ドラゴンクエスト ダイの大冒険:全100話に魅力凝縮 シリーズ構成・脚本の千葉克彦が語る「言葉の強さ」「普遍性」

「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の一場面(C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 (C)SQUARE ENIX CO.,LTD.
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「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」の一場面(C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 (C)SQUARE ENIX CO.,LTD.

 人気ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの世界観、設定を基にしたマンガ「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」の新作テレビアニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」が10月22日放送の第100話「さらば!愛する地上よ」で最終回を迎える。1クール、2クールで終わるアニメも多い中、「ダイの大冒険」は2020年10月のスタートから約2年と長きにわたって放送されてきた。原作の連載が始まったのは1989年で、30年以上前ではあるが、普遍的な魅力があり、新作アニメは全100話でその魅力を凝縮した。シリーズ構成・脚本の千葉克彦さんに、同作の色あせない魅力について聞いた。

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 ◇素晴らしい原作をきちんと全うする

 「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」は、三条陸さんが原作、稲田浩司さんが作画を担当し、堀井雄二さんが監修。「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1989~96年に連載された。少年・ダイが、魔法使いのポップたちと魔王を倒すために冒険する姿が描かれた。1991~92年にもテレビアニメが放送されており、約28年ぶりにアニメ化されたことも話題になった。テレビ東京系で毎週土曜午前9時半に放送中。

 千葉さんは「新機動戦記ガンダムW」「ガンバリスト!駿」「人造昆虫カブトボーグ V×V」「ベイビーステップ」など数々のアニメの脚本を手がけてきたベテランだ。キャリアは約35年にもおよぶ。脚本を手がける際に大切にしていることは「ブレないこと。筋を一本通すこと」だといい、「ダイの大冒険」では「素晴らしい原作をきちんと全うすること」を考えていたという。

 原作のコミックスは全37巻で、全100話のアニメとしてまとめた。

 「原作は、番外編も含めると350話くらいになります。アニメは最初に『100話で』と言われ、入るのかな?とも思いました。週刊連載マンガは、原作2話分をアニメの1話にすることも多いんです。連載中のマンガの場合は、連載に追いつかないように、マンガを一コマも余さずに使うこともあります。今回は連載が終わっている作品なので、100話にまとめるために計算をしないといけませんでした。最初は、エピソードも切ろうか?とも考えたのですが、スタッフの多くから『切らないでほしい』という声が上がったので、何とか100話に詰めようとしました。実際には、コマとコマの間をつなげなくてはいけないシーンもあるので、詰めながら、足しているのですが」

 全100話は長いようで短い。ペース配分を考えながらまとめようとした。

 「シナリオに入る前に、大ざっぱに区切っていきました。終盤になって入りきらなくなるのは嫌だったので、最初の方のペースを早くしています。例えば、戦いが終わった後の余韻を少し減らしたり、説明の部分を削ったりしています。終わってみると、110話だとキレイだったかな?とも思いますが、100話もできたことがありがたかったです。もっと短ければ違うものになっていたと思います。圧縮はできるんです。過去作では原作7話分を1話にしたこともありますし。でも、面白いかどうかは別ですから」

 ◇一生懸命なキャラから出る魂の言葉

 「ダイの大冒険」の魅力の一つに「言葉の強さ」がある。その魅力は色あせることがなく、令和の時代にも心に響く。

 「原作のキャラクターの魅力だと思うんですね。敵も味方も一生懸命に生きています。だから魂の言葉が出てくるんです。そういうせりふが随所にあるから、心に残るんじゃないですかね。キャラクターの成長も魅力です。人間代表のポップなんか、普通の武器屋の息子が、すごく成長して、大魔王バーンにすごいセリフを吐くようになります。脇役なのかな?と思ったキャラクターにしても、しっかり存在感のあるキャラクターとして登場し続けます」

 敵キャラクターも魅力的だ。話題になったのが第73話「炎の中の希望」のハドラーの最期だ。

 「ポップの成長について語られることも多いですが、一番変わったのはハドラーだと思います。最期も格好いいじゃないですか。最期のエピソードは、エンディングを潰していましたが、シナリオではエンディングを潰してほしいとは言っていませんでした(笑い)。演出と作画で盛りに盛っていただきました」

 普遍性はあるが、約30年前の作品ということで、時代の変化に合わせてアップデートしたところもある。

 「今の時代に通じるのか?と最初は少し不安もありました。いわゆるコンプライアンスの部分は時代に合わせて変更しないといけませんでしたが、ストーリーは原作をそのままやるしかない。ただ、普遍的な話なので、何とかなると思っていました」

 今のマンガ、アニメにはない魅力もある。古いわけではなく、新鮮にも見える。

 「昔のジャンプにあった友情、努力、勝利というのを今やっているのは少ないですし、逆に目立つんじゃないかな?とも思っていました。最近の少年マンガを読んでいると、僕の感覚では仲間が死にすぎているんですね。『ダイの大冒険』は今の感覚だと、仲間も敵も死ななさすぎなのかもしれません。昔のマンガ、アニメは仲間を殺さないように戦おうとしていました。普遍的なものですし、時代の変化と共に変わったものがあったにせよ、友情、努力、勝利を打ち出した作品が今の時代にあってもいいと思っています」

 「ダイの大冒険」は、まさに不朽の名作だ。泣いても笑っても最終回。ラストを目に焼き付けてほしい。


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