昨年12月にアイドルグループ「日向坂46」を卒業した宮田愛萌さんが、2月28日に短編小説集「きらきらし」(新潮社)を発売した。アイドル活動と並行して大学で学んだ「万葉集」がテーマとなっており、好きな和歌5首から想像を膨らませて描いた5つの短編小説を収録している。今作の創作の背景、卒業後の展望について話を聞いた。
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小学生の頃から読書好きの文学少女。「勉強は苦手でしたが、国語だけは成績が良くて(笑い)」と話す宮田さん。日本最古の歌集で知られる「万葉集」に魅了されたのは、高校生のときに国学院大学のオープンキャンパスで受けた土佐秀里教授(文学部日本文学科)の授業だった。
「歌が詠まれるまでの背景や、歌から読み解くストーリーの面白さに感動して! 子供の頃に現代語訳の『源氏物語』や『枕草子』を読んでいて古文にはもともと興味があったのですが、すぐに魅了されてしまいました(笑い)」
国学院大に入学し、アイドル活動と並行して4年間「万葉集」の研究を中心に学んだ。皇族や貴族、一般民衆のさまざまな歌が収められている「万葉集」。知れば知るほどその多様性や歌の自由さにますます惹(ひ)かれていった。「私にとって最高の娯楽。人によって(歌の)解釈も違いますし。他の解釈を知るとさらに興味が深まる。今でも日々読み返します、飽きないです!」と目を輝かせる。
今回の小説集に収められる5つの短編は、2~3カ月かけて書き上げた。「ストーリーを考えるのは大変でしたが、書くことはそんなに大変ではなかったです。(小説を)いっぱい読んできたので、そういった経験が生きているのかな」と話す。短編集の中には、大学が舞台となった物語もある。「私のキャンパスライフがめっちゃ(話の中に)入っています(笑い)! 私がどんなキャンパスライフを送っていたか感じていただけたら」とにっこり。ラブストーリーもあるが、「想像が及ばないところは、友達からさりげなく話を聞き出して、参考にしました」と笑う。
「書きたい」と湧き上がる思いが、今回の出版につながった。「私から『小説が書きたい!』とスタッフさんに希望を伝えたんです」と明かす。宮田さんは、2018年に夏川椎菜さんとマツモトクラブさんとの共著で短編集「最低な出会い、最高の恋」(ソニー・ミュージックエンタテインメント)を発売した。その執筆経験で「(物語を)書く楽しさ」を知り、書きたいとの思いがさらに募った。「万葉集に関わることも何かやりたいなと思っていたら、ちょうど新潮社さんから今回のオファーがあって。すごくうれしかったです!」と声を弾ませる。
グループを離れて約2カ月。まだ卒業した実感はあまりないという。「メンバーとも連絡をとっているので、ファンの方と交流できないこと以外は寂しさもなくて。つい先日も(後輩の)森本茉莉とかき氷を食べに行きました(笑い)」。
2017年のデビューから約5年間のアイドル人生については「やり切りました!」ときっぱり。未練はないようだ。ファンも気になるであろう現在は「転職サイトに登録したばかり(笑い)」の“充電期間”という。今後の展望について聞くと「本に携わるお仕事をやっていきたい。本屋さんでも、図書館の司書さんでも……人と本をつなげられるようなお仕事をしたいです」と抱負を語った。
創作活動も続けていきたいという。「需要があればの前提ですが、書き物はできれば続けていきたいです。でもきっと出版という形にならなくても、やり続けていくんだろうな。人に見せなくても、趣味で書いたりするので! 今度は“ド恋愛”みたいな物語も書いてみたいです」とほほ笑んだ。
ファンにメッセージはありますか。そう尋ねると、「ここに全部書いておきました!」と見せてくれたのは、小説集に付属しているリーフレット。そこには、宮田さんからファンへのメッセージが書かれていた。「これは購入してくださった方が全員見られるものなので(笑い)。ぜひ手に取ってみてください!」。アイドル時代からの持ち前の“あざとスマイル”でアピールした。
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宮田さんの短編小説集「きらきらし」は四六判、128ページ。短編5つのほかに、万葉集の舞台・奈良で撮影された宮田さんのグラビアも掲載。価格は1980円。全3種のポストカードから1枚と、リーフレットも付く。