ULTRAMAN:木村良平×神山健治監督×荒牧伸志監督 FINALシーズンで進次郎らしい終着点 初代「ウルトラマン」へのリスペクト

「ULTRAMAN」の(左から)荒牧伸志監督、ULTRAMAN SUIT、早田進次郎役の木村良平さん、神山健治監督
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「ULTRAMAN」の(左から)荒牧伸志監督、ULTRAMAN SUIT、早田進次郎役の木村良平さん、神山健治監督

 特撮ドラマ「ウルトラマン」のその後を描くアニメ「ULTRAMAN」の「FINAL(ファイナル)シーズン」が5月11日、Netflixで配信をスタートした。原作は、清水栄一さんと下口智裕さんのマンガで、かつてウルトラマンだった父・早田進の息子、早田進次郎がULTRAMAN SUITをまとって戦う姿を描いている。2019年にスタートしたアニメシリーズが、ファイナルシーズンでついに完結を迎える。早田進次郎の声優を務める木村良平さん、神山健治監督、荒牧伸志監督にファイナルシーズンに懸ける思い、制作の裏側を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇初代「ウルトラマン」に対する答え 早田進次郎は今の時代の主人公

 --原作の連載が続いている中で、どのようにアニメのファイナルシーズンの制作を進めた?

 荒牧監督 原作者の清水さんたちともいろいろな話をして、原作のある程度の方向性を聞いた上で、円谷プロさんからもご意見をいただいて、ファイナルシーズンでフォーカスすることを決めていきました。「ULTRAMAN」は、進次郎の父である早田進からつながっている別のストーリーなので、今回はとくにお父さんの世代というか、ほかの科特隊員も含めて、オリジナルの「ウルトラマン」との関係性が、かなり大きな軸になっています。

 --メフィラス星人を想起させるメフィストや、かつて科特隊に所属していた早田進の戦友・嵐大介が登場することも話題になっています。

 荒牧監督 僕らも初代「ウルトラマン」を見て育ってきた世代なので、そこの要素は大事にしたかった。メフィストなどの異星人のチョイスもそうなのですが、実は「シン・ウルトラマン」とかなりネタがかぶっているんですよね。「シン・ウルトラマン」の監督を務めた樋口(真嗣)さんとも以前話をしたのですが、「そういう調子になるよね。元ネタが一緒だからね」と。オリジナルに対するリスペクトというか、自分たちが見て育ってきた「ウルトラマン」に対する自分たちなりの答えというほどではないのですが、そこに触れたいなという。お父さんとの対比を含めて進次郎の結末を見せたいという思いがありました。

 --進次郎の物語の結末に関しては、どんな思いが?

 神山監督 最終回というか、ラストエピソードって、実はなかなか作れるようで作れない。作り手も最終回というものを作ったことがない人が多いというか、今はそういう時代になってしまっている。自分たちが作ってきた物語を完結させるというのは喜びでもあり、実は一番難しいことでもあるんです。5年間僕たちが付き合ってきた進次郎という主人公の物語の終着点をどうすればいいんだろうか?と。進次郎は、なかなか“終わらないキャラクター”というか、ブレークスルーを迎えてはまた元に戻るんですよ。

 荒牧監督 「こいつ、できあがったな」と思った瞬間にまた元に戻っている。またそれが魅力でもあるんですけどね。

 神山監督 これまでの主人公は例えば死んでしまったりとか、一つ悟りを開くとか、区切りがあったと思うんですけど、進次郎はそうじゃない。今の時代の主人公なんだなと思った時に、そういう終わり方ではないなと。「また明日、少しだけ成長した進次郎に会える」というのが、この作品の終わり方なんじゃないかなと思って。とても難しかったのですが、僕たちが付き合ってきた進次郎というキャラクターの終わり方にこれが一番ふさわしいんじゃないかなという気がしています。

 --木村さんは、さまざまな作品でメインキャラクターを演じていますが、進次郎に対して「今の時代の主人公」と感じることはありましたか。

 木村さん そんなふうに時代を俯瞰(ふかん)して考えたことはなくて、今お話を聞いて初めて「そういうこともあるのか」と。ただ、おっしゃっていた通り、進次郎は成長しても終わらない。でも、彼が抱えている悩みというか、立ち向かっている問題そのものが、多分そういうことだと思うんですよね。明確な答えがない問題だからこそ、多分ずっと行き着かない。

 荒牧監督 でも、何かはつかむという。

 ◇木村良平演じる進次郎の安心感 

 --木村さんは、シーズン1、2と進次郎を演じてきましたが、ファイナルシーズンで演技に変化はありましたか。

 木村さん 僕は台本に沿って芝居をしているので、明確に物語の見せ方をこう変えてやろうと思って演じることはないんです。ただ、名乗りであったりとか、叫びであったりとか、戦う意気込みを表す一言みたいなものは、シーズン1では、背負っていない、覚悟がないシーンが多かったし、ただがむしゃらだったけど、ファイナルになってくると、「このために」というものがあった気がしますね。それが自信であったり、“叫びやすさ”につながっているのだと思います。「このために戦う」となれば、一歩を踏み出しやすいというか。

 --監督から見た木村さんの魅力は?

 荒牧監督 先ほどお話しした進次郎の特性と木村さんの声の相性がすごくよくて、僕らも作りながら安心感がすごくありました。いろいろ悩みながら制作をしていくのですが、「最後に木村さんの声を入れたらきっと決まるから大丈夫だ」という確信がある。

 木村さん うれしいです。

 荒牧監督 木村さんだけでなく、ほかの声優の皆さんに関してもそうで、シーズン1から積み重ねてきた強みかなと。収録は、シーズン1はコロナ前で全員一緒に録(と)れていましたが、シーズン2とファイナルは完全に分散収録になってしまって、3人ずつぐらいが一緒にブースに入れる状況でした。一緒にブースに入れなかったとしても、ほかの人がどういう演技でくるのか分かった上で収録できていたので、僕らスタッフも安心感、心強さがすごくありましたね。

 --最後にファイナルシーズンの見どころを教えてください。

 木村さん 作りとしては若干シーズン1に近しいというか、進次郎が軸にあって、シーズン1でも立ち向かった問題に、成長した上で改めて立ち向かっていく。シーズン1よりも登場人物がはるかに増えていますが、それぞれの視点、立ち位置で描かれてきたものが帰結していく気持ちよさがあると思います。

 神山監督 映像は、3シーズンを重ねていく中で、どんどんよくなっていると思います。ファイナルシーズンはスタッフの総決算という感じですね。劇場作品かと思うほどの出来になっていると思いますし、最後を飾る素晴らしい絵ができていますので、楽しんで見ていただければと思いますね。

 荒牧監督 てんこ盛りな内容なのですが、その中でもシーズンとしてのクライマックス感をすごく意識して作っていますので、ラストのほうのテンションの上がり方を楽しんでいただけるとうれしいですね。

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