劇場版「からかい上手の高木さん」:「せりふなきせりふ」 西片の成長を丁寧に描く 赤城博昭監督が語る魅力

「劇場版『からかい上手の高木さん』」の一場面(C)2022 山本崇一朗・小学館/劇場版からかい上手の高木さん製作委員会
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「劇場版『からかい上手の高木さん』」の一場面(C)2022 山本崇一朗・小学館/劇場版からかい上手の高木さん製作委員会

 山本崇一朗さんの人気マンガを原作とした劇場版アニメ「劇場版『からかい上手の高木さん』」(赤城博昭監督)が6月10日に公開される。テレビアニメ第1期がスタートしたのは2018年で、人気を受けて第2、3期も放送され、ついに劇場版が公開されることになった。「高木さん」は、中学生の淡い恋、日常が描かれており、大きな事件が起きるわけではない。それでも、アニメの世界に引き込まれ、ずっと見ていたくなる。赤城監督に「高木さん」の魅力、劇場版について聞いた。

 ◇高木さんが可愛いだけではない! 西片を大切に

 「からかい上手の高木さん」は、「ゲッサン」(小学館)で連載中のマンガで、恋愛に奥手な中学生の西片が、学校で隣の席の高木さんにからかわれる日常を描いている。テレビアニメ第1期が2018年1~3月、第2期が2019年7~9月、第3期が2022年1~3月に放送された。

 「高木さん」は、キャラクターが大きな魅力の一つになっている。西片をからかう高木さんは、小悪魔的な魅力があって可愛いが、それだけではない。からかわれる西片の存在も重要だ。

 「高木さんが可愛いというのはもちろんあるのですが、西片くんの成長を描こうとしてきました。西片くんをただのいじられキャラで終わらせず、成長を描こうとしています。高木さんの笑顔は、西片くんだけに見せる表情です。そのリアクションを大切にしています。高木さんを愛するようになる西片くんを大切に描いていこうとしています」

 高木さん、西片、2人を取り巻く人々の日常を描いていて、大きな事件が起きるわけでもない。

 「西片くんは、意外と高木さんにクリティカル(不意にキュンとさせること)を食らわせているんですよね。第1期の最後にしてもそうです。しかし、西片くんとしては、高木さんがそう感じているとは思っていない。あそこがうまくいったというのが、僕たちとしても成功と感じていて、それが続ける原動力になったところもあります」

 ◇高橋李依、梶裕貴の魅力

 独特のテンポ感、間も魅力になっている。

 「間は、すごく大事ですね。大地丙太郎監督に教わったことですが『せりふなきせりふ』の表現を大切にしています。原作は、ショートエピソードが多く、すごくテンポ感があります。ただの無言というわけにはいかないので、例えば、背中、表情などでしっかり伝えないといけないことがあります。そこを計算しつつ、表現しています」

 独特のテンポ感が生まれるのは、高木さん役の高橋李依さん、西片役の梶裕貴さんの演技によるところも大きい。

 「今回の映画もそうですが、西片くんの成長を描いていて、梶さんは、そこをすごく丁寧に演じていただいています。彼自身が原作ファンということで、すごく思い入れがありますしね。高橋さんは、高木さんが確かにそこにいる!というのが見えるんですね。本人は、元気でハキハキしていて、高木さんとは雰囲気が違うのですが。収録が終わった後、『お疲れさまです!』と元気に言われると、『あれ、高木さんはどこにいった?』となるんです(笑い)」

 ◇日本的な恋愛を

 「高木さん」は、ショートエピソードの積み重ねが基本となっている。劇場版アニメとして成立するのか?というのも気になるところで、赤城監督は「映画でも間を大切にしていて、間は尺が必要です。約70分なのですが、尺としてちょうどいい長さなのかもしれません。そんなに大風呂敷を広げようとはしていません」と話す。

 「高木さん」らしさを大切にしつつ、大画面を生かした美しい映像を楽しめるのは、劇場版ならではの魅力だ。

 「(本作の舞台である小豆島の伝統行事である)“虫送り”の夜のシーンは幻想的な雰囲気がありますし、映画ならではのエッセンスも入っています。虫送りのシーンは、『八日目の蝉』(小豆島がロケ地の映画)を見て、すごくすてきだったこともあり、今回描きたかったところです。お祭りのシーンは、テレビでは作画のコストの問題もあって、なかなか難しいところがありますし、映画で描かせていただきました。ただ、ただ、映画だから!という気負いはなく、これまでシリーズで通してきたものを描きながら、終着点を描こうとしました」

 赤城監督は、劇場版を制作する中で、「高木さん」の魅力を「恋が芽生える淡い時間、2人の慎ましい性格が魅力的で、日本的な恋愛の雰囲気を描けるところ」と改めて感じたという。確かに「高木さん」の“間”は日本的なところもある。

 「夏に2人の心に刻まれた出来事を描いていて、一つの終着点でもあります。夏になるとこの映画を思い出すような、すてきな思い出になればうれしいです」と話すように、いつまでも見ていたくなるような作品になっているようだ。

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