ダンダダン
第12話「呪いの家へレッツゴー」
12月19日(木)放送分
人気アニメ「ガンダム」シリーズのプラモデル(ガンプラ)が誕生した1980年から約42年たった。約42年でガンプラは多色成形技術を導入したほか、接着剤を使用せずに組み立てられるスナップフィット方式を採用するなど進化してきた。新作テレビアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のガンプラは、BANDAI SPIRITS(バンダイスピリッツ)が培ってきた技術の結晶によって、初心者に優しいだけでなく、コアファンをうならせるような“新しいガンプラ”に仕上がった。バンダイスピリッツの担当者に、開発の裏側を聞いた。
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「水星の魔女」は、第1期の放送が2015年10月にスタートした「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」以来、約7年ぶりのテレビアニメシリーズとなり、MBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”で10月2日から放送される。これまでテレビアニメシリーズが制作される度に、バンダイスピリッツはそれぞれのガンプラの「進化ポイント」を考えてきた。
「7年前の『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』では、MGシリーズのフレーム構造をHGシリーズに取り入れました。同作はガンダム・フレームという設定があり、作品の設定を基にガンプラにフィードバックしていったんです。『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』では、作品の設定に合わせて武器やパーツの組み換えが可能な新機構コアドッキングカスタムを採用するなどさまざまな進化ポイントがありました。『水星の魔女』も進化ポイントをどうするのか?を議論しました」
「水星の魔女」は、テレビアニメシリーズとしては初の女性主人公で、学園が舞台となることも話題になっている。これまでにない“新しいガンダム”を目指しているといい、アニメのスタッフを取材する中で「これまで『ガンダム』シリーズを見てこなかった若い人にも見てもらいたい」という声を聞いてきた。ガンプラもまた新規ファンの獲得、“新しいガンプラ”を目指した。
ガンプラは進化の過程で、ただ複雑化、先鋭化していったわけではない。例えば、2020年に誕生した「ENTRY GRADE(エントリーグレード)」シリーズは、“次世代のファーストガンプラ”がコンセプトで、ニッパー不要、塗装不要、シール不要で、簡単に組み立てることができるが、高いクオリティーを実現した。初めてガンプラに触れる初心者からカスタマイズを楽しみたい上級者まで幅広い層の支持を集めた。「水星の魔女」のガンプラも同シリーズのように広いターゲットに向けて開発した。
「『水星の魔女』が“ファーストガンダム”になる方がいて、この作品のガンプラが“ファーストガンプラ”になるかもしれません。今までガンプラに触れてこなかった方、ガンプラから離れてしまった方にも向けて、ENTRY GRADEの構造をフィードバックしつつ、ハイクオリティーなものを目指しました。パース数をなるべく少なくしているので、初心者でも組み立てることができますが、パーツの合わせ目がなるべく出ないようにするなどアニメの再現性も意識しています」
新規ファンの獲得を目指した一方、これまでのファンを切り捨てたわけではない。「色分け、塗装しやすい分割、パーツの抜き方なども考え抜いています」とコアファンをうならせるような商品に仕上げた。
主人公機ガンダム・エアリアルのガンプラ「HG 1/144 ガンダムエアリアル」、前日譚(たん)「PROLOGUE」に登場するガンダム・ルブリスのプラモデル「HG 1/144 ガンダムルブリス」は、インモールドパーツと呼ばれるパーツを採用したことも話題になっている。同パーツによって、胸部のシェルユニットの発光状態を表現した。
インモールドパーツは、フィルムに印刷された模様を射出成型の金型内に挟み込み、樹脂を射出することで、パーツ表面に絵柄を転写している……ということらしいが、少しイメージしづらいかもしれない。
「プラモデルの色の表現は、パーツを分けるかシールを使うかのどちらかになります。パーツを分けた場合、形状、大きさなどに限界がありますし、例えば、グラデーションなどの表現はできません。シールでもグラデーションの表現は難しい。インモールドパーツは、パーツ自体にインクジェット印刷を施すので、グラデーションの表現も可能です。『水星の魔女』のモビルスーツは、発光表現が特徴になっているので、作品の設定、プラモデルの技術が合致したこともあり、発光状態を表現できるインモールドパーツを採用することになりました。ただ、インモールドパーツを入れるかは最後まで悩みました。昔、SDガンダムの武神輝羅鋼でも採用したことがあったのですが、小ロットでの安定した再生産が難しいなどの課題がありました。今回、生産体制を整えることで、採用できました」
「HG 1/144 ガンダムルブリス」が8月に発売されると、可動域の広さもコアファンをうならせた。同商品に限らず、ガンプラは可動域も進化している。「アニメの再現を目指した」こともあり、アニメのようなアクションは「大体できるはず」という。
「可動域に関しては日進月歩でして、商品によって何を目指して可動域を広げるのか?を考えています。『水星の魔女』は、ビジュアルでガンダム・エアリアルが膝立ちをしていますが、ガンプラでもいかに格好良く膝立ちが決まるかを考えました。作品のメカ打ち(メカデザインに関する打ち合わせ)で、デザイナーさんと意見を交換して、可動域のラインを決めていきました」
ガンダム・エアリアル、ガンダム・ルブリスは、筋肉のように盛り上がった胸部、細い腰部、太い太ももなどのデザインが特徴。シールドがビットステイヴと呼ばれるパーツに分離し、バックパックなどに接続できるのも新しい。小林寛監督やメカニックデザインのJNTHEDさんらと議論を重ねながら、デザインを固めていったという。
「JNTHEDさんは『ガンダム』シリーズに参加するのは初めてで、ガンプラに関する先入観がなく、それがいい意味で新鮮でした。我々は、ガンプラはこうだろう……という固定観念もあるもので、JNTHEDさんとキャッチボールする中で、新たな発想が生まれてきたんです。発光表現にインモールドパーツを使うアイデアもキャッチボールの中から生まれてきました」
議論を重ねたことで、デザイン、可動性、ギミックなどをガンプラで再現できたことが分かる。ただ、「水星の魔女」でガンプラが急に進化したわけではない。バンダイスピリッツがこれまで培ってきた技術の結晶によって実現した。今後、どんな進化を遂げるのだろうか?
「『水星の魔女』に限らず、ほかのガンプラもそれぞれの商品でさまざまな仕掛けを考えています。ガンプラは急に進化したわけではなく、さまざまな技術の進化がある中で、技術をフィードバックしながら、進化してきました。近年は、組み立てやすさの進化を考えてきました。ただ、どこかで限界があるはずです。組み立てやすさの定義がまた変わってくるかもしれません。色、形状の表現なども含めてさまざまな方向で今後もさらなる進化を目指していきます」
バンダイスピリッツの挑戦はまだまだ続く。さらなる進化にも期待が高まる。
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