映画トロピカル~ジュ!プリキュア:「ハトプリ」コラボの裏側 絶妙なバランス 志水淳児監督に聞く

「映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!」のビジュアル(C)2021 映画トロピカル~ジュ!プリキュア製作委員会
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「映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!」のビジュアル(C)2021 映画トロピカル~ジュ!プリキュア製作委員会

 人気アニメ「プリキュア」シリーズの第18弾「トロピカル~ジュ!プリキュア(トロプリ)」(ABCテレビ・テレビ朝日系)の劇場版最新作「映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!」(志水淳児監督)。「トロプリ」と2010~11年に放送されたシリーズ第7弾「ハートキャッチプリキュア!(ハトプリ)」の2世代プリキュアがコラボしたことが話題になっている。スタッフ、声優陣を取材する中で「トロプリ」「ハトプリ」の相性のよさについて語る声を多く聞いた。相性はいいかもしれないが、制作は一筋縄ではいかないはず。志水監督にコラボの裏側を聞いた。

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 ◇コラボは難しい?

 「トロプリ」のモチーフは「海」「コスメ」で、テーマは「今一番大事なことをやろう!」。小さな島で生まれ育ち、春から都会の中学校に通う中学1年生の夏海まなつらが、やる気パワーを奪おうとするあとまわしの魔女と戦う。「映画トロプリ」は、プリキュアたちが雪の王国・シャンティアを救うために戦う姿を描く。

 「映画トロプリ」を手がける東映アニメーションの伊藤志穂プロデューサーに取材した際、「トロプリ」と一番合う作品として「ハトプリ」とのコラボを決めたと話していた。一方で、コラボは「難しいかもしれない……」と感じたことも明かしていた。「ハトプリ」は、「おジャ魔女どれみ」シリーズでも知られる馬越嘉彦さんのキャラクターデザインが魅力の一つだ。「プリキュア」は、作品によってデザインが異なるが、その中でも「ハトプリ」は、個性が際立っている。バランスが難しそうだが、志水監督は「何とかなるかな?」と考えていたという。

 「『ハトプリ』は2本ほど演出を担当しましたが、分からないこともあります。作品の特徴をうまく落とし込んでいこうとして、細かいところを調べ直しました。確かに、デザインは、ほかのプリキュアとは異なり、線や影も違います。ただ、これまで『オールスターズ』もやってきたので、何とかなるかな?と。そんなに難しいことではないんですよ。『マジンガーZ』などもやってきましたし、おいしいところを抽出すれば、何とかなるだろうと思っていました」

 志水監督は2009~10年放送の第6弾「フレッシュプリキュア!」のシリーズディレクターを務め、2012年公開の「映画 プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち」、2015年公開の「映画 プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪」なども手がけてきた。それだけでなく「ONE PIECE」のシリーズディレクター、2018年公開の「劇場版 マジンガーZ/INFINITY」の監督を務めるなどさまざまな作品を世に送り出してきた。

 これまでのさまざまな経験があるからこそ、「そんなに難しいことはない」という言葉が出てくるのだろう。総作画監督の上野ケンさんら信頼できるスタッフの存在も大きかった。

 「上野さんは『ハトプリ』『トロプリ』の両方を担当していますし、それぞれの特徴をつかんでいるので、できると考えていました。上野さんとは付き合いも古いですし、全面的に信頼しています。映画に向けて、キャラ表を作り直すこともあるのですが、今回は上野さんにお任せしました」

 ◇みんなが登場する意義を

 2世代、9人のプリキュアのそれぞれに見せ場がしっかりあるなどバランスのよさも魅力だ。「トロプリ」のローラと「ハトプリ」の来海えりかという個性の強いキャラクター同士のやり取りも楽しめるなどポイントを押さえつつ、絶妙なバランスで成立している。歴代プリキュアが集結する「オールスターズ」を手がけてきた志水監督の手腕によるところも大きいのだろう。

 「それぞれに十分なせりふがあり、この子がこのせりふを言わないと話がつながらない……というように作りました。みんなが登場する意義を考えていました。特にローラとえりかの関係は丁寧に描こうとして、そこは時間を掛けて見せています。ローラは初見では勘違いをされて、嫌な子にも見えるかもしれませんが、本当はいい子なんですよね。嫌な子に見えないようにすることも考えていました。えりかとローラは、ささいなことでけんかになりますが、ちゃんと仲直りします」

 「映画トロプリ」は、歌も重要な要素だ。ラストに向けて歌が物語を盛り上げる。2世代プリキュアの共演、歌以外にもバトル、ローラの成長、雪のプリンセスのシャロンの思いなど見どころはたくさんある。バランスよく全ての要素が絡み合っている。

 「みんなで踊るわけではなく、合唱するのは、これまでのエンディングダンスとは違います。静かに見せようとしました。ストーリーの中で歌が重要なので、シンプルに歌を聴かせることを考えていました。ただのハッピーエンド、予定調和で終わるよりも心に残るものにしたかった。謎の奇跡が起きて、めでたしめでたしにはしない。テレビシリーズとはまた違う切なさがあってもいいのかな?と思っていました」

 これまでも「プリキュア」シリーズを手がけてきた志水監督は、その魅力を「女の子たちが集まって、一つのことに向かって頑張る姿を見せたい。頑張ればその先にいいことがある。そこを子供たちに感じてほしいです。自分の作家性を見せるわけではなく、特定の層に向けたアニメというわけでもなく、教育番組の一環でもあると考えています」と語る。

 「映画トロプリ」では、明るく楽しいだけではない「トロプリ」の魅力も深掘りされた。改めて「プリキュア」シリーズの奥の深さを感じられるはずだ。

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