ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
原泰久さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「キングダム」の第3シリーズ。同作で音楽を担当するのが、「機動戦士ガンダムUC」「進撃の巨人」などで知られる澤野弘之さん、「Re:ステージ!ドリームデイズ♪」などのKOHTA YAMAMOTOさんだ。澤野さんの音楽は、思わず心をつかまれるような“澤野節”ともいえる特徴があり、澤野さんは「キングダム」の音楽について「ザ・エンターテインメントの作品。音楽でよりエンターテインメント感を強調したい」と話す。二人に音楽制作の裏側、アニメの劇伴へのこだわりを聞いた。
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澤野さん 元々、原作者の原さんが僕の音楽を聴いてくださっていて、絵を描く時に「機動戦士ガンダムUC」(澤野さんが音楽を担当)のサントラを聴いているという話も聞いていたので、いつかご一緒できればという思いがありました。今回「キングダム」の第3シリーズが始まるということで、原さんが僕の名前を挙げてくださったので、ぜひやらせていただければと。他の作品とのスケジュールもあり、全曲担当することが難しい部分もあったので、KOHTA君と共作という形でやらせていただくことになりました。
澤野さん おこがましいですが、彼も音楽的に進化していて、劇伴に対するアプローチが成長していくところを見ているのが楽しいですし、刺激にもなります。若い人たちが自分よりも面白い音楽をぶつけてくるという危機感を持ちながら、負けずに面白い音楽を作らなければというモチベーションにもなりますし、やりがいがありますね。
YAMAMOTOさん 澤野さんとご一緒させていただくのは、すごくありがたいことですし、担当される作品も壮大な世界観を持っているものが多いので、音楽も一曲一曲作りがいがあり、熱量を持って臨むことができます。今回の「キングダム」もそうですが、澤野さんはいつも「こちらが作る楽曲は気にせず、自分が表現したい音楽を作ってほしい」と言ってくださる。作品としてどんな音楽を付けたら面白くなるかを自分なりに解釈して、毎作品制作させていただいています。
澤野さん 僕は、壮大で、物語的にも抑揚があるエンターテインメント作品の音楽を作ることが多く、「キングダム」も「ザ・エンターテインメント」の作品だと捉えているので、音楽でよりエンターテインメント感を強調することを意識しました。また、作家としては原さんが自分の名前を挙げてくださったことが一番重要で、原さんが聴いて「おっ!」と思えるような音楽を作りたいという思いがありました。
澤野さん 作る時のテンション的にいろいろなサビができてしまったというところはあるのですが、それが最終的にストーリーとリンクしたのならよかったなと。原さんと対談させていただいた時に「この作品の絵を見たら、この曲を思い出す」ような印象に残るメロディーがほしいというお気持ちがあったと聞きました。「機動戦士ガンダムUC」の音楽もメロディーを際立たせて作ったので、そういったものを求められているのかなと。印象的なシーンで音楽が流れたら、そのシーンを忘れないぐらいの曲になればと、突き詰めて曲を作っていきました。
YAMAMOTOさん 「キングダム」の世界観的にも、何十万対何十万という戦いを描いているので、ハリウッド映画を見た時に感じるような壮大さ、広さを音楽で表現したいと思いました。また、僕は「キングダム」を大人っぽい作品と捉えたので、最近のハリウッド映画で主流となっている、メロディーを立たせずに大人っぽく聞こえる音楽でアプローチをしたいと考えました。澤野さんの「KINGDOM-DUE」のメロディアスな音楽とは、別のアプローチになっていますが、結果的に差が出てよりよいのかなと。
YAMAMOTOさん 分かりやすくメロディアスな旋律があるというより、少し淡々としているというか、音数もそんなに多くなくて、リフのようなイメージ。ただ、サウンドのアプローチで格好いい音楽を作って印象づけていく。
澤野さん 極端に言うと、歌抜きのカラオケのような感じですね。最近のハリウッドの映画は、主メロをオフにしたカラオケに近くて、基本的に後ろのリフやサウンドなどで構築している。今回は僕が数曲作って、大半はKOHTA君が作るという分担だったので、KOHTA君が作る上で、ハリウッド的なアプローチは絶対あったほうがいいと思っていました。そこがより大人っぽく見える演出だったり、メロディーがなくても作品の抑揚に寄り添う部分になるだろうなと。僕が作るメインテーマとのバランスを自然に取ってくれたのだと思います。
YAMAMOTOさん 原先生がマンガを描かれている時にリズムがイメージとしてあって、マンガの中にも太鼓をたたくリズムが「ドドドドッドッド」と書かれています。ただ、文字を読むだけだと、人によって受け取り方が違うということで、先生がカメラでマンガの場面を映しながら、口でリズムを「ドドド」と取ってくださっている動画をいただきました。その通りに音を打ち込んで楽曲を作りました。
澤野さん 今までにはないことですね。
YAMAMOTOさん 初めてのことだったので新鮮でした。原先生が送ってこられたリズムが変拍子で、普通のポップスで多用されるようなリズムとは違うものだったので、すごく面白いなと。自分が何もない状態で汗明音頭を作っていたら、あのリズムにはしなかったかもしれないと思うと、原先生の世界観があっての「キングダム」なんだと、より感じました。
YAMAMOTOさん 作品の世界観をくみ取って、そこから大きく外れないようにとは毎回考えますが、世界観に寄り添うだけでは、音楽的につまらなくなってしまう可能性もあります。音楽によるプラスの作用がより大きくなったらいいなと常に思っています。エゴと思われるかもしれませんが、格好いいシーンがより格好よくなるように、音楽として自分が一番格好いいと思うものを当てる。あとは、最新で作ったものが、自分としても一番気に入っていると思えるように作ることを心がけています。
澤野さん 自分の特徴を伝えたいわけではなくて、常に作品のエンターテイメント性を上げられるような音楽にしたいということで取り組んでいます。正直「キングダム」もそうですが、物語がしっかりしている作品は音楽がなくても成立するんです。でも、作るからには「この音楽はなんだ?」と興味を持ってもらえるような印象に残る音楽でありたい。大事なのは視聴者がいるということで、そこに向けて、何かしら引っかかるポイントがある音楽を作るということを絶対忘れちゃいけないと思います。
澤野さん メロディーもそうですし、使っている楽器で違いを出すこともあります。また、僕はボーカルを多用することが多いのですが、歌の声は楽器よりも聴く人が「なんだろう」と思うものだったりするので、引っかかりとして入れるのも重要かなと。
澤野さん インストゥルメンタル(楽器だけで演奏された曲)でも、音楽にフィーチャーした使われ方をすれば興味を持たれるとは思うのですが、アニメではせりふ、効果音がある中で音楽が流れるので、物語に集中している人は聞き流しがちになってしまう。その中で歌が入ると、一瞬気を取られるというか。普段、世間の人たちが聴く音楽の大半は歌の曲が多いと思うので、ボーカルを入れたほうが引きつけられやすいと考えています。その音楽をきっかけにサントラを聴いてもらって、インストの曲も面白いんだと思ってもらえるのが、一番僕が求めていることでもあるんです。
「キングダム」は、2006年から「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の人気マンガ。中国の春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍を目指す信の活躍や、後に始皇帝の名で知られるようになる秦王・えい政ら英雄たちのドラマを描く。第3シリーズは、NHK総合で毎週日曜深夜0時10分に放送。
サウンドトラック「TVアニメ『キングダム』 -合従軍編- Original Sound Track」が発売中。CD3枚組で、澤野さん、YAMAMOTOさんによる劇伴67曲収録。価格は4180円。
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