キングダム:春秋戦国時代を描く理由 作者・原泰久が語る誕生秘話 気になるラストは?

「キングダム」作者の原泰久さん
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「キングダム」作者の原泰久さん

 中国の春秋戦国時代を舞台とした原泰久さんの人気マンガ「キングダム」(集英社)。俳優の山崎賢人さん主演の実写映画、テレビアニメなども人気で、実写映画第2弾「キングダム2 遥かなる大地へ」(佐藤信介監督)が公開されたことも話題になっている。春秋戦国時代は、今でこそ「キングダム」の影響もあり日本でも知られるようになったが、2006年の連載開始当初は、「三国志」で知られる三国時代などと比較すると、決して一般的とは言いがたかった。なぜ、春秋戦国時代にスポットを当てたのか? 作者の原さんに「キングダム」誕生の裏側を聞いた。

 ◇エイ政ではなく信が主人公になった理由

 「キングダム」は、2006年にマンガ誌「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載を開始。天下の大将軍を目指す戦災孤児の信と、後に「秦の始皇帝」となる秦の若き王・エイ政たちの活躍を描いている。コミックスの累計発行部数は9000万部以上。2012年にテレビアニメシリーズがスタートし、現在は第4シリーズがNHK総合で毎週土曜深夜0時に放送中。2019年には山崎さん主演の実写映画第1作が公開され、興行収入57億3000万円を記録し、同年の邦画実写作品の興行収入で1位になった。2023年2月には舞台化され、帝国劇場(東京都千代田区)で上演される。

 47歳の原さんは少年時代、ゲーム「三國志」(コーエーテクモゲームス)や、本宮ひろ志さんのマンガ「赤龍王」(集英社)の影響もあり、中国史に興味を持ったという。大学卒業後、サラリーマン経験を経て、マンガ家となり、連載作を模索する中で「もともとプログラマーとして働いていたので、マンガのテーマは、プログラマーものか、中国歴史ものの2択でした」と考えていたという。

 担当編集の後押しもあり、中国史をテーマにすることを決めた。最初に考えたのが、仙人がテーマのファンタジーマンガで、古代中国の神仙思想について調べている中で、司馬遷の「史記」にたどり着いた。

 「調べていくうちにどんどん面白くなった。この面白さはまだあまり知られていない。史記は歴史的な事実のみを記した端的な記述が多く、エンターテインメント的な自由な表現で肉付けできると思い、これで勝負しようと決心しました」

 「史記」を読んでいく中で惹(ひ)かれたのが、史上初めて中国を統一し、500年以上にわたり続いた戦乱の時代を終結させたエイ政(秦の始皇帝)だった。しかし、「キングダム」の主人公はエイ政ではなく、信だ。

 「初めは始皇帝を主人公と考えていて、幼少期の読み切りを描いたのですが、そこで信を引き立て役みたいな役割で出したんです。信のモデルの李信という武将を調べていくと、始皇帝からの信頼が厚かったと思われる記述があり、近しい関係なんじゃないか?と想像が膨らみました。王様が主役だと、戦場シーンを中心に描けないという事情もあり、だったら信を主人公でいこうと!(笑い) エンターテインメントの仕組みを作るために、王様(エイ政)との対比で、信を下僕出身という設定にして、王様と出会い、大将軍を目指すというストーリーになりました」

 しかし、三国時代などと比べると、マイナーな時代。「もっとメジャーな時代にしたらどうか?」という反対意見もあったそうだが、「良いものを描けたら独り勝ちできるな」と決意は揺るがなかったという。

 「史記」の端的な記述を読み解き、物語として発展させる。大変な作業にも思えるが、原さんは、その作業が「キングダム」を執筆する上で「一番好きなこと」と感じているという。「史記を読んで考えて、妄想する……。歴史との“つじつま”を合わせるのが一番好きなんです」と笑顔で話す。

 ◇なかなか人気が出ない時代も

 「キングダム」を初めて読んだ人が驚くのは「暴君」という見方の強い始皇帝を、革新的な名君として描いている点だろう。

 「連載が始まる当時、始皇帝の研究が進んできていて、暴君とはいえないエピソードも多々あるようだったんです。そういった研究の流れもありましたし、“反対に描く”と面白くなるというのは、エンターテインメントの常なので。それがハマってくれましたね」

 今でこそ大人気の「キングダム」だが、連載開始当初は人気になかなか火がつかない時代もあった。勝算はあったが、初めから順風満帆だったわけではない。

 「1980~90年代の少年ジャンプの影響を受けた世代なので、キングダムも“ひたすら前へ!”というテーマで描いています。主人公の信はめげることのない熱血漢ですよね。でも、連載当初は世界情勢的にもリーマンショックとかがあって、暗いテーマの作品が流行している時期でした。なかなか人気が出なくて、そこを乗り越えて、今、多くの方々に見ていただけているのはうれしいですね。めげずに頑張って良かったです」

 「キングダム」は多くの人をとりこにして、映像作品も人気を集めている。実写映画第1弾が大ヒットし、続編も制作されることになった。

 「ありがたいことに第1弾の時から、現場で『まだまだやりましょう!』とおっしゃっていただいていました。プロデューサーさんから、第2弾では、蛇甘(だかん)平原の戦いをやりたいと聞いて、僕自身、合戦ものが大好きなので、邦画で正面から合戦ものをやってほしい!とお返事しました。お話をいただいた時は、うれしかったですね。完成試写では、広大な平野で歩兵がズラッと横に広がって走り出す光景を見ただけでもう震えました。戦車は無理だろう……と思っていたら、実際に何台も躍動していて、ものすごい迫力で驚きました。劇場でぜひ見ていただきたい映画になっています!」

 ◇戦争を描く覚悟

 コミックス最新刊(65巻)の時点で、信やエイ政たちは、本格的な趙国との戦争に乗り出している。

 「侵略戦争をしているわけですし、なかなか描きづらいところではあります。歴史ものを描く上で、人類史から戦争はなぜなくならないのか?を考えなければとは思ってきました。現代の世界情勢も踏まえながら、覚悟を決めないといけません。信やエイ政たちは、500年続く戦乱の世を終わせるために戦っていますが、史実では結局、その後の時代も戦争は続いている。信やエイ政たちは間違っていたのか? その答えは、この物語を描き切ったときに見いだせるのかもしれません」

 今後、信やエイ政たちの戦いがどのように描かれるのだろうか? 以前、原さんは「80巻を目途(めど)に完結する」という構想を明かしていたこともあったが……。最後に気になるラストについても聞いた。

 「秦の中華統一がゴールです。巻数的には、最近では100巻ぐらいになるのかなって思っています(笑い)。どうすれば面白くかつ、うまくまとめられるのかは模索中です」

※山崎賢人さんの「崎」は「たつさき」

 

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