市ノ瀬加那×小林千晃:アニメ「葬送のフリーレン」で繊細な演技 “フリーレン”種崎敦美から受けた刺激

「葬送のフリーレン」に出演する市ノ瀬加那さん(左)と小林千晃さん
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「葬送のフリーレン」に出演する市ノ瀬加那さん(左)と小林千晃さん

 「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中のマンガが原作のテレビアニメ「葬送のフリーレン」。「マンガ大賞2021」で大賞に選ばれた話題作で、アニメは、「初回2時間スペシャル ~旅立ちの章~」として日本テレビ「金曜ロードショー」で9月29日午後9時から放送される。魔王を倒した勇者一行の魔法使いで、エルフゆえに長寿であるフリーレンが仲間の死を経験し、“人を知るため”に旅をすることになる……というストーリー。市ノ瀬加那さんが、主人公・フリーレンと旅を共にする“新パーティー”の魔法使いの少女・フェルン、小林千晃さんが同じく“新パーティー”の戦士・シュタルクをそれぞれ演じる。市ノ瀬、小林さんに同作への思い、フリーレン役の種崎敦美さんと共演する中で感じたことなどを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇シュタルクの演技に圧倒された!

 --原作を読んだ印象は?

 小林さん オーディションのお話をいただく前から原作を読んでいて、魔王を倒したエピローグから始まり、いわゆる後日譚を旅として描いていて、すごい発想のファンタジーが始まったな!という印象でした。演じさせていただくことになるとは全く思っていなくて、一ファンとして読んでいました。

 市ノ瀬さん 人間とエルフは時間の捉え方が違う中で、フリーレンは、ヒンメルたちと一緒にいた時に感じとれなかったことを改めてたどっていくことになります。そこがすごくすてきだと感じました。

 --フェルン、シュタルクの魅力は?

 市ノ瀬さん フェルンは“ザ・女の子”というところもありますが、それが嫌じゃないと言いますか、案配が絶妙な子だと思います。魔法に執着はしていないけど、彼女には魔法しかない。その中でひたむきに努力できるところがすてきです。フリーレンといる時はお母さんのようで、シュタルクが出てきてからは、初めて同年代の男の子とちゃんとしゃべることもあって、どう接していいのか分からなくて、冷たく当たってしまうこともあります。等身大の女の子らしさもあって、可愛いです。シュタルクは、小林さんのお芝居が本当にすてきで……。

 小林さん うれしい!

 市ノ瀬さん 私とそんなに年齢も変わらないはずなのに、とても安定したお芝居で、圧倒されました。シュタルクは飾らない男の子で、そこがすてきです。フェルンと一緒にいるシュタルクが好きです。尻に敷かれていて、フェルンのことをちょっと怖がっているところも含めてとってもすてきなキャラクターです。

 小林さん シュタルクはすごく優しい子だと思います。ちゃんと親孝行しそうな優しさがあり、一方で思春期らしく、フェルンに対してデリカシーのないことを言ってしまったり、良かれと思ってやったことが逆効果になったり……。人の良さがにじみ出ていて、根っこは本当に優しい子であることが伝わってきます。身体能力は高いけど、育った環境のこともあって、自己肯定感がすごく低く、完成していないところも魅力的です。それはフェルンも同じですよね。周りからしたらすごいけど、自己肯定感が低く、うまく感情表現できないところは、似ていると思います。

 --小林さんから見た市ノ瀬さんの印象は?

 小林さん 市ノ瀬さんがフェルンを演じると聞いてすごく楽しみでした。フェルンのような静かなキャラクターのお芝居を聞いたことなかったので、どうなるんだろう?と。ぴったりなんです。種崎さんよりも年下で、師弟であり、姉妹のようでもあるところがリンクしていますし、本当に素晴らしいです。

 --収録の様子は?

 小林さん 僕は途中からの参加なので、お二人の空気感が既に完成された状態でした。どんな感じだろう?と思っていたら、めちゃくちゃ静かなんです。休憩時間もそんなにしゃべらない。ただ、元々二人ともいっぱい話すタイプでもないので、嫌な沈黙、気まずいというわけではなく、お互いを尊重し合っている印象でした。シュタルクが加わると、またちょっと違う空気感になります。二人の空気感に溶け込んでいく方がいいのか? シュタルクは快活でもあるので、二人と違うトーンの方がいいのかな?とも思ったのですが、普通に溶け込んでいました。お芝居もそうでして、物理的距離感ではなくて、心理的距離感を優先するお芝居に自然になっていきました。

 市ノ瀬さん 小林さんは途中からの参加でしたが、それまでずっといらっしゃったような安心感がありました。現場でもムードメーカー的存在でして、フリーレンとフェルンが静かに旅をしていたけど、シュタルクが加わったことで、少しにぎやかになるところが、ストーリーとリンクしているようで不思議な感覚でした。

 --市ノ瀬さんは普段から静かなのでしょうか?

 市ノ瀬さん この現場だけが静かというわけではなくて、割と静かです(笑い)。

 ◇種崎敦美のすごさ

 --キャラクターの繊細な感情を丁寧に表現した作品です。演じる中で大切にしていることは?

 市ノ瀬さん フェルンは最初、淡々としているイメージだったのですが、フリーレンはエルフ、フェルンは人間ということもあり、対比を見せるために「フェルンはもうちょっと感情を豊かにお芝居してください」というディレクションをいただきました。私のイメージよりも感情を出していい子なんだなと序盤で分かりました。フェルンは、人間らしさもあり、内で動く感情もあるのですが、出しすぎてしまうのも違いますし、その案配を模索しながら演じています。コミカルなシーンもありますし、シュタルクが出てくると変わるところもあります。「葬送のフリーレン」は、役者のお芝居だけではなく、音楽と映像で見せるところも多いので、基本的にアドリブは少なめだったりもします。

 小林さん 僕のお芝居は「格好よすぎる」と言われることがあるのですが、シュタルクはイケメンにはしたくなかったので「格好よくなるな!」という思いで演じています。

 --シュタルクは愛嬌(あいきょう)があるのも魅力です。

 小林さん ただ、本人が意図して可愛いと思ってやっているわけでもないので、情けない部分を際立たせつつ、そのギャップで戦う時に格好よくなる見せ方にしたいと思っています。それも押し付けがましくないと言いますか「やる時はやるんだぞ!」というふうに見せたくないところもあって……。お芝居的に格好よくしないのもおかしいですし、結果的に普通にしゃべろうとしています。

 --フリーレン役の種崎さんと共演する中で感じたことは?

 市ノ瀬さん 種崎さん自身も「葬送のフリーレン」という作品にすごく思いを込めて演じられていて、その姿勢がひしひしと伝わってきます。ずっとフリーレンとしてブレずにそこにいて、フリーレンの絶妙なお芝居のニュアンスを細かく演じているので私ももっとお芝居を追求したいと強く思いました。なので、種崎さんのお芝居から生まれるものの大きさを感じています。毎話のように刺激を受けています。

 小林さん 全くブレないし、噛まないのですが、終わる度に首かしげていているんです。悩み続ける姿勢を見て、これだけよどみなくて、完璧に見える種崎さんでも悩みは尽きないんだ……となりました。先輩の姿を見ると、僕らももっと悩み続けるべきだと感じています。

 --演技について話をすることもある?

 小林さん 3人で食事をした時、ちょっとだけお芝居のお話をさせていただきました。精神的にブレていたり、疲弊していると、どうしても集中できないことがあるので、ベストコンディションで臨む……というお話をしました。

 --二人がベストコンディションを保つためにやっていることは?

 小林さん よく寝ること! 9時間は寝ます。

 市ノ瀬さん 一番大事ですよね! 私も睡眠を大事にしています。

 --今作で挑戦になったことは?

 小林さん ヘタレっぽい役は、あまりやったことなかったので、そこが挑戦でした。これをきっかけに、ヘタレ役もできるんだと思ってもらえるとうれしいですね。

 市ノ瀬さん 落ち着いたキャラはこれまでにも経験はありましたが、フェルンは落ち着きながらも感情が豊かで、鋭いこともたまに言います。鋭いことを言う時のお芝居の案配が難しかったです。強くしすぎると、本当に嫌なことを言っているように聞こえてしまいますし。そこをいろいろ考えていたのですが、現場でフリーレンやシュタルクのお芝居を受けていると、素直にお芝居できます。現場の力はやっぱりすごい!と感じています。

 ◇繊細な映像 泣きそうになる

 --美しい映像も見どころです。

 小林さん 一カット一カットが繊細で、優しく、はかない独特の空気感が繊細に描かれています。それに音楽との親和性が本当にすごいですよね。引き込まれました。

 市ノ瀬さん このクオリティーの映像と音楽をテレビアニメシリーズでできるんだ!と驚きました。何気ない一カットで泣きそうになってしまうくらいのクオリティーで、映像を見ていると、胸がキューっとなる感覚です。

 --初回は「金曜ロードショー」で放送され、「YOASOBI」がオープニングテーマ、milet(ミレイ)さんがエンディングテーマを担当することなども話題になっています。

 市ノ瀬さん スタッフの皆さんの作品への愛を感じています。オープニング、エンディングの音楽によって映像の力がより高まっています。エンディングの映像も特殊なタッチでして。

 小林さん オシャレですよね。

 市ノ瀬さん 表現方法が新しいんです。それに、オープニングを見て泣きました。本当に素晴らしいです。フリーレンの今まで生きてきた人生が濃縮されていて、ワクワクしつつ、ちょっと切なくもあり、いろいろな感情が入り交じりました。

 小林さん スタッフの皆さんが「葬送のフリーレン」という作品を愛していて、その思いを感じています。僕らもより一層気合が入ります。

 --最後に放送を楽しみにしている人に向けてメッセージをお願いします。

 市ノ瀬さん 映像、音楽、アーティスト、キャストの全ての力がしっかり合わさってできた作品です。一話一話の満足度、完成度が本当に素晴らしいので、ぜひとも金曜ロードショーから見ていただきたいです。生き方、何気ない日々の大切さについて考えさせられる作品になっています。ぜひ、たくさんの方に楽しんでいただきたいです。

 小林さん 感情を揺さぶられる作品になっています。見ていただければ、この作品にしかない魅力が分かるはずです。ぜひご覧ください。

 「葬送のフリーレン」は、山田鐘人さん原作、アベツカサさん作画のマンガで、「週刊少年サンデー」で2020年4月に連載をスタートした。アニメは、「ぼっち・ざ・ろっく!」などの斎藤圭一郎さんが監督を務め、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」などのEvan Callさんが音楽を担当。マッドハウスが制作する。「初回2時間スペシャル ~旅立ちの章~」として日本テレビの「金曜ロードショー」で9月29日午後9時から放送される。以降は、日本テレビが新設するアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で、10月6日から毎週金曜午後11時に放送される。

 ※種崎敦美さんの「崎」は「たつさき」


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