村瀬歩&雨宮天:「七つの大罪」“親子”対談 追い求めたエリザベスの母性 愛を受けて育ったトリスタンを表現

「七つの大罪 怨嗟のエジンバラ」に出演する村瀬歩さん(左)と雨宮天さん
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「七つの大罪 怨嗟のエジンバラ」に出演する村瀬歩さん(左)と雨宮天さん

 鈴木央(なかば)さんの人気マンガが原作のアニメ「七つの大罪」の新作「七つの大罪 怨嗟(えんさ)のエジンバラ」前編が12月20日、Netflixで独占配信をスタートした。同作は、鈴木さんが描き下ろした完全新作ストーリーで、「七つの大罪」のエリザベスとメリオダスの子供・トリスタンが主人公。トリスタン役の村瀬歩さん、母となったエリザベスを演じる雨宮天さんに新作への思い、収録の裏側を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇トリスタンは両親のいいとこ取り 雨宮天「もう可愛くって!」

 --「七つの大罪」はテレビアニメ第1期が2014年にスタートし、2021年に放送された最終章「七つの大罪 憤怒の審判」でテレビシリーズが完結を迎えました。新作アニメでは、エリザベスとメリオダスの子供・トリスタンの物語が描かれます。シナリオを読んだ感想は?

 雨宮さん エモいですよね。あれだけ頑張って守り抜いた世界の先を見られたことがうれしかったですし、苦労したじゃないですか、私たち(笑い)。その末に生まれたトリスタンがあんなに成長した姿って、ホームビデオを見ているみたいな気持ちにもなっちゃって。「大きくなったわ」みたいな(笑い)。

 --村瀬さんは、トリスタン役での出演が決まった時の気持ちは?

 村瀬さん 「受かりました」と言われた時は、柄にもなく身震いしたというか。作品の歴史の重みもすごくあるし、うれしさと共に緊張もしました。両親との掛け合いもできるということで、そういうことに対する期待感とか、いろいろな感情が生まれたのを今でも覚えています。収録が楽しみでした。

 --トリスタンを演じる上で意識したことは?

 村瀬さん 魔神族の父と女神族の母の間に生まれて、強大な力を持っている。まず、そのバックボーンはあるのですが、トリスタンは自分の魔神族の力を制御できなくて、大事な友達を傷つけてしまったという過去がトラウマのようになっているんです。もちろん聖騎士として、国の王子として背負っていかなきゃいけないものはあるのですが、戦いとなると、自分の苦い部分をすごく刺激されてしまう。そこは彼の一つの支柱として大事にしようと思いました。あとは、本当にパパ上とママ上に対する愛情というか。二人の愛情をすごく受けて、正義感を持って、すごく優しい心を持って育ってるので、「大事に育てられた優しい心を持った少年」というところも同時に大事にしようと思って、お芝居させていただきました。

 雨宮さん うちの息子、両親のいいとこ取りなんですよ(笑い)。もう可愛くって!

 村瀬さん ママ上にそう言われるとうれしい!

 --トリスタンが両親を「パパ上」「ママ上」と呼ぶのも印象的です。

 雨宮さん その呼び方について、以前話題になったんです。「誰がトリスタンに『パパ上』『ママ上』と呼ばせ始めたんだろうね?」と。私はエリザベスが、その呼び方が可愛いからって仕込んだんじゃないか説を考えていて。あと、エリザベスが自分の父を「父上」と呼ぶから、トリスタンには「父上」「母上」という呼び方を教えていたけど、周りの友達は「パパ」「ママ」と呼ぶから、それに影響を受けて、「パパ上」「ママ上」になったのかな?とか。どれであれ可愛いんですけど(笑い)。

 ◇ひたすら母性と闘い続けた “母”エリザベスを演じるということ

 --雨宮さんは、これまでの「七つの大罪」シリーズでエリザベスを演じ、新作では母としても成長したエリザベスを演じることになりました。

 雨宮さん これまでの「大罪」シリーズでも、物語が進んだり、エリザベスが経験することによって、私自身も表現を変えてきました。そして、エリザベスにとって母親になる、子供を持つということはすごく大きいことだと思います。ママ上のことが大好きなトリスタンを見ると、エリザベスは“THE母の愛情”で包み込んできたんだろうなとすごく感じます。だからこそ、母の愛情をすごく意識しました。母としてのエリザベスはどういう感じなのかな?とすごく考えて。それまでは「メリオダスが好き」「メリオダスを守りたい」と思っていたけど、トリスタンに向ける「守りたい」とは全然違うものだと思うから、より精神年齢を上げて、演じ方、表現の仕方をすごく考えました。

 村瀬さん エリザベスの慈しみの母性がすごいんです。

 雨宮さん それは、私が8年間ほしかった言葉なんです。私がこれまでのシリーズでエリザベスを演じてきた7、8年間は、ひたすらもう母性との闘いというか。母性というものが本当に分からなくて。これまでにも、エリザベスが母性で包み込むシーンというのがたくさんあって、その度に「母性が足りない」「もっと慈愛を」「包み込むような感じで慈しんで」と言われて、どうやってやればいいの?と。私はそうしているつもりなのに「足りない」と言われて、何回もテークを重ねるということがあったんです。今だから言えますけど、アフレコ終わりに泣きながら帰ったこともいっぱいあったし。だから、息子ができた今、息子からそうやって言ってもらえると思うと、本当に感慨深いというか。何度でも泣いてよかったなって。

 村瀬さん すてきでした。エリザベスは本当に母性にあふれていて。すごく拡大した話になってしまうのですが、声優の仕事って、自分の感受性をうまく引っ張ってきて応用したりとか……そういうことができる仕事に就けたことがめちゃくちゃうれしいなって。雨宮さんは、お母さんになったことはないけど、こちら側に母性を感じさせてくれて、引っ張ってくれるって、すごいことだなって。8年の歴史と努力をすごく感じます。

 雨宮さん めちゃくちゃうれしいです。「母性なんか私には無理だ」と思った瞬間もあったんですけど、諦めなくてよかったなって。

 村瀬さん 僕自身も同じような経験があるのですが、やっぱりそういう時はやさぐれるんですよ(笑い)。

 雨宮さん そう、やさぐれるんです。

 村瀬さん どうせだめなんだよ!となっちゃうんだけど、やっぱりやるしかないから。

 雨宮さん 諦めきれないしね。

 ◇お互いに引き出された表現

 --雨宮さんは、村瀬さん演じるトリスタンの声を聞いて感じたことは?

 雨宮さん シナリオを読んだ時、トリスタンが可愛くて良い子なのは分かったんですけど、私の中ではふわふわした存在だったんです。本当に天使のように純真な心を持っているから、ふわっとした感じだったんですけど、村瀬さんの声を聞いた時に、「あ、ちゃんと自分の足で立ってる」というか、立とうとしているというか。そういう男の子なんだなって、すごく感じました。骨が入ったというか。

 村瀬さん そう感じてもらえてうれしいです。

 雨宮さん ふわふわした存在だったトリスタンから、ちゃんと関節ができて骨ができて、「あ、トリスタンがいる」と思いました。良い子というイメージは変わらないんですけど、生まれてからいろいろなことを経験して、性格を形成するまでの歴史があったんだなと。それを感じさせてくれるような存在感がありました。私自身、大切な存在に声がついて、引き出された部分はすごくあると思います。

 村瀬さん お芝居だから、お互いに影響がありますよね。僕もすごく引っ張ってもらいました。引っ張ってもらったら、その分、僕も返していくから、お互いに積み上げて作っていった感じがあります。お芝居って楽しいと改めて感じました。

 「七つの大罪」は、「週刊少年マガジン」(講談社)で2012~20年に連載。人間と人間ならざる種族の世界が分かたれていなかったいにしえの時代を舞台に、7人の大罪人から組織された伝説の騎士団・七つの大罪の冒険が描かれた。同作の“正統続編”となる「黙示録の四騎士」の連載が、2021年1月に同誌でスタートしたことも話題となった。

 新作アニメは、女神族の力を受け継ぎ、人々の傷やけがを癒やすことができながら、魔神族としての力を制御できずに人を傷つけた過去を持つトリスタンが、新たな仲間と出会い、愛する家族を守るためにかつて王国を捨てた聖騎士・デスピアスが居城を構えるエジンバラへと向かう……というストーリー。

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