名探偵コナン 犯人の犯沢さん:“名手”大地丙太郎監督が語る 「ギャグアニメで大切なこと」

「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」の一場面(C)かんばまゆこ・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」製作委員会
1 / 5
「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」の一場面(C)かんばまゆこ・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」製作委員会

 青山剛昌さんの人気マンガ「名探偵コナン」のスピンオフが原作のテレビアニメ「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」が、10月3日深夜からTOKYO MX、読売テレビほかで放送される。「名探偵コナン」の犯人である正体不明の人物をシルエットで描いた“黒い人”(犯人の犯沢さん)が主人公という斬新かつ異色のギャグマンガが原作で、「おじゃる丸」「セクシーコマンド 外伝 すごいよ!!マサルさん」などで知られる大地丙太郎(だいち・あきたろう)さんが監督を務める。大地監督は“ギャグアニメの名手”とも呼ばれており、異色の「犯人の犯沢さん」をどう料理するのか?が注目を集めている。大地監督に制作の裏側を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇推理小説好きの大地監督 ずっとやってみたかった

 「犯人の犯沢さん」は、かんばまゆこさんによるギャグマンガで、2017年7月に「少年サンデーS」(小学館)で連載をスタート。舞台は「名探偵コナン」と同じく米花町ではあるが、「名探偵コナン」と違って、事件を解決するわけではない。大地監督は「名探偵コナン」に参加したことはないが、「ずっとやってみたかったんです」と話す。

 「やらせて!と言っていたんです。探偵ものが好きで、推理小説ばっかり読んでいたしね。やりたかったのですが、話がきたのが『犯沢さん』でした(笑い)。でも、こっちの方が僕らしいかな? 劇場版を何回か見に行っていましたが、まずはベースを押さえないといけないので『名探偵コナン』の第1巻から読み直しました」

 「名探偵コナン」は1994年に「週刊少年サンデー」(同)で連載をスタート。テレビアニメが1996年から放送されている超人気作であることは、説明不要だろう。大地監督は改めて「名探偵コナン」を研究する中で何を感じたのだろうか?

 「面白いですね。『犯沢さん』の元ネタになっているエピソードを中心にアニメを見直しましたが、普通に面白いので、元ネタじゃないものも見ました。改めて見直すと、松本清張や横溝正史などに近いトリックがあるんだけど、ならではの味があります。推理小説オタクじゃなくても、推理ができる。でも、ひねっている。『犯沢さん』は推理要素がないんですけど(笑い)」

 ◇一番おいしい使い方をしたメインテーマ

 「犯人の犯沢さん」の原作はギャグマンガだ。大地監督は「ギャグなので間をしっかり考えないといけません。『名探偵コナン』の本家をどう扱うのか?というのも考えたところです。最初はどのぐらい本家をいじっていいのかが分からなかったけど、探る中で分かってきました」と試行錯誤した。

 「名探偵コナン」といえば、大野克夫さんによるメインテーマがあまりにも有名だ。「どうしてもあのメインテーマを使いたかったんです。流れると、全部OKになる名曲です。名曲をちゃかすわけにもいかないので、一番おいしい使い方をさせていただきます。あれをギャグで使えるなんて、最高です。毎回出てきます。気持ちがいいんですよね」とリスペクトを込めて名曲を使った。

 「名探偵コナン」の世界をどれくらい踏襲するのかも気になるところだ。

 「本家の美術を持ってくればいいかな?とも思っていましたが、『犯沢さん』には『犯沢さん』の世界があります。推理しないですし、日常を描いたギャグですから、違うものです。やっているうちに別のものであることが分かってきました。本家を参考にしながらも、オリジナルで作っています。同じなのは、声優です。豪華キャストが一言だけしゃべっていたりします。声優、メインテーマ以外は同じところがないんです」

 声優といえば、人気声優の蒼井翔太さんが犯沢さんを演じることも話題になっている。犯沢さんは、真っ黒で、表情こそあるものの、性別も分からない。難役になりそうだが、蒼井さんの演技を「すごいです!」と太鼓判を押す。

 「蒼井さんは、中性的な役ができる人ですし、幅がすごいんです。別の作品でご一緒させていただいた時、僕が仮歌を歌って、こんな感じで……とお願いしたら、僕の歌にそっくりだったんです。びっくりしました。もう少し変えていいよ!とお願いしたら、すぐにそれもできた。完コピもアレンジも瞬時にできる。本当にすごいんです。彼ならきっとできる!と思ってお願いしました。犯沢さんは、主人公なのに正体が分からない謎の存在です。カットによって演技も変化します。しかも、ずっとしゃべっています。蒼井君には、自由にやってほしいとお願いしました」

 ◇ギャグアニメは間が全て

 大地監督は“ギャグアニメの名手”とも呼ばれ、これまで数多くのギャグアニメを手がけてきた。ギャグアニメを手がける中で何を大切にしているのだろうか?

 「間が全てです。アニメは役者、効果音、音楽など音を使えるのが武器です。笑いって怖いんです。笑ってもらえなかったら、おしまいですから。間が悪いと笑えない。思わず笑ってしまってほしいんです。バランスも大事です。やりすぎても笑えない。ふざけちゃいけないんです。チャップリンも言っていたことですが、全力が一番笑えるんです。本気でやらないといけない。泣くシーンでも本気で泣かないと面白くならない。笑わせようとしているのが見えちゃいけない。今回も犯沢さんが必死だから笑えるんです」

 「犯人の犯沢さん」でも、蒼井さんが真剣に犯沢さんを演じており、だからこそ笑えるという。

 大地監督は「名探偵コナン」を「ずっとやってみたかった」ということもあり、最後に「今後、『名探偵コナン』の監督をするなら?」と聞いてみた。

 「やっぱりこっち(犯沢さん)がいいかな(笑い)。満足しています。性に合っていますしね。でも、やらせていただけるなら本気でやります。ギャグありで(笑い)。『犬神家の一族』みたいな作品をやってみたいですね。市川崑さんが大好きなんです。どんな真剣なものにもギャグ入れてきますからね」

写真を見る全 5 枚

アニメ 最新記事