ドラゴンボールDAIMA
第10話 ウナバラ
12月16日(月)放送分
「攻殻機動隊S.A.C.」「東のエデン」などで知られる神山健治監督が手がけるWOWOWの新作長編アニメ「永遠の831」が、1月30日に放送・配信される。同作は“未曽有の大災厄”により混迷を極める現代で、“時間を止める力”を持った青年と少女がある犯罪に巻き込まれていく姿を描いた作品。主題歌「ひとひらの未来」を音楽ユニット「angela(アンジェラ)」が、オープニングテーマ「キンギョバチ」をシンガーソングライターのカノエラナさんが担当する。angelaのボーカルのatsukoさんとギターのKATSUさん、カノエラナさんに今作の楽曲に込めた意図や、アニソンへの思いなどを聞いた。
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「永遠の831」は、WOWOWの開局30周年を記念して制作。“未曽有の大災厄”により混迷を極める現代を舞台に、“時間を止める力”を得た主人公・浅野スズシロウが、同じ“力”を持つ少女・橋本なずなと出会い、 彼女が犯罪に利用されていると知り、衝動的に手を差し伸べる……というストーリー。神山さんが監督、脚本を手がける。スズシロウの声を声優の斉藤壮馬さん、スズシロウと同じ“力”を持つ女子高校生の橋本なずなの声をM・A・Oさんが演じる。
カノエラナさん(以下、カノエさん) 「まじか、めっちゃうれしい」と思いました。お会いするのは初めてだったので、決まったときからドキドキで、何をしゃべろうかな、みたいな感じでした。(初対面して)すごく暖かくて……私が緊張しているのをほぐしてくださって、ありがたいなと思いました。
atsukoさん カノエさんがTikTokに力を入れてらっしゃるということで見させていただいたら、いろんな方のカバーもされていて。私、アコースティックギターを始めて半年ぐらいなんですが、カノエさんはギターがうまいので「どれぐらい練習したら、これぐらい弾けるようになるんだろう」と思いました。カバーも、ちゃんと自分の個性を出しているので、「どんな曲でも歌いこなすんだな、おそろしい子!」と思いました。「ラナ、おそろしい子!」って(笑い)。
カノエさん (笑い)
KATSUさん 「永遠の831」の世界観をしっかり捉えていて、「あ、これは安心だ」と思いました。「名前を売ってやろう」とか「楽曲を有名にしてやろう」という思いで曲を書いている人じゃないな、と分かったので。我々はこれから作品を背負っていかなければいけなくて、カノエさんはキングレコードから初めてリリースする作品ということで、これからずっと「永遠の831」という作品名が出る。そういう意味では、我々はタッグなんです。心配は正直ありましたが、しっかりとオープニングしていて、楽曲としてすごく立派だな、と思いました。安心して僕が本編に導入されました(笑い)。
カノエさん 音楽が入っていないので、間のようなものがあるんです。そこで「登場人物が次はなんて言うんだろう」とか、めちゃくちゃいろんなことを考えて見ていました。脚本を読んでいるので内容を知ってはいるんですけど、「(せりふを)リアルに発すると、どういう言葉が出てくるんだろう」という新しいドキドキ感があって。そもそもアニメ作品を見ることがすごく好きなので、めちゃくちゃ没頭しました。そしてエンディングで初めて主題歌を聞かせていただいて、鳥肌が立つ……という感じでしたね。
atsukoさん お話は知っていても、キャラクターたちの心情がそのキャラの声で表現されていると、全然伝わってくるものが違いましたね。カノエさんの楽曲は前もって聞かせてもらっていたんですが、映像を見たときにオープニングに曲が入っていて、「あ、こういうふうに入るんだ」と。エモーショナルな、とがっている楽曲がすごくいいなと思いました。とがりつつも、ちゃんと考えられている。ただ自分の怒りをぶちまけるのではなく、考えられた感情がきれいにリズムとメロディと言葉とハマっていてすばらしいなと思いました。
KATSUさん 作中では、コロナの問題だったり選挙の問題だったり、現在起こっていることをテーマにしていて……少し前には、みんながコロナ禍で抱えているストレスを選挙にぶつけているような面もあったじゃないですか。そういう今の現実の描き方がしっかり組み上がっている上に、スズシロウ君というキャラクターの描き方がほかのアニメにはない丁寧さだな、という感想を持ちました。
◇意識したのは「季節を変えるサウンド」
KATSUさん atsukoさんが脚本を先に読んで、世界観の説明から聞いてしまったんです。そのときに作った楽曲は、今の曲とはまったく違っていて、もっとシンプルなカントリーやブルースのような感じでした。そのあと僕も一気に脚本を読んで、「この話を完結させる方法ってなんだろう?」と思ったんです。みんなにメッセージを問いかける作品、という意図が受け取れたので、物語を完結させる方法がひとつだけあるならば、「永遠の831」というタイトルにある8月31日ではなく、季節を変えることだな、と。それが最初の取り掛かりでした。
KATSUさん そうですね。季節を変えるサウンドって何なんだろう、と考えて。まず、スズシロウ君が冒頭で新聞配達をしている風景を楽曲に落とし込みたいという思いがあったんです。楽曲を聞いたとき、朝の暗い中に出て、青い空から朝日を浴びて街が夕日に輝くまでの時間を冒頭に入れたいと思いました。そしてサビで急に季節が変わった、と感じられる楽曲って何かな、と。その前の段階で、「831」をどうやって「春」という季節にもっていくか考えていて。春は、日本人にとっては門出や一歩踏み出す入学を感じるワードですよね。だから「桜舞い散る」というワードが歌詞に入っている部分を利用させてもらって、春を感じられるサビにしたいと思いました。
atsukoさん シナリオを読んで景色がすごくきれいだった箇所があるので、そういうところを歌詞で、場面が見えるように意識しました。あと、はじめはちょっと後ろ向きな歌詞で、監督から「もうちょっと前向きな未来が感じられるものがいいです」とオファーをいただいたので、言葉尻などをちょっとずつ変えながら、「(主人公が)一歩を踏み出すところまで書き込んでいいのかな、書いちゃえ!」と自分の中で落としどころをつけました。
カノエさん 私は歌詞と曲が同時進行で生まれるタイプで、台本を見ながら、登場人物の過去など「ここはすごく重要になるだろうな」というところに、まずたくさん付箋をつけて、そこから歌詞の組み立てをどうしようかと考えました。皮肉表現や比喩などの言葉遊びも含めて、いろいろ楽しめるところがあるなと思いながら、パズルみたいに曲を作っていったんです。一番共感したのが主人公のスズシロウ君で、怒りの感情が一番強いので、曲に落とし込むとき「少し攻撃的になった方がいいのかな」と、ボーカルもいつもより刺々(とげとげ)しい感じにしたり、少しかすれさせて歌ってみたり、いつもとは少し空気を変えています。「これ、誰に対して問題提起しているんだよ」という、ただひたすらの怒りのようなものを込めて作りました。
KATSUさん デビューしたときはこんなにアニソンブームではなかったし、カノエさんみたいに「アニソンが歌いたいんです」という人もいないに等しい時代。だから今の、新しい人たちが自分たちのメッセージをダイレクトにぶつけている時代は、アニソン業界や日本の文化としてめちゃくちゃいいことだし、財産だと思っています。今はコロナ禍で世界に出るのは難しいですけど、この「永遠の831」は神山さんの作品ということで、ヨーロッパやアメリカでも期待している人は多いはず。そういう世界に発信するものを、これから10年、20年と作っていきたいな、という思いはあります。水木一郎さんや堀江美都子さんがベースを作ったこの“アニソン”というものを、そのままカノエさんたち下の世代にも「これがアニソンなんだよ」と正しい形で伝えていけたら……というのがこれからのangelaの使命だと思います。
atsukoさん 18年、19年やってきてもまだ正解が分からないし、毎回、作品の楽曲を書くときは悩むし、もがくし、あがきます。時代はどんどん変わっていくので、はやっているものに寄り添っていくのか、違うラインでいくのか……常に考えていますね。エンタメってやっぱり若い方の方がとっつきやすいという印象があるんですが、そんな中で新しいお話をいただけると、「まだ我々に楽曲制作をお願いしてくださるんだ!」という感動がいつもある。「若い方を育てた方がいいんじゃないですか?」とも思うんですが、「angelaさん、お願いします」と言っていただいたら、絶対裏切れないし、中途半端なことはできない。そういう覚悟がより強くなっていて……だから正直、怖いです。怖いけど、いろんなものをインプットして、今どういうものが受け入れられるのかと考えつつ、angelaらしくありつつ、変化しつつ、進化していきたいと思っています。
カノエさん 小さいころからずっと、歌手になることではなく「アニメソングを絶対に歌う」というのが夢。活動を始めてまだすごく短いし、足りないことだらけで、「もう前、前しか見えない!」みたいにもがいている状態なんですけれども、根っこはずっと変わらないです。今回の作品に対しても、もう本当に前しか見えない状態で書いていて。これから先どうなるか分からないですけど、自分自身の思いというのは絶対に強いものだと思っているので、いろんな作品に関わらせていただいて、自分自身も成長していきたいと思います。
「永遠の831」は2022年1月30日午後8時にWOWOWプライムで放送、WOWOWオンデマンドで配信される。
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