押井守監督:「こんなにたたられた映画は初めて」 お蔵入り寸前「血ぃともだち」語る

「血ぃともだち」の初日舞台あいさつに登場した押井守監督
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「血ぃともだち」の初日舞台あいさつに登場した押井守監督

 アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「機動警察パトレイバー」などで知られる押井守監督の実写映画「血ぃともだち」の初日舞台あいさつが2月5日、テアトル新宿(東京都新宿区)で開催された。同作は、2020年4月に公開予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で4度も公開を延期。お蔵入り寸前だったが、上映を待ち望むファンの声を受けて、この日、一夜限りで上映されることになった。撮影が始まったのは2018年3月で、押井監督は「こんなにたたられた映画は初めて」「いろいろなことがありまして」と語り出した。

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 「血ぃともだち」は、押井監督、本広克行監督、小中和哉監督、上田慎一郎監督が参加する映画レーベル「Cinema Lab(シネマラボ)」の作品。私立来栖学園高校の献血部の4人の女子が、人間を襲うことができない落ちこぼれバンパイア・マイと出会い、献血の代わりに自分たちの血でマイを養うことを決意する……という展開。女優の唐田えりかさん、尾碕真花さん、天野菜月さん、日比美思さんが4人の主人公を演じる。

 撮影で苦労が多かったといい「あれだけ切迫した現場は初めて。私は現場では怒らない主義だけど、ブチ切れた。とにかく時間がない。ロケ地が片道2時間半と遠い。泊まるお金もない。女の子がみんな若くて、午後8時までしか撮影できない。高校生の学園ものの映画を実年齢でやろうとしたのが運の尽きだった」と明かした。

 主人公を演じた4人について「明らかに違う人間なんだよね。異文化という言葉があるけど。リドリー・スコットという監督は、異文化をテーマにしてきた。『ブラック・レイン』『エイリアン』もそうだった。異文化をめぐる葛藤を映画にした。女子高生の世界は、異文化じゃないか?と捉え直した。女子高生という異文化とどう付き合うか?をテーマにしようとした。中盤で一シーンだけど、自分たちで撮影してもらった。スマホで好きに撮影させた。ここはぜひ見てほしい。私が一番気に入っているシーン。いろいろな方法があると改めて思った。あの表情は、僕らでは絶対に撮れない。だからといってスマホで映画を撮るのは難しいかもしれない」と語った。

 一夜限りではあるが、上映されることになり「映画に対する恩返しのつもりで作った。アニメーションで稼がせてもらった。最近はそうでもないけど(笑い)。できるだけのことをやろうとした。いつも僕が撮ってきた映画と違うんです。普通の映画です。深く考えても無駄です。女の子たちをいかに生き生きと撮るか、生命感を忠実に撮ろうとした。ひねりまくった映画とは違う。僕の狙いは、とにかく監督人生で、一回だけ若い役者さんを素直に撮ろうとした。何とも言いようがない。いつもだったらひねくれた言い方をするけど」と思いを明かした。

 この日は、押井監督が企画に携わった劇場版アニメ「BLOOD THE LAST VAMPIRE」(北久保弘之監督)も同時上映された。

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