先月最終回を迎えた連続ドラマ「ドラゴン桜」(TBS系)や「MIU404(ミュウ ヨンマルヨン)」(同)など話題作に立て続けに出演し、注目を集めている俳優の鈴鹿央士さん。7月16日公開の「星空のむこうの国」(小中和哉監督)では、主人公の森昭雄役として映画単独初主演を務めるなど順調にキャリアを積み上げている。自身を「メラメラしている人」といい、爽やかな外見の奥に熱い一面ものぞかせる鈴鹿さんに、俳優としての思いや今作で主演を務めた心境などを聞いた。
◇映画単独初主演に不安も… 綾野剛に自ら相談
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映画は、1986年に小中監督が発表した同名映画のセルフリメーク。トラックに轢かれる寸前のところを親友に助けられて以来、2カ月間同じ美少女が現れる夢を見ていた高校生の森昭雄(鈴鹿さん)は、ある日、現実世界でついに彼女・理沙(秋田さん)に出会う。実は、理沙はある約束を果たすため、もうひとつの世界線に生きる昭雄のことをずっと呼び続けていたのだった……という内容。
映画は異なる世界線が交差する青春ラブストーリー。鈴鹿さん演じる主人公・昭雄は、天文部に所属する普通の高校生だが、運命の人との“時空を超えた約束”を果たそうと奔走するようになるという役どころ。話を聞いたとき、鈴鹿さんは「難しい役だなと思いました」という。
「僕が出演したことのないジャンルの映画でしたし、映像になったときにどうなっているんだろうとも思いました。たとえば脚本には『星が降っている』と書いてあるけど、それはどういう降り方をしているんだろう、と。映像になったときにどうなっているか楽しみでしたし、難しい役だなとも思いました。頭の中で『こうなっているのかな』と考えながら演じていました」と語る。
昭雄を演じるうえでは「男としての変化」を意識していたという。「せりふの口調が、普段の僕の口調と違うので、どこまで違和感なくできるかな、と。理沙と出会ってから使命感が芽生える役なので、『男としての変化』を昭雄という役の中で出せればいいなと思っていました」と振り返る。
今作で、映画単独初主演を果たした。「『早いな』と正直、思いました(笑い)。僕がこれまでに出た映画で主演だった松岡茉優さん(蜜蜂と遠雷)や堤真一さん(決算!忠臣蔵)の姿を見ていたし、『MIU404』の綾野剛さんのように、大きい背中に見えたあの存在に自分がなれるのかな、といろいろ不安なところもあって」と当初の心境を明かす鈴鹿さん。主演が決まり、「MIU404」の撮影後には、自ら連絡を取り、綾野さんに相談もしたという。
「『主演ってどういうものなんですか』と聞いたら、『央士なりの主演でいいと思うよ』と言われました。『人それぞれ、その場に立ってみんなに与えるものがあるから、央士の主演は央士の主演、そのままでいいと思うよ』と。だからあまり気構えず、気楽にできていました」と鈴鹿さん。現場では「そんなに今までと感覚は変わらなかったですね。主演だからこうしなきゃな、ということもあまりなかったです」と頼もしい一面をのぞかせる。
今作で映画単独初主演を果たし、これまでも話題のドラマに出演してきた鈴鹿さん。特に先月最終回を迎えた連続ドラマ「ドラゴン桜」では東大合格を目指す藤井遼を演じて注目を集めた。「ドラゴン桜」の藤井役は、これまでの出演作の中で「一番反響が大きかった」といい、「みんなに『おいしい、おいしい』と言われます」と笑う。
同年代との共演が多い鈴鹿さんは、撮影の合間の共演者との話で刺激を受けるといい、特に「ドラゴン桜」のときは原健太役を演じた細田佳央太さんと話す機会が多く、“メラメラした思い”を共有できたという。「(細田さんは)メラメラした人なんですが、僕も一応、こう見えてメラメラしている人なので(笑い)。そういうところを共有できたし、こういう思いの人がほかにもたくさんいたんだな、と知りました。ドラマが終わってからも連絡をとっていますし、10話の放送のときはビデオ通話をしながら一緒に見ていました」と明かす。
爽やかで柔和な物腰だが、内には“メラメラ”した気持ちを秘めている鈴鹿さん。それは、同年代の俳優に対してではなく、「自分に負けたくない」という思いからくるものだという。「人それぞれに負けたくない対象があって、たとえば同世代で集まったとき、ほかの人たちに負けたくないという人もいると思いますが、僕は“自分に負けたくない人”で。『できないんじゃないか』とか『あ、やばいな』と思うシーンがあったときに、『もっとできる、もっとできる』という思いで演じています」と熱い思いを口にする。
そうした熱い気持ちは、「MIU404」に出演したころから芽生え始めたという。「見てくださった人たちの反応が返ってきたときに、自分では『全然だめだったな』と思っていても、ほめられるときがあって。自分の中ではまだまだなんだけどな、と思うことがすごく多かったんです。それが納得いかなくて、そういう思いはずっとありました。『MIU404』でも全然できていなかったな、と思うことがあったけど『よかったよ』と言われることが多くて、自分の『全然だめだった』という思いと差があった」と鈴鹿さん。「でも、どれだけやっても満足はしないと思うので、どこまで(理想に)近づけるか……いろんな作品を見て『すごいな』と思うたびに、もっとできるようになりたいなと思う。いろんなものを見て、ちょっと経験を重ねて、メラメラし始めている感じですね」とほほ笑む。
そんなメラメラし始めた鈴鹿さんが、理想とする姿とは。最後に尋ねてみると、「いい歳のとり方をしてやさしい大人になれれば、いい俳優にもなれるんじゃないかなと思うので、人間的なところをよくしていきたいなと思っています。目標ではないけど、カッコいいなと思うのはトニー・レオンさん。あの渋さが欲しくて(笑い)。30年後か40年後か分からないけれど、歳をとったときにああいう醸し出すものがあればいいな、と思います」といつもの爽やかな笑顔で語ってくれた。
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