女優にモデル、映画監督、歌手と幅広く活躍する池田エライザさん。映画「真夜中乙女戦争」(二宮健監督、2022年1月21日公開)では、「King & Prince」の永瀬廉さん演じる主人公がひそかに恋心を抱く“先輩”役で出演。りりしく聡明(そうめい)だが同時にもろさも抱えている、不思議な魅力を持つ女性を演じている。女優に映画監督、歌手と精力的に活躍の場を広げている池田さんに、今作で演じた“先輩”役について、そしてさまざまな分野で挑戦し続けていることへの思いなどを聞いた。
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映画は10、20代から支持を受けるFさんの同名小説(KADOKAWA)が原作。つまらない日々を過ごす大学生の“私”(永瀬さん)は、人の心を一瞬で掌握してしまう謎の男“黒服”(柄本佑さん)と出会い、生活が一変。2人は廃虚に作った映画館で他愛のないいたずらを繰り返していたが、徐々に激しさを増し、すべての退屈を破壊する「真夜中乙女戦争=東京破壊計画」に着手する……というストーリー。
池田さん演じる“先輩”は、永瀬さん演じる“私”が恋心を抱く「かくれんぼ同好会」の先輩で、クールなまなざしと優しげな笑みのギャップをみせる、不思議な魅力を放つ人物。池田さんはそんな“先輩”を演じるうえで、真っ白な状態で撮影に臨んだという。「クランクインするまで、何も決めませんでした。“先輩”は、この『真夜中乙女戦争』の中の世界で人と出会って影響を受け、いろんな思いを募らせて行動している子。だからまっさらな状態で、本番のスタートがかかってから、目の前の情報だけで素直に影響を受けようと思っていました」と振り返る。
りりしく聡明な“先輩”だが、池田さんは演じる中で「もろい」という印象を受けたという。「自分がどう見られているか、ということに対して、ちょっと嘲笑している部分があるのが“先輩”の人間らしいところだと思うんです。演じていて感じていたのは、もろい、ということ。もろい足場にきれいなものを積み上げて、その積み上げた部分をかっこいいとかきれいとか、周囲に言ってもらっている。本人は今にも崩れそうなんですけど、あきらめずにちょっとずつ土台を固めてもいる。いい意味であきらめの悪い人。『ヒーローになりたい』と言える人。だからまぶしいんだと思います」と印象を明かす。
さらに、矛盾を抱えた人間性が“先輩”の魅力だと分析。「自分の行動と感情が常に矛盾していて、そのバランスで成り立っている。誰かに手を差し伸べるのは、自分が救われたいから。誰かの前で美しくあろうとするのは、自分を醜く感じているから。常に極端な二つの自分の間にいる。それが魅力でもあり、見ている方に深く共感してもらえる部分でもあると思います。そして、情けない部分が少しずつ出てきて、情けなくなればなるほど、どこか美しくなっていく……という新しい矛盾が生まれてくる。それが、演じていて不思議でした」と役への思いを語る。
池田さんが今作の話を聞いたのは、コロナ禍の前のことだった。だがその後コロナ禍となり、脚本が何度も更新された。池田さんは最後にあがってきた脚本を読んで、ある思いを抱いたという。
「カオスな雰囲気は、コロナ禍より前からどことなく漂ってはいたけど、まだプツンと糸が切れる前だったんですよね。張り詰めてはいたけど、まだ、みんなが真っすぐ立てていると思っていたところでコロナ禍になって、糸が切れて、考えることや向き合うことがつらくなる時代になったと思います。この作品も撮影延期になりましたが、監督が何度も脚本を更新して、最後の脚本に『これには参加したいな』と思わせてくれる力があったんです。それが、今の『真夜中乙女戦争』。(コロナ禍の)今なら、みんなの心にすっと浸透するんじゃないかな、と感じて挑みました」と当時を振り返る。
現在は女優、モデルのみならず、映画監督、歌手などの顔も持ち、幅広い活躍をみせている。だが池田さんは「そんなに華々しいことではないんですよね」と笑い、自身の活動を“工場”にたとえる。
「ひとつの工場で違う作業をしているけど、生産するものは一緒、という感じです。高校生のときに、工場で派遣のバイトをしたことがあって。そのとき、それぞれの分担があることに気づいたんです。段ボールを組み立てたり、製品の良し悪しをチェックしたり。でも、みんなで作り上げたいものは一緒。そういう感覚に近いです」
行動の根底にあるのは、「何か役に立ちたい」という思いだ。「同じ工場の中で、自分にできることがあるならばやりたい、何か役に立ちたい、とは思っています。たとえば環境に対してもそうだし、一緒にこの時代を生きている方に対してもそう。『自分のために何かしよう』というのが苦手で、『何かを成そう』とか『こうなりたい』というのがないんです。『みんなで作る』というのが好き。前に立つのは、苦手です」と話す。そんな思いも持ち合わせているからこそ、“工場”池田エライザが生み出す表現は無二の輝きを放っている。
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