富野由悠季監督:“ガンダムの生みの親”の次作 「ヒミコヤマト」を構想 卑弥呼が戦艦大和を飛ばす!?

「Gのレコンギスタ」を手がける富野由悠季監督
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「Gのレコンギスタ」を手がける富野由悠季監督

 テレビアニメ「ガンダム Gのレコンギスタ(G-レコ)」の劇場版「Gのレコンギスタ」(富野由悠季総監督)の完結編となる第5部「死線を越えて」が、8月5日に公開された。「G-レコ」は、“ガンダムの生みの親”の富野監督が手がけるアニメで、2014年にテレビアニメの放送がスタートしてから約8年がたち、劇場版が第5部でついに完結を迎えることになった。富野監督には次作の構想があるという。タイトルは「ヒミコヤマト」。一体どんな作品になるのか? 富野監督に聞いた。

ウナギノボリ

 ◇やる!とは言えない

 富野監督に次作の話を聞こうとしたら「僕、いくつだと思う? 80歳だよ。あとは死ぬのを待っているだけ」と怒られた。

 「20年前と違って体も自由に動けない。この2、3年はちゃんと歩けなくなっているの。そんな人が次の作品なんて、できる? 順調にいってもシナリオに1年、コンテで1年、実際に作画すると3、4年かかる。全部で5年くらいかかる。85歳まで仕事ができる? コラボレーションしようとも思ったけど、失敗してるんです。結局、他人に渡せないんですよ」

 富野監督のこれまでの仕事を回顧、検証した初の展覧会「富野由悠季の世界」では「ヒミコヤマト」という作品の資料が展示されていた。富野監督は過去にも同作について語ったこともあったので「『ヒミコヤマト』を次作として進めているのでは?」と聞いてみた。

 「『ヒミコヤマト』はやろうと思ったけど、全然できないから一度やめた。忘れていたけど、『富野由悠季の世界』が始まった時、資料を全部出してくれというので、スケッチを渡した。これで公表したら、考えるかな?と思ったけど、考える気が全然なかった。『G-レコ』が終わりそうになった去年くらいから、ほかにないからやろうとした。もう1年以上たつけど、めどが立っていないから、やる!とは言えない」

 ◇男の思い込みを揺るがす物語を作りたい

 富野監督は「ヒミコヤマト」について「卑弥呼が戦艦大和を宇宙戦艦ヤマトみたいに飛ばしちゃうという話を作りたいわけ」と話す。突拍子もない構想だが、一体どんな作品になるのだろうか?

 「1年くらい前、本気になって、シナリオを書いてみたことがあったけど、制作進行の若い連中に『これダメ』と言われてしまった。動機付けを考えようとした時、一番問題になったのが、卑弥呼というキャラクター。卑弥呼を理解する必要がある。実を言うと、卑弥呼がどういう女性であるかはちゃんと書かれていない。卑弥呼には、知識があったと思うんですよ。1年前に、卑弥呼が知ってる知識が書かれた本を見つけたんです。大陸の歴史を総覧したような百科事典的な『淮南子』があって、卑弥呼は、そこに書かれているようなことを知っていたかもしれない。卑弥呼の教養論を考えていくと、人格が見えてくるだろう。そこは思いついたけど、いろいろな説もある。卑弥呼というのは役職名で何人もいたという説もあって、稲作が始まって、土地をめぐる争いがあって、男が支配しているとそういうことが起きたから女が支配するようになったという説もある。それと、戦艦大和の復活をつなげようとするけど、つなぎ方が分からない」

 卑弥呼の時代が舞台と思いきや、どうやら舞台は現代になるという。

 「バカ共に地球を任せておけない!と卑弥呼が現代に現れる。それで沈んでいた戦艦大和を飛ばすんです。戦艦大和は、もろかった。だからバラバラになってしまった。男の力でなんでもやろうとすると、沈んでしまう。男社会の問題を考えないといけない。このままでは地球がもたない。男の思い込みを揺るがす物語を作りたい。作りたいけど、作ることができるとは思っていない。今はこれくらいしか話せることがない。すみません」

 富野監督は80歳でも創作意欲が衰えることはない。「できるとは思っていない」というが、期待が高まる。

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