ARIA:15年間で熟されたネオ・ヴェネツィアの街並み 音楽へのこだわり 制作の裏側

「ARIA The CREPUSCOLO」の一場面(C)2020 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー
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「ARIA The CREPUSCOLO」の一場面(C)2020 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー

 天野こずえさんのマンガが原作のアニメ「ARIA」の新作となる劇場版アニメ「ARIA The CREPUSCOLO」が3月5日に公開される。2005年のテレビアニメ第1期放送開始から15周年を記念した新作で、同シリーズを手掛けてきた佐藤順一さんが総監督、名取孝浩さんが監督を務める。「ARIA」シリーズは、美しい映像、音楽が多くのファンを魅了し続けており、名取さんは「テレビシリーズ初期から試行錯誤を重ねてきた。シリーズを重ねるにつれ円熟度が増してきた」と話す。佐藤さん、名取さんに「ARIA」の制作の裏側を聞いた。

 ◇ネオ・ヴェネツィアは「本当にそこにある」ように 古いものは古いままで

 「ARIA」はマンガ誌「月刊コミックブレイド」(マッグガーデン、現在は休刊)で2002~08年に連載されたマンガが原作。水の都・ベネチアがモチーフの街、ネオ・ヴェネツィアを舞台に、ARIAカンパニーで一人前の水先案内人(ウンディーネ)を目指す主人公・水無灯里の修業の日々、友人や先輩との交流などが描かれた。「ARIA The CREPUSCOLO」は、天野さんの完全新作描き下ろしマンガが原作で、オレンジぷらねっとを中心としたストーリーが描かれる。佐藤さんが脚本を担当し、J.C.STAFFが制作する。

 ――「ARIA」はウンディーネたちの日常、感情の機微を丁寧に描いたストーリーはもちろん、ネオ・ヴェネツィアの美しい街並みが印象的です。絵作りのこだわりを教えてください。

 名取さん 「本当にそこにある」という感じを大切にしています。すごい街並みを見せたいわけではなく、ベネチアの街に行ったら、アニメで描いているような街並みがそこにある。街並みが変にファンタジックではなく、自己主張しないからこそ、灯里たちウンディーネのドラマが映えるんです。

 ――街並みなどの背景は、テレビシリーズから脈々と受け継がれてきたものなのですか。

 名取さん テレビシリーズは初期から試行錯誤を重ねていて、新作でようやくここに落ち着いたのかなという感じはありますね。初期の頃は「もっと写真ぽくしよう」「もっと天国みたいな感じにしよう」という時期もありました。ネオ・ヴェネツィアの街並みも円熟度が増してきましたね。

 佐藤さん 最初は、初期の原作にもあるような実際のベネチアとは違う世界観を作っていたんですが、ベネチアへ取材に行って写真を撮ってくるとそれを生かしたくなるんです。ただ、実際のベネチアは建物の壁がボロボロだったり、補強の鉄板がガチガチに打ってあったり、古さがある。アニメではそこはきれいに直したほうがいいのかなと思っていたんですが、だんだんやっているうちにボロいものはボロいままでもいいんじゃないかと。

 ――「ARIA」のネオ・ヴェネツィアは、地球(マンホーム)のベネチアを移転したという設定です。

 佐藤さん だから、アニメでも今のベネチアをそのまま描けばいいということになってきましたね。アニメを制作しながら、ベネチアへ行ったらそのままあの街並みがあるということのほうが大事と考えるようになりました。

 ◇音楽は絵の一部 「泣きたくなるほど幸福な音楽を」

 ――「ARIA」は、ゆったりと流れる音楽、ウンディーネが客に披露する舟謳(カンツォーネ)にも癒やされます。音楽のこだわりは?

 佐藤さん テレビアニメ放送当初から音楽は絵の一部だと思っています。どんな風景であってもこの音を乗せたら穏やかな「ARIA」の世界になるという音楽が欲しかったんです。音楽を発注する時には、テーマは幸福感で、「泣きたくなるほど幸福な音楽をください」としか言っていませんでした。そうオーダーしたらみんないろいろな曲を作ってくれました。

 名取さん 例えば他の作品が半分絵で、半分音楽だとしたら、「ARIA」の場合は7~8割が音楽なんです。だから、目をつぶって音だけ聴いていても、ちゃんと「ARIA」なんですよ。もちろん映画館で目をつぶってくださいとは言えないですけど(笑い)、音だけを聴いても「ARIA、よかったな」と感じてもらえると思っています。

 ――幸福感をテーマにした音楽をどんなふうにアニメの中で使っている?

 佐藤さん 普通のドラマであれば、物語が始まったら何かが動くまで音楽は流れないんです。ドラマに動きがあったら音楽が入って盛り上げる。でも、「ARIA」の場合は何もないところからまず音楽が流れている。何かが起こったら一回音楽を切るという使い方が多いんです。音楽が入ることで絵が完成する。それは今もあまり変わっていないことではあるのですが、見せ方は少しずつ熟練度が増してきているかもしれない。スタッフのみんなも、絵コンテを切る時に音楽を頭に描くようになっていきましたね。

 ――音楽を意識した絵コンテの描き方とは?

 名取さん 特に佐藤さんの場合は、音楽だけじゃなくて、効果音(SE)とせりふも含めて一つの曲という感じだと思います。「音楽が始まるきっかけとしてここにSEを使う」とか、プランニングとしてSEがコンテに書いてある。ダビングを見据えた上でのコンテの描き方というか。もちろん、足音など意味のないものにもSEは付くのですが、コンテに「SE」と書いてある時は「このSEをきっかけに物語を動かすのか」「音楽が絡んでくるのか」と分かる。音楽だけじゃなく、SEとせりふも含めて「音」というものが全部マッチしていないとダメなのかなと思います。

 佐藤さん ざっくりとした設計図はコンテでできています。その後、作業しながら「やっぱりこっちがいいかな」「ここは音楽を入れよう」「ここは音楽なしがいい」と修正しながら完成させていきますが、最初にプランがあるのは間違いないですね。

 ――名取さんはテレビアニメ第1期に演出助手として関わり、今回監督を務めることになりました。「ARIA」から学んだことは多いですか?

 名取さん キャリアのスタートが「ARIA」の演出助手だったので、いろいろなところで仕事をやっていて、「演出とは?」と悩む時に「ARIA」のことを思い出すんです。自分の背骨というか、原点が「ARIA」ですね。

 ――新作の見どころを教えてください。

 佐藤さん 安野希世乃さんが歌う主題歌や、川上とも子さんから受け継いで佐藤利奈さんが演じるアテナ、総作画監督になった伊東葉子さんと新たなメンバーが入って、新しい「ARIA」になっています。それでも今までと同じ「ARIA」の世界だと感じられる作りになっているので、その両面で楽しんでほしいなと思っています。

 変わらないようでゆっくりと移ろう「ARIA」の世界の裏側には、スタッフやキャストの試行錯誤、積み重ねがあった。熟成された美しい映像、音楽をじっくりと味わいたい。

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