寺島拓篤:「AYAKA」 常に酔っている!? “不思議な人”を演じる挑戦 隠された謎を楽しみながら

「AYAKA -あやか-」に出演する寺島拓篤さん
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「AYAKA -あやか-」に出演する寺島拓篤さん

 アニメ「K」シリーズなどで知られる作家集団「GoRA」とキングレコードがタッグを組むオリジナルテレビアニメ「AYAKA -あやか-」が、7月1日からTOKYO MXほかで放送される。火と水の龍の伝説が伝えられ、ミタマと呼ばれる不思議な存在が生息する奇妙な島・綾ヵ島を舞台に、それぞれの宿命を背負った男たちの絆の物語が描かれる。主人公・八凪幸人の兄貴的存在になる沙川尽義を演じるのが寺島拓篤さんだ。尽義は、酒が大好きなキャラクターで、寺島さんは「ここまで常に酔っ払っているキャラクターを演じることはなかなかない」と語る。尽義の魅力、演技のこだわりを聞いた。

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 ◇酔っ払いを表現する“ずらす”演技

 「AYAKA -あやか-」の主人公・幸人は、綾ヵ島から離れた本土の児童養護施設で育った少年。ある時、亡き父・真人の弟子であるという傍若無人な青年・沙川尽義がやってきて、幸人を故郷である綾ヵ島に連れ出す。幸人の亡き父は島の調和を守る仙人で、幸人は父の3人の弟子である尽義、鞍馬春秋、伊吹朱と関わりながら綾ヵ島で暮らし始める。声優の上村祐翔さんが幸人、鳥海浩輔さんが春秋、梅原裕一郎さんが朱、津田健次郎さんが真人を演じている。

 真人と3人の弟子は、不思議な術を使う脈接ぎ(みゃくつぎ)と呼ばれる。中でも尽義は、水を操る術を幸人に教えることになる兄貴的存在。ただ、普段は酒やギャンブルを全力で楽しみ、金に困らない限り働こうとしない困った青年でもある。常に酒に酔っており、幸人をあきれさせることも多い。寺島さんは尽義について「不思議な人」と感じているという。

 「表現が難しいのですが、器が小さい人間と器がでっかい人間の性質を両方持ち合わせているというか。常に酔っ払っているのもそうですけど、普段幸人とやり取りしている時の尽義はとても小さい人間で、どうしようもない人に見える。でも、アニメでは何も言わずに目線だけ、表情だけで見せるカットも随所にちりばめられていて、そこで尽義が何を考えているのかは想像するしかない。きっと大きなことをも見据えているんだろうなと。自分の兄弟子の春秋、朱のことも実はすごく俯瞰(ふかん)で見ているところもあって。僕は、演じていて本当に酔っ払っているつもりなんですけど、過去やこれからのことも見据えている。対局まではいかないですけど、共存しないものが共存しているような不思議な人だなと思いますね」

 尽義は、物語の説明役でもある。寺島さんは「説明役なのにこんな酔っ払っているって大丈夫かな?と(笑い)」と、収録当初は常に酔っている尽義に驚いた。演じる上で難しさもあったという。

 「酔っ払いの一つの要素として、ろれつが回らないということがあると思うんですけど、せりふがちゃんと分からないとダメだしなと。だから、尽義は酔っ払い慣れている人というか、酒に酔うけど酒に負けない人というか。せりふはせりふとしてちゃんと伝わるようにしつつ、相手との距離感であったり、声のボリュームであったりを通常よりも外れたところで演じるようにしています。あと、話すテンポも一定じゃないようにして、滑舌もちょっとずらすようなイメージでやっています。僕は普段はほとんど酒を飲まないので、遠い記憶の中にある酔っ払った時のふわふわとした感覚を生かせるように頑張っていますね」

 ◇秘密を抱えたキャラクターを演じる楽しさ

 「AYAKA -あやか-」は、それぞれのキャラクターが術を駆使するアクションシーンも見どころの一つだ。酔っ払いキャラの尽義も呪文を唱える時は、普段とは違った真剣な表情を見せる。

 「最初に呪文を言う時は、仰々しくというか、『呪文だぞ』という気持ちで分かりやすくやっていたのですが、スタッフの方に『尽義はぼそっとつぶやくように言いましょう』と言われて、ちょっと不安になるぐらいぼそぼそと唱えるようにしました」

 キャラクターによって呪文の唱え方も特徴があるといい、寺島さんは「なぜ尽義がぼそぼそとつぶやくように唱えるのかは、想像するしかなかった」という。寺島さんら声優陣は、1話ずつシナリオを渡されていたため、先々のストーリーを知らないまま収録に臨んでいたという。呪文の唱え方も含め尽義には謎が多く、「見ている皆さんも終盤に至るまでつかみきれないんじゃないかなと思います」と語る。

 「尽義は、酔っ払っているという大きな要素があるので、その陰に作品の中核に迫るような要素が隠れているんじゃないかと思います。実は各話のサブタイトルが全て尽義のせりふなんです。それもあって、沙川尽義という人間は、この作品においてちょっと特殊な役割を持たされているんじゃないかなと」

 秘密を抱える尽義を演じる楽しさも感じているという。

 「本当は、秘密を知った上で演じたほうがいいとは思うのですが、今回知らずに演じることが多くて、僕自身も沙川尽義という人物をまだ探っているところもあるんです。それが実は楽しくあるんですよね」

 尽義に隠された秘密とは何なのか。寺島さんの“酔う演技”にも注目したい。

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