでも笑おう』」が5位、「アイドルマスター シンデレラガールズ」から「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 37 Needle Light」が7位となりました。

 「アイマス」シリーズは、毎年年間ランキングで上位にランクインしていますが、今年は特に15周年のお祝いムードの高まりが感じられました。また、5位の「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 37 Needle Light」は、長年新宿店が応援し続けてきたデュオ「サイバーグラス」のオリジナル曲を収録した初のCDで、店舗でも大々的に展開。九州など遠方からファンの方が駆け付けてくれました。サイバーグラスの上条春菜と荒木比奈は、2011年のゲームリリース当初から登場しているキャラクターで、約9年越しのオリジナル楽曲のCD化を多くのファンが祝福しました。

 ◇「CUE!」AiRBLUEの気概あるCD特典 「バンドリ!」RAISE A SUILENの台頭

 年間ランキングの4位には、テレビアニメ化も決定している声優育成スマホゲーム「CUE!」の16人のキャストによるユニット「AiRBLUE」の3枚目のシングル「Colorful/カレイドスコープ」がランクインしました。「Colorful/カレイドスコープ」は、初回出荷されたCDのうち、全数ではありませんが相当数にキャストの直筆サイン入りキャラクターカードを封入したことも話題になりました。CDに特典を封入することは珍しくありませんが、キャストによる直筆のサイン入りアイテムを封入したことには、ライブが開催できない状況の中、ファンにコンテンツを提供したいというスタッフやキャストの方々の気概を感じました。2020年はCDのパッケージや特典に力を入れたアーティストが多く、CDを手に取る楽しさをファンに味わってほしいという思いが売り上げにつながっている例も見受けられました。

 ほかにも、アニメやゲームなどが人気の「BanG Dream!(バンドリ!)」からはガールズバンド「RAISE A SUILEN(レイズ ア スイレン)」の4枚目のシングル「DRIVE US CRAZY」が6位にランクインしました。RAISE A SUILENは、ロックバンド「SHAZNA」のメンバーでもあるボーカルのRaychellさん、ドラム担当の夏芽さんらを擁する本格的ロックバンドで、圧倒的なパフォーマンスで、アニソンファンだけでなくロックファンの人気を獲得しています。今後もバンドリ!の枠を超えた活躍が期待されます。

 ◇タワーレコード新宿店 2020年アニソンランキング(敬称略)

1位 「すとろべりーねくすとっ!」 すとぷり アルバム

2位 「THE IDOLM@STER MILLION THE@TER WAVE 06 花咲夜」 花咲夜 シングル

3位 「炎」 LiSA シングル

4位 「Colorful/カレイドスコープ」 AiRBLUE シングル

5位 「THE IDOLM@STERシリーズ15周年記念曲『なんどでも笑おう』」 THE IDOLM@STER FIVE STARS!!!!! シングル

6位 「DRIVE US CRAZY」 RAISE A SUILEN シングル

7位 「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 37 Needle Light」 上条春菜、荒木比奈 シングル

8位 「Strawberry Prince」 すとぷり アルバム

9位 「LEO-NiNE」 LiSA アルバム

10位 「紅蓮華」 LiSA シングル

※左から順に、タイトル、アーティスト。ランキングはシングル、アルバムをまとめて集計。

 ◇プロフィル

 樋口翔 タワーレコード新宿店7階(邦楽・販売促進)アニメ担当バイヤー。2014年に町田店から異動。アニメにハマったきっかけは「新世紀エヴァンゲリオン」「BLUE SEED」「VS騎士ラムネ&40炎」など1990年代の作品で、アニソンの中でもキャラソン、とりわけアイドルアニメ関連の楽曲を愛聴。マイアンセムは「アイドルマスターミリオンライブ!」より「Up!10sion Pleeeeeeeeease!」。お気に入りのアニメ・ゲーム作品は「プリティーリズム」「アイドルマスター」「フォトカノ」「サクラ大戦」など。

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