仮面ライダー&スーパー戦隊:伝統芸能になり得るか? 「スーパーヒーロー戦記」の挑戦 白倉伸一郎Pに聞く

「セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記」を手がける東映の白倉伸一郎プロデューサー(中央)
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「セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記」を手がける東映の白倉伸一郎プロデューサー(中央)

 特撮ドラマ「仮面ライダーセイバー」と「機界戦隊ゼンカイジャー」(共にテレビ朝日系)の映画「セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記」が7月22日に公開される。放送開始50周年を迎えた「仮面ライダー」シリーズと、現在放送中の「ゼンカイジャー」で45作を数える「スーパー戦隊」シリーズのダブルアニバーサリー作。約半世紀にわたって愛され続けている両シリーズは“日本の伝統芸能”になりつつある。「平成仮面ライダー」シリーズを支えた一人で、「機界戦隊ゼンカイジャー」、さらに「スーパーヒーロー戦記」を手がける白倉伸一郎プロデューサーに「特撮ヒーローは伝統芸能になり得るか?」を聞いた。

 ◇ロードマップやビジョンがあるようでない

 「仮面ライダー」シリーズは1971年に放送が開始され、第1作「仮面ライダー」は視聴率30%超えを記録するなど変身ヒーローブームを巻き起こした。「スーパー戦隊」シリーズは1975年に第1作「秘密戦隊ゴレンジャー」がスタート。いずれも長寿シリーズになったが「ロードマップやビジョンがあるようでない」という。

 「これまでも先を考えて作っているわけではないんです。『仮面ライダー』第1作で藤岡弘、さんの事故によって2号ライダーが登場したように、不幸な事故をイベントとして作品に取り込んできたことが、いまだに色濃く残っています。さまざまな状況に対して臨機応変に対応して、作品にするパワーがある。一方で、流行を取り込むと、陳腐になることもあります。いい意味で行き当たりばったりのダイナミズム、貪欲さはずっと持っていてほしいんですよね。それが未来につながってくる」

 白倉プロデューサーは「原点回帰」という言葉をよく使う。

 「原点は昔を振り返るのではなく、今、自分がいるところが原点であると認識することが大事だと考えています。これだけシリーズが続くと、過去の成功体験もあるけど、今がスタートラインであることを意識する。過去の栄光と同じ栄光はつかめないものです。白紙でスタートするしかないんでしょうね」

 ◇既に伝統芸能になっている!?

 「スーパー戦隊」シリーズは様式美があるが、貪欲に変化しようとしてきた。

 「近年、様式を崩そうとして、『宇宙戦隊キュウレンジャー』で9人にしたり、3人対3人の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』があったり、いろいろ試しています。『スーパー戦隊』という枠組みの中ではありますが、新しい様式を考える努力をしないといけない」

 「スーパー戦隊」シリーズの様式美は伝統芸能のようでもある。白倉プロデューサーは「よくも悪くもですが、既に伝統芸能になっている」と考えているという。

 「ご当地戦隊しかり、スーパーや八百屋さんに●●レンジャーもいますし、説明しなくても、そういうものね……と理解してもらえる。見たことがなくてもフォーマットを知っている。その半面、見なくてもいい番組に陥りがちなんです。伝統芸能に甘んじてはいけないし、ご当地戦隊を含めた戦隊っぽいものの一バリエーションにならないようにしないといけない。歌舞伎が伝統を踏まえて新しい形を模索しているように、あがかないと生き残れない。伝統に巻き込まれてしまいます。あぐらをかくのでなく、新しい文化を作る義務がある」

 ◇「スーパーヒーロー戦記」の入れ子構造

 「スーパーヒーロー戦記」も“新しい形を模索”した。

 「二大ヒーローが活躍するという立て付けなのですが、『仮面ライダーセイバー』の主人公・神山飛羽真(かみやま・とうま)の物語として筋を通すことを大切にしています。飛羽真は小説家ですが『セイバー』というフィクションの中で、フィクションライターである入れ子構造であることが大きな意味を持っています」

 入れ子構造とは複雑そうだが……。

 「フィクションの中で、フィクションライターである飛羽真は何を考えるのか? 『物語の結末は俺が決める!』という決めぜりふがありますが、何を意味するのか? 彼は『仮面ライダーセイバー』という物語をフィクションとして捉えているのか? それとも現実として捉えているのか? 『結末は俺が決める!』とは、どういうスタンスなのか? その答えがほしい……とテレビシリーズのスタッフとも話しました。テレビシリーズでは踏み込むことができない小説家としてのスタンス、『仮面ライダーセイバー』の世界との向き合い方を描くチャンスと思っています」

 複雑な物語を簡単に説明するのは難しいが、子供も大人も楽しめるエンターテインメントとして落とし込もうとした。

 「エンターテインメントの中でインナースペースに切り込んでいきたい。普通はやろうとしないですね(笑い)。『仮面ライダーセイバー』の本の世界の大冒険!もちゃんとやります。田崎(竜太)監督が素晴らしいんです。長回しは大変なんですけど、4シーンを一カットで撮ったり。一日かかって、30テイク以上でようやくOKが出る。7分くらいあるから、6分でNGが出ると振り出しに戻ってしまう。そういう映画らしいシーンもあります。本当は映画でもなかなかできないんですけど(笑い)」

 「スーパー戦隊」「仮面ライダー」は伝統に巻き込まれることなく、これからも進化していく。「スーパーヒーロー戦記」ではどんな進化を遂げるのだろうか? 期待が高まる。

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