沢口靖子&内藤剛志:「科捜研の女」シリーズで長年共演 「家族という感じ」と思い語る 長く続けても「飽きるということがない」

映画「科捜研の女 -劇場版-」で榊マリコを演じる沢口靖子さん(左)と土門薫役を演じる内藤剛志さん
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映画「科捜研の女 -劇場版-」で榊マリコを演じる沢口靖子さん(左)と土門薫役を演じる内藤剛志さん

 女優の沢口靖子さん主演のドラマシリーズ「科捜研の女」(テレビ朝日系)の映画「科捜研の女 -劇場版-」(兼崎涼介監督)が9月3日から公開される。同シリーズは沢口さん演じる主人公の法医研究員・榊マリコら「科捜研」メンバーが科学を駆使し、内藤剛志さん演じる土門薫刑事らと共に数々の難事件を解決する姿を描いた20年以上続く人気作で、今回が初の劇場版だ。これまで共演者として長い年月を共に過ごし、“家族”のような関係性という沢口さんと内藤さんに、劇場版や同シリーズへの思いなどを聞いた。

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 ◇映画化は「夢のよう」

 「科捜研の女」は、京都府警科学捜査研究所、通称「科捜研」の法医研究員・榊マリコが、法医学、化学、文書鑑定などの専門技術を駆使して、現場に残された遺留品から研究所の仲間たちと事件の真相に迫る姿を描く人気ミステリードラマシリーズ。映画は、マリコら科捜研メンバーが、現代最新科学では絶対に解き明かせないトリックを操る“シリーズ史上最強の敵”となる天才科学者・加賀野亘(佐々木蔵之介さん)に立ち向かう……という内容。

 1999年にスタートし、20年以上続けてきたドラマシリーズの初の劇場版。沢口さんは「まさか『科捜研の女』が映画化されるとは思ってもいませんでしたので、夢のようなお話だと喜びました。集大成の気持ちで取り組みたいと思いました」と映画化への思いを明かす。劇場版には、マリコの父・榊伊知郎役の小野武彦さんや、マリコの元夫・倉橋拓也役の渡辺いっけいさんなど、ドラマシリーズで活躍したキャラクターも続々と登場。懐かしい顔ぶれとの現場での再会に、沢口さんは「お会いしたときは懐かしくて、うれしい気持ちになりました」と笑顔を見せる。

 一方、土門刑事としてはシーズン5からの参加となった内藤さんは、ドラマの放送開始時は家で見ていたといい、「『なんで渡辺いっけいがこんなにきれいな人の旦那なんだ、ふざけんな』と思っていました(笑い)。20年たって、やっと会いました。『こいつか!』と……」とユーモアたっぷりに笑う。劇中では、マリコ、土門刑事、倉橋のスリーショットも実現したといい、「そこは楽しみにしていただきたいなと思います」と沢口さん。内藤さんも「倉橋と土門のどっちがマリコに似合うのか……ぜひスリーショットを楽しんでいただければ(笑い)」と楽しそうに話す。

 今作は、佐々木さん演じる天才科学者・加賀野亘と、マリコと土門刑事との対峙(たいじ)が大きな見どころだ。同じく科学に携わる者であるマリコを演じるうえで、沢口さんは「同じ科学者としてリスペクトする気持ちを持ちながらも、『あなたの考えは危険なんだ』という気持ちを伝えたいと思いました」と演じていた思いを回顧。内藤さんは、「マリコと土門はタッグを組んでいるけど、攻め方が違う。科学に関して対決するのがマリコで、『人としてそれでいいのか』という感情面は刑事側が受け持つ。僕はその感情の方で蔵之介に向かいました」と振り返る。

 ◇俳優同士としては「肉親的な感じ」

 マリコと土門として共演し、長く苦楽を共にしてきた沢口さんと内藤さん。改めて、お互いの印象を聞いてみると、内藤さんについて「非常に知識が豊富で、お話もすごく楽しくて、音楽や司会の才能も多彩。同じ大阪の出身なので、ざっくばらんで話しやすい方でもあります」と沢口さん。「すごく長いお付き合いです」と感慨深い表情で語る。

 一方、沢口さんについて、内藤さんは「全然変わってないです。初めて会ったときからほとんど変わっていない。逆に、それがすてきだと思います」。沢口さんが22歳のときが初対面だったといい、「僕が32歳のとき。それからもう付き合いは長いですけど、印象は変わらないです、まったく変わらない」としみじみと明かしつつ、「『さびしかったら電話しろ、飯でも食おう』と言っているけど、1回もかかってこない。そういう人です(笑い)」と冗談めかして語り、隣の沢口さんを笑わせる。

 こうした気の置けないやり取りも、長い年月で培われた関係ならではのものだろう。そこで、役者としての2人は、お互いにどのような存在なのかと聞いてみると、「兄妹でも夫婦でも恋人でもない。あえて言うなら“家族”という感じですかね」と内藤さん。「俳優同士として、個人の沢口さん、内藤という意味で言えば、肉親的な感じがあるような気がしますね」と語り、沢口さんも「距離の近さ、ということでは、そうですね」と同意する。

 ◇マリコは「1年に1度帰る場所」 土門は「憧れの男」

 ドラマは1999年の放送スタートから20年以上続き、解決した事件の数は250を超える。これだけ長い期間にわたって同一のシリーズを作り続けるうえで、2人が心がけていることは何だろうか。沢口さんは「この作品に限らずかもしれませんが……」と前置きしたうえで、「アスリートと同じで、体調管理に気を付けながら、心身ともにベストコンディションを維持できるように心がけています。朝はどんなに早くても朝食を食べ、体を温めて、頭と体を起こしてから現場に入るようにしています」とルーティンを明かす。

 一方、「毎回新しい気持ちでいる、ということに気をつけています」と取り組む姿勢を語る内藤さん。「『昨年もやったからこう』ということはないんです。もちろん阿吽(あうん)の呼吸でやれるところはありますが、台本をいただいたときにいつも『面白い』と思いたい。『10年、20年やったから……』という思いはないんですよ。常に新しい気持ちでチャレンジしないといけない、と思っています。これは2人で話していることですが、『飽きる』ということはないんですよね」といい、沢口さんも「毎シーズン、ストーリー展開が複雑になっていますし、ハードルが上がっていますよね(笑い)。おのずと新鮮な気持ちになっています」とうなずく。 

 同シリーズが長年愛される理由について、沢口さんは「科学と人間を丁寧に、緻密に描いているところ」を挙げる。「最新の科学で事件が解き明かされていく面白さ……。そこに人間の弱さや愚かさや未熟さ、そして愛(いと)おしさが描かれている。そこにが共感が得られ、長く愛されている理由かなと思っています」とほほ笑む。内藤さんもそうした人間味あふれる描写を理由に挙げ、「実は、科学の部分を取ると、ものすごい人情話なんですよ。どなたが見ても『私もそう』と思える。そこじゃないかなと思う。科学だけじゃ、そうはならないから」と力説する。

 長く続けてきたことで、2人の関係も「微調整ができた」と内藤さんはいう。内藤さんはシーズン2で駆け出しのプロファイラー・武藤要として初参加し、シーズン5から土門薫を演じているが、当初は今のような形ではなかったと振り返る。「みなさんからいろんな意見をいただいて修正してできたのが、今のマリコと土門の関係。初めは(マリコとは)『VS』でしたから。そこからどうやっていくかをスタッフのみんなと決めて、今の形になったんです。長くやらせていただいたから、微調整ができた。それはとても幸せだったと思います。マリコも変わって、僕も変わった。役では、始めはけんかばかりしていましたから。ずいぶん変わりましたね。それはみんなのおかげだと思っています」としみじみと語る。

 最後に、「科捜研の女」という作品とマリコ、土門というキャラクターは、2人にとってどのような存在なのか聞いてみると、沢口さんは「私にとって分身のような存在であり、1年に1度共に年齢を重ねて、1年に1度帰る場所、という感じでしょうか」とにっこり。内藤さんは「土門という男は、僕の中で“憧れの男”なのかなと思うんです。絶対に逃げない。理想を演じているわけだけど、『自分もそうであればいいな』と、自分の前を走っている人のような気がします。みなさんにとってもそうであってくれればうれしいですね」と語ってくれた。

※榊はきへんに神 兼崎監督の崎はたつさき

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