放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
ついにクライマックスに突入した連続ドラマ「ファイトソング」(TBS系、火曜午後10時)。本作で落ちぶれたミュージシャンの芦田春樹を演じている俳優の間宮祥太朗さん。間宮さんは、2021年1月期に同枠で放送された「オー!マイ・ボス!恋は別冊で(ボス恋)」で報われぬ“ドS先輩”中沢涼太を演じており、どちらも視聴者から反響を呼んでいる。同じ“火10”枠でもおおよそ異なる役どころを作り上げた間宮さんについて、今作を手がける武田梓プロデューサーは“繊細な演技”を魅力に挙げる。そんな武田さんに「“火10の間宮”がなぜいいのか」深掘りしてみた。
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「ファイトソング」は、耳が聞こえなくなるかもしれない病気を抱えたヒロイン・花枝(清原果耶さん)、落ちぶれた一発屋の変人ミュージシャン・芦田、ヒロインをいちずに思い続ける幼なじみ・慎吾(菊池風磨さん)の不器用な3人の姿を描くヒューマンラブストーリー。
バンド「PARKS」のメンバーとして「スタートライン」をヒットさせたものの、それに次ぐ結果を残せず、すっかり落ちぶれて鬱々とした日々を送っていた芦田。マネジャーの伊達弓子(栗山千明さん)から「あと2カ月で結果を出せなければ出て行ってもらう」とクビを宣告された矢先、「スタートライン」をずっと大切にしてくれている花枝と運命の出会いを果たす。そして、花枝と新曲を作るための「取り組み」としての恋を期間限定で始めた。
芦田といえば、心が動く瞬間に素直に反応する純粋なところが魅力的だ。第6話の遊園地デートでは、恋人が隣にいない寂しさを味わうべく、一人でジェットコースターに乗車。乗り終えて花枝のもとに戻ってくるなり、まるで歌詞を紡ぐように思いを次々と口にしていく姿も印象的だった。
そんな芦田について、武田さんは「“キャラクター感”みたいなものがすごくあるので、あまりリアルになりすぎてもよくない。エンターテインメントとしてのキャラクターと、リアルな人物像の両方をしっかり演じられる方じゃないといけないかなと思っていました」と語る。「間宮さんはそのどちらもできる印象があるので、そこは芦田という役をやっていただいて助かっている部分です」と明かした。
本作では間宮さんの歌声にも注目が集まった。芦田が花枝のために歌うシーンが描かれ、SNSでは「歌うますぎ」「きれいな歌声でびっくり」「間宮さんの声、耳が幸せすぎた」と話題になった。武田さん自身も驚いたという。
「楽器をやっていることも知っていましたし、朝ドラでも歌っていらっしゃったので、できない方ではないということは知っていて。芦田はミュージシャンですが、一発屋で今はもう売れていないので、正直、歌うシーンはなくても成立させられました。ただ、事前に歌声を聞きたいと思い、間宮さんにいくつかの歌をレコーディングしてもらったんです。聞いてみたらすごく声が良くて、歌もお上手だったので、これだったらいけると。それから、しっかり歌うシーンを作ることになりました」
武田さんと共にドラマを手がける岩崎愛奈プロデューサーも「視聴者の方と同じく、私たちもあの歌声の奇麗さに衝撃を受けました」と告白。「声質の良さに加えて、やっぱり俳優さんならではの表現力が歌に加わったので、すごく心を動かされました」と魅力を語った。
歌うシーンで特に印象深かったのは、第1話のピアノによる弾き語りだろう。花枝が「スタートライン」を大事にしてくれていると知った芦田は、自らの正体を明かさぬまま楽曲を披露。花枝は思わず涙を流す、という展開だった。まさにその場面は、武田さんが描きたかったものだったと明かす。
「間宮さん自身はギターが得意なので、ギターで歌うことも考えたのですが、ピアノだと女の子に背を向けて演奏することになる。それがすごくいいなと。不器用な男性が相手の顔を見ずに、それでもちゃんと背中を押してあげるというか、語りかけるような場面が作れる気がしました」
さらに、「歌に力をもらって頑張ることができた、みたいな経験は誰にでもあるんじゃないかと思って」と武田さん。“キャラクター感”のある作品だが、音楽に背中を押されるという点は視聴者が共感できるポイントだと考え、今回の題材に選んだことを教えてくれた。
本作は、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」などを手がけた岡田惠和さん脚本のオリジナル作品。武田さんは「放送を見た岡田さんから『このシーンが良かったです』みたいな感想もいただきます」と裏側を語る。
第3話では芦田がムササビのまねをして飛ぶ場面も登場した。現場で間宮さんが発明した動きだったというが、武田さんは「岡田さんがそれをすごく面白がってくださったのか、間宮さんに『もう1回やってほしい』ということで、第4話の台本にムササビのまねをするくだりが書いてあって(笑い)」と話す。
一方、岩崎さんは「岡田さんもスタッフもみんなムササビを気に入っているのですが、間宮さん本人はちょっと照れもあるのかなという印象で。たぶん意外と照れ屋さんなんだろうなと思うのですが……」と告白。「ムササビは、すべって気まずそうにしている芦田も含めて可愛いっていう(笑い)。そうなるように、動きとか、表情とか全て含めて、間宮さんが上手に作ってくれたのかな」と演技力を称賛していた。
前回の「ボス恋」では、報われない恋心を抱きながらも、いちずにヒロインを思い続ける中沢を好演した間宮さん。視聴者からも「間宮さんは目の演技でキュンとくる」「間宮くんが切ない目するから応援したくなる」「切ない表情の間宮祥太朗さん最高だな」といった声が上がっていた。
今作で1年ぶりの火10凱旋を果たした間宮さんについて、武田さんは「とにかくせりふがなくても、表情や目で繊細な感情を表現するお芝居がとても魅力的」だとほれ込む。
「ラブストーリーにおいて、せりふ以外の部分で見ている側に感情が伝わってくるというのはすごく重要ですし、今回の芦田も、せりふが一言だけとか短いものが多いのですが、その中でもかなりのインパクトを残しているのは、間宮さんのそんなお芝居あってのものだと思います」と信頼を寄せた。“火10の間宮”の魅力を最後まで楽しんでほしい。