坂本真綾:重厚なアニメ「火狩りの王」 EDに込めた思い 諦めない気持ちを支えるように

「火狩りの王」のエンディングテーマ「まだ遠くにいる」を担当する坂本真綾さん
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「火狩りの王」のエンディングテーマ「まだ遠くにいる」を担当する坂本真綾さん

 日向理恵子さんの長編ファンタジー小説シリーズが原作のオリジナルアニメ「火狩りの王」が1月14日からWOWOWで放送・配信される。「SAMURAI DEEPER KYO」などの西村純二さんが監督を務め、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「機動警察パトレイバー the Movie」などの押井守さんが構成・脚本を担当するなど豪華スタッフが集結。声優で歌手の坂本真綾さんがエンディングテーマ(ED)「まだ遠くにいる」を担当し、明楽(あきら)役で声優として出演することも話題になっている。坂本さんに同曲に込めた思いを聞いた。

 ◇普遍的なテーマ 気付かされたこと

 「火狩りの王」は、“火”をテーマにしたファンタジー。人類最終戦争後の世界を舞台に、子供たちが多くの困難に直面しながらも懸命に生きる姿を描く。久野美咲さんが主人公・灯子(とうこ)、石毛翔弥さんが首都に暮らす15歳の元学生・煌四(こうし)を演じるほか、声優として細谷佳正さん、早見沙織さん、山口愛さん、國立幸さん、小林千晃さんらが出演する。

 日向さんは児童文学作家として活躍しており、原作は子供にも人気を集めている。ただ「火狩りの王」を子供向けの小説と決めつけてしまうのは、いささか乱暴かもしれない。重厚で、大人もハッとさせられるところが多々ある。

 「ハードな内容です。大人も想像力を駆使しないと理解できないんですよね。第1巻は、灯子側、煌四側と視点がどんどん変わっていくので、スピード感もあって、すごい速さで読み終えました。早く続きを読みたい!となって、どんどん読んでいきました。仕事として出会った作品ですが、元々本を読むことが好きですし、こんな小説があったんだ! いい作品を教えてもらった!と楽しみました」

 ED「まだ遠くにいる」は、坂本さんが作詞を手掛けた。原作の重厚なテーマを歌詞、歌で表現した。

 「前の世代がしてきた悪事を、後の世代に押しつけ、代償を払わせている。大人が読むと、胸が痛いところもあります。現実でも、私たちのしてきたことに対し、後の世代がつけを払う時がくる……とリアルに感じました。音楽は、時代を超えて聴くことができます。時代を選んで生まれてくることはできないけれど、主人公たちは誰も諦めていないし、前に進み続けます。彼らの生きざま、諦めない気持ちを支えるような歌詞を書こうとしました。キャラクターに寄り添いつつ、作品を離れたところでも、後に誰かが聴いて、何か感じるものがあれば……と思いを込めました」

 同作の世界に住む人間は、最終戦争前に開発、使用された人体発火病原体によって、そばで天然の火が燃え上がると、内側から発火して燃え上がってしまう。人が安全に使用できる唯一の火は、森に住む炎魔から採ることができる。現代とは火に対する認識が異なるが、テーマは普遍的だ。

 「人間は火を扱える特殊な生き物です。それを奪われるということは、余計な力を持たなくなり、野生に戻ることなのかもしれません。火を扱うことによって生まれた文明があり、それを忘れられずに生きている世代がいます。火で誰かを傷つけることもありますし、別のことに利用されることもあります。私たちが日々、手にしている便利なものも使い方を間違えると、とても危険だ……と原作を読んで、考えさせられました」

 ◇感慨深い 押井守との再会

 坂本さんがEDを担当することが決まった際、明楽役として出演することは決まっていなかった。明楽は、火を狩ることをなりわいとする火狩り。元々は工場労働者だったが、苦労の末に火狩りになる。ネタバレになるので、詳細を説明できないが、重要なキャラクターだ。

 「原作を最後まで読むと、明楽の印象が最初と変わったこともあって、驚きました。そのイメージを引きずっていたところもあって、最初の収録で『粗野、ワイルドに』というディレクションがあったんです。最初に原作を読んだ時の明楽の印象に戻って、明楽を演じないといけない……とすごく反省しました。明楽はどんな存在なのだろう?ともう一度考え直しました。自分の力で道を切り開く、誰に対しても態度が変わらずオープンで、素直に接する人であることを伝えていこうとしました」

 坂本さんは、「火狩りの王」の脚本・構成を担当する押井さんの名作「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」に出演経験がある。収録では、久しぶりに押井さんに再会したという。

 「最初のアフレコの際に現場でお会いしました。かなり久しぶりで、10、20年ぶりくらいかな? 『攻殻機動隊』の映画の後、私のプロモーションビデオでカメラマンをやっていただいたことがあったのですが、私が10代くらいの時ですからね。押井さんは、私のことを覚えてくださっているかな?と思っていました。分散収録で、私の出番は遅めだったのですが、押井さんが待ってくださっていたんです。お会いしたら『俺のこと覚えてる?』って(笑い)。同じことを考えていたんですね。忘れるわけないですよ! 10代の頃はお会いすると、緊張してあまりお話しできませんでしたが、私も大人になりましたし、懐かしいですね、と楽しくお話しできました。また一緒に仕事ができてうれしかったですし、感慨深かったです」

 「まだ遠くにいる」は、ニトロプラスの虚淵玄(うろぶち・げん)さんがストーリー原案・シリーズ構成を手がけることも話題の「REVENGER(リベンジャー)」のED「un_mute(アンミュート)」と共に両A面シングル「まだ遠くにいる/un_mute」として1月25日に発売される。「REVENGER」は、信じていたものに裏切られ、帰る場所をなくした繰馬雷蔵ら殺し屋REVENGER(リベンジャー)の活躍を描く。「REVENGER」もまたハードな作品だ。

 「同じシングルに収録されるので、それぞれの個性を表現しようとしました。結果的に、どちらも重厚な曲になりました。監督からは、結構血しぶきが飛ぶし、つらい話も多いけど、エンディングで流れてくる音楽は浄化されるような、包み込まれるような優しいものであってほしいというお話がありました。主人公を含め登場人物たちが過去にとらわれ、復讐(ふくしゅう)への気持ちを強く持っている中で、縛り付けているものを解き放ってあげられる、時計が前に進んでいく……というテーマで作った楽曲です」

 「まだ遠くにいる」「un_mute」は共に重厚な楽曲だが、それぞれに個性がある。坂本さんの表現の幅広さに改めて驚かされる。アニメと共に奥深い楽曲も堪能してほしい。

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