アイナ・ジ・エンド:「あんまり好きではない」自分の声が好きになる瞬間 「SING/シング:ネクストステージ」で声優に挑戦

劇場版アニメ「SING/シング:ネクストステージ」の日本語吹き替え版に声優として出演するアイナ・ジ・エンドさん
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劇場版アニメ「SING/シング:ネクストステージ」の日本語吹き替え版に声優として出演するアイナ・ジ・エンドさん

 映画「SING/シング:ネクストステージ」(ガース・ジェニングス監督、3月18日公開)の日本語吹き替え版で声優を務める人気グループ「BiSH」のアイナ・ジ・エンドさん。同作で演じるのはオオカミのポーシャ。わがままで無邪気な性格で、演技は下手だが歌の才能がある……というキャラクターだ。今回声優に挑戦したアイナさんは、普段の自身の声は実は「あんまり好きではない」と吐露するが、好きになれる瞬間もあるという。アイナさんに自身の声への思いやアフレコのエピソードなどを聞いた。

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 ◇ポーシャとは“パパにわがまま”なところが一緒

 「SING/シング:ネクストステージ」は、2017年に公開されてヒットしたミュージカルアニメ「SING/シング」の最新作。ニュー・ムーン劇場の支配人バスター・ムーンは、エンターテインメントの聖地レッド・ショア・シティでの公演を目指す。そのためにはオーディションに通過しなければならず、隠遁(いんとん)する伝説のロック歌手クレイ・キャロウェイを出演させるというアイデアを提案するが……というストーリー。

 今作への出演が決まり、「びっくりしすぎて、ドッキリかと思いました(笑い)」と当時の心境を明かすアイナさん。4歳のころからダンススクールに通い、中学校からはミュージックスクールに通うなど「とにかく歌とダンスが大好きな子供」だったといい、「明るめな『SING/シング』が大好きだったので、うれしいを通り越して『私でいいんですか?』という気持ちになっていました」と語る。

 前作を鑑賞した際は、ゾウのミーナ役を演じたMISIAさんの歌に「心を持っていかれすぎちゃった」と衝撃を受けたという。「放心状態で、お風呂に入らなきゃいけないなと思ったんですけど、入れないんです。『こんな世界あるんだ……』と。見た後は本当に楽しい気分になって、あれほど希望がいっぱい体になじんでくる作品はないな、と思うぐらい楽しめました」と振り返る。
 
 そんな感動を受けた作品の続編で、声優に挑戦。アフレコでは、前作を鑑賞していたことが助けになったという。「身を委ねられました。音響監督の三間雅文さんのご指導がとても情熱的で的確だったこともありますし、拙いところがあるのは初めてだから当たり前だと思って『もうやるしかない』と。だから自分で感じるままにやってみよう、と思いました。それは『SING/シング』を見たから。本当に見て良かったですし、経験させていただけてありがたいです」と喜ぶ。

 声を担当したポーシャは、エンタメ界の重鎮であるジミー・クリスタルに甘やかされて育った、天真らんまんでわがままなキャラクター。アイナさん自身も父親に対してはわがままな面があるといい、演じるうえでそんなわがままな気持ちを引っ張り出したという。「私は普段は猫を100匹かぶるときもありますし、素直になれないときもあるんですけど、家族にはわがままです。特にパパには『学校まで送ってー』なんて言っていた学生時代もありますので、ポーシャとは『パパに対してわがまま』なところが似ています(笑い)。最近はお父さんと会えておらず、ずっとわがままな自分を封じ込めていたので、ポーシャを演じるにあたって引っ張り出してきました、わがままな気持ちを」と笑う。

 「ポーシャの映像がずっと目の前にある状態で、口や眉毛の動き方も決まっていて、そこに声を当てていくので、自分のペースでしゃべらないところが難しかったです」とアフレコでの苦労を語るアイナさん。一方、楽しんで演じることはできたといい「後悔なくやり切れたし、映画館で見るのが本当に楽しみなんですけど……『もっといけたな』と反省するのが自分の常なので、また反省しだすと思います」と振り返る。

 劇中では歌唱シーンもあり、「普段歌っているので、歌の収録はリラックスできると思っていたんですけど、いざレコーディングブースに入ると画面にポーシャが映っていて、ポーシャがずっと歌っているんです。アイナが歌っている感覚じゃない、というか……最初は戸惑ったんですけど、ポーシャが満面の笑みで自信に満ちあふれた表情で歌うので、引っ張られて自分も自信が出てきたり、いつもより少ないテークで絶対いける、と思えたりしたんです。ポーシャのおかげで、自分の歌も明るみが増しました」とポーシャへの思いを語る。

 ◇「歌は生きがい」 今後も“歌える役”に意欲

 今回、声だけで演技する経験をしたアイナさん。普段は「BiSH」で歌声を披露しているが、自分自身の声については「あんまり好きではない」と打ち明ける。ただ、歌っているときのある瞬間はそうでもない、とも言う。

 「『BiSH』のメンバーになってから、声については、いろんな人からいろんなことを言われるようになって。好きも嫌いも、いっぱい耳にする機会が増えたんです。私は、相変わらずあんまり好きではなくて。ただ一瞬『波動が出る瞬間がある』と自分では信じていて。『この歌は、どこかの誰かには必ず響いた』『もう、これは絶対誰かに伝わった』と思う瞬間があって、そのときの声は好きです」

 そう、声への思いを明かすアイナさん。「しゃべっているときも、ずっと人と目を見て話せなかったり……自分の声に対する、自信がないという意味で。ただ、歌うとそういうのが一切なくなるので、不思議です。なんか二重人格みたいな気持ちですね」と、面白そうに語る。

 今回の経験を通して、自分の声に新たな発見もあった。「監督が、的確で情熱的な指導をしてくださったので、自分の中のキャパが広がったというか……『あ、自分、こんな声も出せるんだ』とか『自分の息遣いって、こういうふうにもなるんだ』と。監督にとてもたくさん教えていただいたので、自分の声がより好きになってきました」と充実感をにじませる。今後の声の仕事についての意欲を聞くと「歌える役でしたら、ぜひやりたいですね。やっぱり歌は生きがいですので、歌えるとうれしいです」と前向きな思いを話す。

 現在は多忙な日々を過ごすアイナさんだが、そんな中で、仕事の空き時間が貴重な息抜きのときだという。「空き時間は、よく古着屋さんに行きます。空き時間が自分の休みって感じです」と現状を明かし、最後に「オフの時間は寝たいです。まず寝られるだけ寝て、ハンバーガーとかピザとか食べて。YouTubeを見て、映画を見て……ヨガとかとは程遠い休みを過ごしたいです」と笑いながら理想の過ごし方を明かしていた。

 ◇プロフィル

 アイナ・ジ・エンド “楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー。天性のハスキーボイスとエモーショナルなパフォーマンス、表現力が高く評価されている。2021年2月3日に本人の作詞作曲による全12曲を収録した初のソロアルバム「THE END」をリリース。ソロ活動を本格化させ、初のソロツアーは全公演即日完売。2021年9月から3カ月連続でのリリースを発表し、11月24日にセカンドアルバム「THE ZOMBIE」をリリース。3月17日には、大阪城ホールで単独公演「AiNA THE END “帰巣本能”」を開催した。

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