“楽器を持たないパンクバンド”「BiSH」のメンバーが主演を務めるオムニバス映画「BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK'N'ROLL」が6月10日から公開される。映画では6人の監督とタッグを組み、ドラマ作品からアート作品まで、作風の異なる6作品でメンバーそれぞれが主演を務めている。その中の1本である「オルガン」(エリザベス宮地監督)で主演を務めたアユニ・Dさんに、演じた思いや撮影エピソードなどを聞いた。
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「オルガン」はアユニさんがエリザベス宮地監督と組んで主演を務める作品。アユニさん演じる“あーこ”の兄の竜一は、「山に行ってくる」と言って遠くへ去っていった。山小屋に向かったあーこは、竜一が撮った一枚の写真と自分宛ての手紙を見つけ……というストーリー。写真家の石川竜一さん、俳優の高良健吾さんも出演する。
今作で兄と仲の良い主人公・あーこを演じるアユニさん。主演の話を聞き、当初は不安な気持ちが大きかったという。「正直、怖かったです。『えっ、できるかな』という不安が第一にありました。演技経験もなければ、当時は『演技してみたい』という思いも特になかったので、自分にできるかどうか、不安が多かったですね」。ただ、メガホンをとった宮地監督を含め、今回参加した監督が「今まで本当に『BiSH』を愛してくださって、近くにいてくださった6人の監督」だったため、安心する気持ちもあった。アユニさんは「精いっぱい努めるぞ、と前向きな気持ちになりました」と語る。
演じるあーこは「アユニ・D以前の私と、結構リンクしているキャラクター」だった。それゆえ、「素直に、自分と向き合っている感覚がありました」と撮影当時を振り返る。自分自身を見つめ直す作業がそのまま役作りとつながっており、「『自分になりきっている』というか……。『私って、どういう指の動きをしていたっけ?』とか『どういう言葉の間の置き方をしていたっけ?』ということを見つけなきゃいけなくて。普段は意識していない部分の輪郭をはっきりさせなきゃいけないことが難しかったですね。それは、自分を見つめる機会にもなっていたのかなと思います」とほほ笑む。
そんな自分自身を演じるようなあーこ役だからこそ、宮地監督がアユニさん自身に寄り添ってくれたことが助けになった。「宮地監督はドキュメント映像もたくさん撮っている方だし、おそらくうそ偽りのないものが好きなんだろうなと思うんです。きっとリアルなほど描き出すのが上手な方なので、私ができなかったシーンがあると、宮地監督は『あーこだから、こう』ではなく、私自身の話を聞いて、お話ししてくださって……。パーソナルな部分にすごく寄り添ってくださいました」と感謝の思いを口にする。
劇中では、あーこが抑えていた感情を爆発させるシーンもある。アユニさんは「難しかったです」と笑い、「私はうまくできないので……やっぱり俳優さんが喜怒哀楽をコントロールできるのは、本当にいろいろな特訓を積んで、たくさん時間をかけて、たくさん考えているからなんだろうなって感じました」と感嘆。同時に、当初はあまり興味がなかった女優の仕事に対する意欲も芽生えた。「やっぱり楽しかったので、演技は機会があればやりたいな、という野心はすごくあります。まったくの別人にもなってみたいし、喜怒哀楽を操る技を習得したいと思っています(笑い)」と前向きな思いを明かす。
そんなアユニさんに改めて映画の見どころを聞くと、「生き方に戸惑う瞬間ってたくさんあると思う。そういうものと向き合う姿勢の、背筋を伸ばしてくれるような作品でもあるなと思ったので、見てくださる方々にも『生きていくことと、どう向き合っているのか』というようなことを考えてもらうきっかけになれば、すごくうれしいですね」と語った。
今作の撮影について「自分が生きてきた中でも、すごく大きく残る時間だったと思います」と、貴重な経験になったことを明かすアユニさん。演技の仕事への興味も高まっている中、「もし次に演じられるなら?」と聞いてみると「ホラー映画で“怖がる人”がやりたいです。すぐ死ぬ人(笑い)」とどこか楽しそうに打ち明ける。
また、演じることについては「声優さんのお仕事をやらせていただく機会があって楽しかったので、声が独特な、すっごいぶりっ子の女の子とか、頑張ってやってみたいです」と声の仕事に対する興味もちらりとのぞかせる。
BiSHとして活動しながら、多方面への意欲を示すアユニさん。BiSHは2023年をもって解散することを発表しているが、解散するその日まで、アユニさんはどのような挑戦を続けていくのか。
「終わりが見えたからこそ、『本当に今、1秒1秒を大切にしなきゃ』という思いは大きくなっています。BiSHとしてまだまだ立ちたい場所や出たいものがあるから、今まで通りがむしゃらに、一生懸命、1日、1日を過ごしていきたい、貪欲に生きていきたいなと思っています。今の自分は表現者としてもまだまだなので、表現という部分で、もっともっとBiSHに向き合っていきたい。感謝と愛をもっともっとたくさん口に出して伝えにいきたいという一心です」と話していた。
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