機動戦士ガンダム 水星の魔女:どうして盛り上がっているのか 新規層を取り込めた施策と“自分たちのガンダム”への思い

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」はどうして盛り上がっているのでしょうか
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「機動戦士ガンダム 水星の魔女」はどうして盛り上がっているのでしょうか

 人気アニメ「ガンダム」シリーズの新作テレビアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」が話題を呼んでいる。放送時はSNSをにぎわせ、関連用語がトレンド入りすることもしばしば。話題になっている要因として、新規ファンの取り込みを挙げているアニメコラムニストの小新井涼さんが、今回の盛り上がりを分析する。

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 現在放送中の「機動戦士ガンダム 水星の魔女」が、放送を重ねるごとにその盛り上がりを増してきています。

 誰もが知っている有名タイトル「ガンダム」の最新作だけあり、それなりの人気が集まることはあらかじめ予想もされていたことでしょう。しかし今回の盛り上がりは、そうして長く続いてきた「ガンダム」シリーズの従来のファンのみならず、本作が初「ガンダム」であるという新たな視聴者層が次々に作品を追い始めていることも、かなり大きいようなのです。

 一体何がその要因となっているのでしょうか。

 まず挙げられるのは、本作が、あまり「ガンダム」の知識がない人でも入りやすい“間口の広さ”を持っているところです。

 新鮮な女性主人公や、彼女を取り巻く強烈なキャラクターたちとその関係性が、陰謀や策略、ラブコメ要素も織り交ぜつつ、主な舞台である学園で展開する物語は、これまでのシリーズに親しみがなくとも楽しめる、普遍的な学園モノとしての一面も色濃く持っています。また、シリーズの見どころでもあるモビルスーツでの戦闘も、人が次々に亡くなる戦争ではなく、学園内の決闘で描かれることで、ロボットものや重すぎるストーリーに慣れていない人でも、あまり身構えずに楽しむことができるのでしょう。

 かといって、決して「ガンダム」らしさがなくなっているわけでもなく、前日譚にあたるPROLOGUEや本作オープニングテーマの原作小説、本編6話以降の展開などからは、歴代シリーズ同様のシリアスさや、今後の不穏な展開も予感させられます。しかしそこに至るまでの導入部分で、まずは幅広い層が“知識がなくても楽しめそう”だと思える間口の広さがあったことは、新たなファンが次々視聴層に加わり、本作が徐々に盛り上がっていく要因となっているのではないでしょうか。

 もうひとつ思い当たるのが、本作の持つ“SNSでの盛り上がりとの相性の良さ”です。

 前述の、強烈なキャラクターたちが織りなす人間ドラマをはじめ、「水星ってお堅いのね」「ダブスタクソ親父」「ロミジュリったら」といった、ビビッドでキャッチーなせりふなど、本作には視聴していてSNSで話題にしたくなるような要素が随所にちりばめられています。そうした思わず反応したくなる展開は、感想や考察、ファンワークを、文字やイラスト、動画など媒体形式を問わず人々に発信させ、それらがまた広く拡散・共有されることで、目にした人が新たな視聴者となっていくサイクルを生み出しているようなのです。

 加えて、そうした人々の反応が、いわゆる“日5(日曜午後5時)”という注目度の高い時間帯にトレンドを関連ワードでにぎわせていることも、それまで視聴していなかった人までが次々と本作に興味を持つきっかけになっているのではないでしょうか。放送開始前から既にある程度の注目はあったものの、今に至るこの人気の高まりには、そうして放送開始後にSNSを中心とした人々の盛り上がりを目にしたことで、後から追い始める新たな視聴者層の増加があったことも大きいはずです。

 「ガンダム」シリーズのように、作品自体は見たことがなくても名前だけは誰もが知っている、歴史の長い有名タイトルであることは、一方で、予備知識なしでは楽しめなさそうで、作品について語ったりもできなさそうな、新規参入へのハードルの高さも同時に持っていると思います。そんな中、本作は間口の広い導入でシリーズに親しみのない人への視聴ハードルを下げると共に、そうした新たなファンもまた「これは自分たちも楽しめる作品だ」と、感想やファンワークがあふれるほど一緒に盛り上がれていることで、その熱量を広げ続けているようです。

 これまでの「ガンダム」シリーズにも、新たなファン層が増加したタイトルはいくつかありましたが、それでも時代と共に、まだ「ガンダム」に触れたことがない人たちは新たに誕生し続けます。本作は従来のファンだけでなく、そうした人たちにとって初めての“自分たちのリアルタイムなガンダム”として受け止められ、現代ならではの広がり方をすることでシリーズに新たな風を吹かせている、まさに名実ともに“最新のガンダム”なのでしょう。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。

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