大島司さんの人気サッカーマンガ「シュート!」が原作の新作テレビアニメ「シュート!Goal to the Future」が7月にスタートした。「シュート!」は、1990~2003年に「週刊少年マガジン」(講談社)で連載され、テレビアニメ「蒼き伝説シュート!」が1993~94年に放送。約28年ぶりの新作テレビアニメとなり、元イタリア名門チームの“世界の闘将”神谷篤司と、神谷の出身校で今は弱体化した掛川高校に通い、サッカー部と距離を置こうとする辻秀人が出会い、新たな伝説の幕が上がる。主人公の辻秀人役の小林千晃さん、秀人と中学時代までコンビを組んでいた野間田高校サッカー部の小久保公平役の土屋神葉さんは、いわゆる「シュート!」世代ではないが、作品が持つ熱量に魅了されたという。小林さん、土屋さんにアフレコの様子、新作への思いを聞いた。
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小林さん 主人公の田仲俊彦(トシ)が高校に入学してサッカー部に入ったら、練習もろくにさせてもらえなくて、まずは仲間から認められるというところから始まる。ただ、自分一人の力だけでは認められなくて、サッカーから離れていた中学時代の仲間の平松和広と白石健二が駆け付けて、高校でまた一緒にやっていくという展開が「このシンプルさがいいな」「熱いな」と感じました。しかも、トシたちの精神的支柱だった久保嘉晴の「幻の11人抜き」というサッカーマンガの歴史にも残るようなシーンを描いた後に亡くなってしまう。当時、もしSNSがあったら絶対に“久保ロス”が起きていただろうなって。そんな物語の勢い、メリハリ、熱さがすごいなと思いました。
土屋さん 前作のアニメは、そうそうたる方々が声優をやられていて、熱量がすごいなと思いました。芝居の力、原作のシンプルかつ本当に力強いメッセージがあって、本当に魅力的で、すごく胸にくるものがありましたね。
小林さん 久保タイプの選手じゃなかったんだよね?
土屋さん そう、全体を見られるような選手じゃなかったから(笑い)。足は早かったから、とりあえずボールを持っていくんだけど、チームメートがついてこないんですよ。正直なところ、孤独でした。だからサッカーを辞めたようなもので。
小林さん 一人じゃ勝てないからね。
土屋さん だから、「シュート!」で描かれているチームワークだったり、ぶつかり合いながら絆を深めていく人間関係の描き方がすごくすてきだと感じました。そういうコミュニケーションは小学生ではなかなか難しいから、僕みたいに壁にぶつかった小学生はぜひ「シュート!」を読んでほしいなと思います。
小林さん 原作の「シュート!」では、「なにくそ!」と真っすぐに突き進むキャラクターが多かったんですけど、秀人は結構うじうじしていて「どうせ俺なんて」と思っている。でも、ここぞという時にサッカーをやりたい思いや悔しい思いをバネにして、ちょっとだけ勇気を持って頑張る。僕自身もそういうタイプなので、共感できるところも多かったです。
小林さん 高校生だから生意気な部分もあるけど、昭和の生意気とはちょっと違って、ちょっと強く言われたり、怒られたりすると、「なんだよ……」としょげて、その人から離れようとする。そういうところが妙にリアルで、演じる時は最近の高校生のイメージは大事にしつつ、試合中は「シュート!」の泥臭さみたいなものを出したかったので、決めるところは決めるというメリハリも意識しました。
土屋さん そうですね。オーディションを受けた時は、抜粋したシーンを演じたので、小久保の強烈さを感じることはなかったんです。僕は、等身大のキャラクターを演じることが多いので、オーディションでもそういう演技をしたんですけど、蓋(ふた)を開けてみたら、ものすごくキラキラしたキャラクターだったんです。
小林さん 自分の引き出しにないキャラクターが来た!と。
土屋さん そうなんです。僕はなぜオーディションに受かったんだと思うぐらい衝撃で。正直なところ、アニメで一番苦労したキャラクターかもしれないです。求められているものが最初は理解できなくて。スタッフの方とやり取りをして分かったのは、本当にユニークで感情の起伏が激しいキャラクターということでした。だから、監督に全てを委ねようと思いました。自分という小さな人間の中では把握しきれないキャラクターだったので、監督のディレクションに自分ができる限り寄せていくという方法で演じさせていただきました。
小林さん 小久保は天才だから、常人の感情の起伏、感情の流れとは違うんですよね。神葉が言った通り、そのキャラクターを作った方のニュアンスをくみ取って演じるのが一番大事だけど、それはすごく難しいことだと思う。僕から見ても神葉がすごくチャレンジしていたのは伝わってきました。
土屋さん アフレコで悪戦苦闘したことを通して、千晃くんとの絆、友情というか、関係性が深まったなという感じがします。
小林さん 僕も、神葉が普段使わないお芝居で表現する小久保の圧にゾッとしました。秀人にとって小久保は、一番会いたくない相手。そんな相手がすごい距離感で詰めてくる怖さが伝わってきて、僕も秀人としてトラウマを表現できました。小久保のいびつさを出してくれたなと。
土屋さん 千晃くんが演じる秀人は、鬱屈としながらも、やっぱり熱量がすごくて。試合中のアフレコの熱量に衝撃を受けました。
小林さん 原作も今回の新作でも、キャラクターたちが真っすぐ愚直に突き進む姿が描かれます。熱さがある。練習方法をとっても、もっと効率のいい練習があるんじゃない?と思う方もいるかもしれない。人間関係でも「こんなヤツがいるんだったら辞めちゃえばいいじゃん」と思うかもしれないんですけど、「シュート!」は面倒臭いことにしっかり向き合うところが魅力だと思います。何でも便利になっている現代だからこそ、いい意味でバカになって真っすぐに突き進むことも大事だなと改めて学びました。
土屋さん この作品の魅力は、キャラクターのユニークさを尽きるなと思います。「シュート!」という原作と地続きの物語というのも魅力です。今回はオリジナルストーリーでもあるので、見てくださった方の反応がすごく楽しみです。
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