竜とそばかすの姫:細田守監督 集大成を超えた新たな映画 子供たちに未来の希望を

「竜とそばかすの姫」の一場面(C)2021 スタジオ地図
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「竜とそばかすの姫」の一場面(C)2021 スタジオ地図

 「時をかける少女」(2006年)、「サマーウォーズ」(2009年)などで知られる細田守監督の最新作となる劇場版アニメ「竜とそばかすの姫」が、7月16日公開に公開された。細田監督が「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」(2000年)、「サマーウォーズ」で描いてきたインターネット世界を舞台に、「時をかける少女」以来となる10代の女子高校生をヒロインに繰り広げられるエンターテインメント作品となっている。細田監督と共に作品を世に送り出してきたスタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサーは、「竜とそばかすの姫」を「細田監督の集大成を超えた新しい映画」と表現する。本作に込めた思い、今夏に設立10周年を迎えるスタジオ地図について聞いた。

 ◇「未来のミライ」が変わるきっかけに 現代を描く

 「竜とそばかすの姫」は、過疎化が進む高知の田舎町で父と暮らす17歳の女子高生・内藤鈴(すず)が、超巨大インターネット世界<U(ユー)>と出会い、成長していく姿を描く。幼い頃に母を事故で亡くし、心に大きな傷を抱えていたすずはある日、“もう一つの現実”と呼ばれる<U>と出会い、ベルという<As(アズ)>(アバター)で参加することになる。心に秘めてきた歌を歌うことで、あっという間に世界に注目される存在となっていくベル(すず)の前に竜の姿をした謎の存在が現れる。

 齋藤プロデューサーは、前作「未来のミライ」(2018年)の時点で、細田監督の次回作は「一大エンターテインメントとなる」という予感があったという。細田監督と齋藤プロデューサーは「時をかける少女」で出会い、これまで6本の劇場版アニメを制作してきた。

 「『おおかみこどもの雨と雪』は、細田監督が亡くなった母親の総括をしたいという思いから作られた作品で、『未来のミライ』も監督の中からにじみ出てきたものが表現されていた。一方、『サマーウォーズ』『バケモノの子』は、監督からにじみ出たものをよりエンターテインメントとして、いろいろな人の力とアイデアを借りて、総がかりで作り上げていくような作品でした。そうした経験則があったので、次回作は後者の作品になるだろうという予感がありました」

 前作の「未来のミライ」は細田監督の「作家としてのフェーズが変わるきっかけになった」とも語る。

 「『未来のミライ』は、第91回アカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされるなど国内外から多様な意見、多様な感想をもらった作品で、監督はかなりの刺激になったのだと思います。そこで受けた刺激が次の作品のステップにもなっていて、体験がそのまま作品になった部分もあるのではないかと思います」

 「竜とそばかすの姫」は、細田監督がこれまでの作品でも描いてきたインターネットが舞台。細田監督が大きな影響を受けたという「美女と野獣」をモチーフにしたストーリーで、「時をかける少女」以来となる10代の女子高校生をヒロインに据えた作品だ。

 「改めてこの時代に少女の物語を描く意義であったり、普遍的な物語をモチーフにして映画を作ることであったり、それは同じようなことをやっているように見えても、実は違う。作家として手練手管が身について、それを全て結集させた集大成的な部分もありますが、それだけじゃない。我々も年齢を重ねて、若い頃から見ている世界は変わったし、時代も変化した。18年間、6本の映画を作ってきた積み上げの歴史の延長線上に、この現代で必要とされること、現代性を足すことで、集大成を超えた新しい映画ができたんじゃないかと考えています」

 ◇アニメは子供が見ることが前提の表現 希望を見せたい

 細田監督、スタジオ地図は「竜とそばかすの姫」で何を描こうとしたのか。齋藤プロデューサーは、「未来、自己を肯定する。今の時代をどうやって生き抜くかという答えがこの映画の中にあると思っています」と話す。

 「主人公のすずは、生まれた時からインターネットがそばにあって、両方の世界を生きなければいけない世代です。人格、自我が両方の世界で引き裂かれることもあるかもしれない。ただ、細田監督には、二つの世界で生きる今の子供たちを応援したいという思いがある。二つの世界は、両方必要で、両方あってあなたなんですよ、と。今の時代、自分を抱きしめることが大事だと思うんです」

 細田監督は、「二つの世界を生きる子供たちに対して、しんどさを乗り越えて、健やかに伸び伸びと生き延びてほしいという希望を込めて、この映画を作った」と語っていたことがある。齋藤プロデューサーも「希望」という言葉を使い、子供たちへの思いを語る。

 「アニメーションは、子供が見ることが前提の表現だと思っています。表現として社会の負の部分を描くことも可能だし、そういう作品があってもいいと思うのですが、大人の態度として、アニメーションで映画を作る人間の態度として、不安は常にあるけど、未来はきっと明るいに違いないんだ、希望はきちんとあるんだ、生きるに値する世界なんだということをちゃんと示すべきなんじゃないかと思うんです」

 ◇チャレンジャーであり続ける 「竜とそばかすの姫」は時代に必要とされる作品

 スタジオ地図は、今年で設立10周年を迎えた。齋藤プロデューサーは、10年間を振り返り、「チャレンジャーであるということは、ずっと変わらない」と話す。

 「人生100年時代とはいわれますが、あと何本映画を作れるのか、あと何年生きられるのかと考えることもあります。何があってもおかしくない世の中で、後ろを振り返っている暇はない。それなら、前を見てポジティブにチャレンジした方が得なんじゃないか。そういう人たちが集まる場所がスタジオ地図なんじゃないかなと思います。また、映画はその時代を描くものとした時に、現代は変化していくスピードが激しいので、どんな風説にも堪えられるような企画を考えないといけないと考えています」

 「時代を描く」という点においては、コロナ禍に対する思いもある。

 「コロナ禍という世界共通の体験を受けて、鬱屈した部分、先が見えにくい部分があると思います。『竜とそばかすの姫』は、今のように社会が変化する前に企画を立ち上げて作り始めた作品ですが、いみじくも時代に必要とされる作品になったのではないかと。今の時代にこんなことを言うと、マッチョと思われるかもしれませんが、『生きる』『一人じゃない』『共に生きる』といったメッセージをこの作品の中に見ると思うんです」

 細田監督、スタジオ地図のこれまでの歴史、思いが込められた「竜とそばかすの姫」。集大成であり真骨頂を堪能したい。

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