ポケットモンスター:注目集まる「めざポケ」 サトシを見送るセレモニーの場に

主人公サトシを見送るための、ある種のセレモニーの場にもなっているのだと思います
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主人公サトシを見送るための、ある種のセレモニーの場にもなっているのだと思います

 テレビアニメ「ポケットモンスター」のサトシとピカチュウの物語の最終章を描く「ポケットモンスター めざせポケモンマスター」(テレビ東京系、金曜午後6時55分)が1月13日にスタートした。25年以上主人公として活躍してきたサトシの最終章ということで、さまざまな年代のファンが盛り上がっているようだ。アニメコラムニストの小新井涼さんがその現象を分析する。

ウナギノボリ

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 アニメ「ポケットモンスター(アニポケ)」の主人公サトシと、その相棒ピカチュウの物語最終章となる「ポケットモンスター めざせポケモンマスター(めざポケ)」が、いよいよ放送を開始しました。番組放送開始から実に25年以上変わらずにいたサトシの主人公交代のニュースは、しばらく「アニポケ」を離れていた人たちにまで大きな衝撃を与え、最終章と位置付けられたこの「めざポケ」にも、改めて大きな注目が集まっています。

 そんな「めざポケ」は、一体どんな内容の物語となっていて、久々に「アニポケ」に戻ってきた人たちを含め、作品ファンにどのように受け止められているのでしょうか。

 番組の説明によると、「めざポケ」では、ポケモンバトルの世界チャンピオンとなったサトシが、相棒のピカチュウと共に、長年目指してきた“ポケモンマスター”という夢に向かっていく冒険が描かれていくそうです。これまでのシリーズのように、原作ゲームをベースとした具体的な目標等はないものの、長年「アニポケ」ファンの間でも謎とされていた“ポケモンマスター”の真相に迫る物語となっていくのではないかと、期待も膨らむ内容となっています。

 また、これまでサトシの冒険を見守ってきたファンにはうれしい仕掛けも満載です。たとえば、本シリーズの主題歌は、初代オープニング(OP)テーマ「めざせポケモンマスター」のリメーク「めざせポケモンマスター -with my friends-」となっています。おなじみの楽曲と共に、これまでの冒険の映像や写真が出てくるだけでも毎回泣けてしまうのですが、初代OP映像をなぞる演出も随所に散りばめられていて、筆者含め特にリアルタイムで放送開始を体験していた世代は完全に不意打ちノックアウトされていました。他にも、初代旅の仲間たちであるカスミやタケシとの再会、7年ぶりに登場したデント、オーキド博士のポケモン川柳や歴代エンディング(ED)テーマ「ひゃくごじゅういち」や驚きの「タケシのパラダイス」の起用など、懐かしの要素が毎週たっぷり用意されています。

 ひとつ前のシリーズも、これまでの地方全てが舞台だっただけあり、懐かしの再会はたくさんありましたが、今回の「めざポケ」は特に、サトシとピカチュウの旅の始まりに思い入れがある人にはより一層刺さる要素が多めなのも特徴です。そうすることで、リアルタイムで作品を追っているファンはもちろん、最終章を聞きつけて久々に戻ってきた人たちが、最近のシリーズにあまりなじみがなくとも一緒に楽しめる物語にもなっているのでしょう。

 こうした内容を受けて、放送をみたファンの反応も毎週かなり盛り上がっています。OPやEDへの反応をはじめ、関連ワードも“タケシとデント”や驚きの登場を果たした“サブマス”、果てはファンの間で“カスミを表すピカチュウ語”とされている“ピカチュピ”までトレンド入りするなど、やはり懐かしの歴代要素への反響は特に大きいようです。
 また、こうしたSNS上での盛り上がりは、単に放送された内容への反応で終わるだけでなく、“あんなことがあった、あれもまたみたい”と、懐かしの要素に触発された人々の思い出と共に語られることで、より一層大きくなっているようにも思います。そうして「めざポケ」の放送は、まるで同窓会のような、卒業式のような、思い出を振り返り語り合う機会としてもファンに受け止められることで、これほどの盛り上がりをみせているのでしょう。

 先月発表された主人公交代という事実には、やはり世界中からショックや寂しいという声が多く上がり、未だにサトシ主人公の物語を惜しむ声も少なくはありません。しかし、ファンの間では随分前から主人公交代が予期されていたこともあり、またサトシが今後シリーズに全く出なくなるという確証もないということで、交代を受け止め、新シリーズを楽しみに待つという前向きな声も多くなっています。

 なにより交代が確定してしまった今は、寂しくはあるものの、ずっとネガティブでいるよりは、せっかくお別れ前に用意されたこの「めざポケ」を通じて、サトシの物語を最後までしっかり見届けようとする想いの方が、ファンの間でも強くなっているのでしょう。そうして「めざポケ」は今、長寿アニメシリーズの単なる最終章であるだけでなく、これまで一度でも「アニポケ」に触れたことがある全ての人たちにとっての主人公サトシを見送るための、ある種のセレモニーの場にもなっているのだと思います。

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 こあらい・りょう=KDエンタテインメント所属、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約10年前から継続しつつ、学術的な観点からもアニメについて考察・研究し、大学や専門学校の教壇にも立つ。アニメコラムの連載をする傍ら、番組コメンテーターやアニメ情報の監修で番組制作にも参加している。

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